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論風一陣番外特集 ウソ、おおげさ、まぎらわしい! タクシー乗務員募集サイトのいま (Taxi Japan 364号より)

ガイドライン

今年で70~73歳になる団塊の世代(戦後の第一次ベビーブーム世代)が労働市場から去りつつある中で、タクシー業界では深刻な人手不足に見舞われている。それを反映してタクシー乗務員募集のためのインターネットサイトにも、複数の大手人材紹介業者が新規参入してきており、既存の乗務員紹介業者との間で過当競争の様相を呈している。

それぞれのインターネットサイトでは、「報奨金100万円」、「入社祝い金70万円」、「2年間給与保障、1年目42万円、2年目35万円」、「年収750万円可能」、「最高歩率67%」など、求職者や転職希望者の注目を集めんがための表示が散見される。いずれも「社内規定あり」などと記されてはいるものの、その具体的内容の詳細は掲載されていない。

さらに、「有休を取れば取るほど給料が上がる!?」などのウソまがいの表現や「保証人なしでOK」としながら、保証人不要で採用する具体的なタクシー会社名の記載がないなどのまぎらわしい謳い文句が横行しているのが実態だ。

これらのウソ、大げさ、まぎらわしい表示や表現が原因で大きなトラブルが発生する前に、何らかの制約や制が求められる。そこで、インターネット募集広告の現状についてレポートする。

<文責=高橋 正信>

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報奨金100万円


インターネットサイトに掲載された都内タクシー乗務員の募集広告<図1>をみると、「報奨金100万円または給料保障1年間!」の太文字が目に飛び込んでくる。掲載されている募集要項では、報奨金については、現任と養成ともに100万円を支給すると記してあるが、具体的な支給条件や取り扱い、支給時期などの詳細は記載されていない。また、給与保障についても、昼日勤30万円、夜日勤40万円を1年間保障するとしているが、社内規定有としながらも詳細は一切触れられていない。そして報奨金か給料保障のいずれかを選択せよ、となっているのだが、詳細が不明な段階で判断できるものではない。

元来、報奨の意味は、「勤労・努力に報い、奨励すること」(広辞苑)であって、現在他社で勤めている者も、これから2種免許を取得する養成者も、ともに100万円が入社後すぐに受け取れるのなら別だが、一括ではなく分割による支給方法なのか、勤怠の有無やその他の支給条件により100万円が満額支給されないでカットされるのか、など具体的な部分は募集広告の内容だけでは不明のままである。

また、営業収入に対する賃金支払いの割合である賃率について、「最高歩率67%」と表示。そして、入社6カ月Sさんの実績を例として、「売上130万7720円×歩合67% 月収例87万6172円」と記載してあった。130万7720円の売り上げということは、隔日勤務1回あたり10万円を超える営業収入ということになる。都内の平均営収が5万円台前半ということで比較すると、平均の倍の営収という一部の高営収者のみに適用される67%の賃率ということになり、その他の営収に応じた賃率の提示もなく、タクシー事情に疎い人から見ると、営収水準に関わらず67%という数字が全員に適用される賃率と誤解されかねない表現だといえる。

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入社祝い金の実態


報奨金と同義語として、奨励金、褒賞金という言葉が使用されている。また最も多く使用されている入社祝い金と同じ意味合いで使われている祝い金、生活支援金、転職支援金、入社支援金などがある。いずれも金額は20万円~70万円とまちまち。いずれも社内規定有と但し書きされているが、こちらも規定の内容は不掲載である。

入社祝い金で最高額の70万円を表示している会社の支給方法や条件は次の通りである。この70万円の入社祝い金を受け取れるのは、①養成者は対象外で現任乗務員であること②前職で継続して70万円以上の賃金を確保している者(給料明細を提示)③前項の条件で初乗務後に50万円を支給し、残る20万円は1年後――などとなっている。

この1年後20万円も、転職後1年間継続して70万円以上の賃金を確保していることが条件となっていて、すべての応募者に一律に支給するものではなく、一部の優秀な現任乗務員にターゲットを絞ったものでまぎらわしい表現といえる。

そのほかにも二種免許取得費用全額会社負担、と記していても、2年間の継続勤務を条件とし、その間に退社した時のことを考えて支給方法を貸付金扱いとした上で2年後に免除するという方法を取っている。給与保障にしても、ハンドル時間や勤怠の状況によっては保障しないなどの規定があるなど、表示の内容に対して社内規定有とただし書きしてはいるものの、その詳細を掲載すること、そして、自主的な節度ある表示方法への改善が求められる。

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次回Taxi Japan 365号 をお楽しみに!

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