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観光型MaaS「Izuko」が第二フェーズ アプリ止めてブラウザ方式に変更 (Taxi Japan 358号より)

TJ358

本紙の熊澤義一編集長は12月14、15の両日、JR東日本や東急グループが中心となって展開する静岡県・伊豆半島における観光型MaaS「Izuko」の第二フェーズ(期間は12月1日から来年3月10日まで)を現地に赴いて視察した。

本紙では、今年4月にも「Izuko」第一フェーズ(期間は4月1日から6月30日)を視察し、その内容を本紙紙面上でリポートしたが、その第一フェーズと第二フェーズでの観光型MaaSとしての利便性や商品性などの違いと改善点、本紙紙面上でも指摘した第一フェーズで明らかとなった課題である、アプリの使い勝手や観光型MaaSという仕組みそのものの利用者への周知、MaaS運用に参加する路線バスなどの現場運転手への制度の周知徹底、さらには伊豆市内タクシー3社が運行するAIオンデマンド交通は、運行システムはよくできたものだったが、既存の一般タクシーとの棲み分けを気にするあまり使い勝手が悪くなって利用価値が下がり、ほとんど使われていなかったという利用実態の改善状況なども含めて、精力的に見て廻った。

その一方で、観光型MaaSに対する関心が全国で高まり、様々な実証実験が行われているが、利便性の高さや商品力が評価されて利用増に結び付いているモデルは今のところ出ていない。そうした中で、J R東日本と、伊豆急行を傘下に持つ東急グループが中心となり、小田急グループの東海バス、西武グループの伊豆箱根鉄道、さらには静岡県タクシー協会伊豆支部などが参画する観光型MaaS「Izuko」の実証実験には、全国から注目が集まっている。

観光型MaaSについては利便性と商品力のさらなる向上、ワンストップで公共交通機関だけでなく宿泊や旅行先でのアクティビティなども含めて予約・決済・発券・配車、さらには旅程のプランニングとスケジュール管理、MaaSを活用した観光モデルルートの提示、利用者の嗜好やニーズに合わせたAIによる提案やおすすめ機能の搭載なども含め、目指すべき日本の観光型MaaSの世界が拡がっているのも事実だ。

タクシー業界としても、観光タクシーの商品力を高めて、利用増を図っていくためにも、他業種とも連携して観光型MaaSに積極的に関与し、参画していく必要性があるだろう。

<TAXI JAPAN編集長=熊澤 義一>

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J R東日本と大手私鉄の東急


観光型MaaSアプリ「Izuko」は、JR東日本と、伊豆急行を傘下に持つ東急グループが中心となり、さらに小田急グループの東海バス、西武グループの伊豆箱根鉄道、静岡県タクシー協会伊豆支部、旅行業者の楽天なども参加して、伊豆における観光型MaaS実証実験実行委員会を結成し、J Rと大手私鉄が企業グループを横断して地域全体での観光振興を図る観光型MaaSの取り組みとして注目を集めている。

観光型MaaS「Izuko」では、鉄道、路線バス、ワンボックス車両を活用した乗合タクシータイプのAIオンデマンド乗合交通などの公共交通機関、さらにレンタルサイクルなどを、専用スマホアプリで一括して経路検索、予約、決済できるようにすることで、伊豆半島内にある目的地までシームレスで移動できる2次交通統合型サービスとして実証実験を実施した。

第一フェーズは4月〜6月実施


4月1日から6月30日まで実施された観光型MaaS「Izuko」の第一フェーズでは、J Rグループが全国規模で展開した観光キャンペーン「静岡デスティネーションキャンペーン」に併せて実施され、J R東日本が運行する特急「踊り子号」の車内や、伊豆地域の主要駅構内に観光型MaaS「Izuko」の利用をアピールするパンフレットを配置するなどの広報宣伝活動を展開したこともあり、専用アプリ「Izuko」のダウンロード数は、目標としていた2万件を超えて、最終的に2万3231件に達した。

MaaSアプリ「Izuko」は、ドイツの自動車大手ダイムラー・ベンツ傘下のMaaSアプリ「moovel」をベースに開発された。

第一フェーズはデジパス2種類


第一フェーズにおいて、MaaSアプリ「Izuko」で購入・決済できるデジタルフリーパス(購入当日を含む二日間有効)には二種類あり、J R伊東線との接続駅となる伊東駅と伊豆急下田駅を結ぶ伊豆急行線を中心とした東伊豆地域の周遊観光に活用できる大人3700円、小人1850円の「Izukoイースト」と、東伊豆と中伊豆の両地域をぐるりと巡るような周遊観光に使える大人4300円、小人2150円の「Izukoワイド」が提供された。

東伊豆のデジタルフリーパス「Izukoイースト」は、熱海と結ぶJR伊東線の終点であり、伊豆急行線との結節駅である伊東駅と伊豆急下田駅の間が乗り放題となるほか、東海バスが運行する伊東市内路線のほぼ全線および下田市内周辺主要路線が乗り降り自由となる。さらにアプリ「Izuko」は伊豆急下田駅と起点に運行されているAIオンデマンド乗合交通の配車アプリとしても利用でき、エリア内に設置された乗降ポイントなら乗り降り自由となる。

さらにデジタルフリーパスの範囲が拡大されて東伊豆と中伊豆の周遊型となる「Izukoワイド」は、伊豆急行線が伊東駅-河津駅間の片道、そこから先の河津駅-伊豆急下田駅間は乗り放題となるほか、東海バスが運行する下田市内周辺主要路線、伊豆急下田駅と起点に運行されているAIオンデマンド乗合交通もエリア内に設置された乗降ポイントなどを対象に乗り降り自由となる。

さらに、東海バスが運行する河津駅-修善寺駅間の路線バスの片道(逆戻りは出来ない。ただし修善寺温泉-修善寺駅間は乗り放題)に加え、伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅-三島駅間が乗り放題となり、伊豆箱根バスの運行する沼津-長岡線など伊豆長岡駅、修善寺駅、三島駅、沼津駅等を発着する複数の路線バスが乗り降り自由となる。

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アプリ使い勝手などの問題点


本紙編集長が今年4月に伊豆を訪れ、「Izuko」アプリを利用してみると、アプリの使い勝手や観光型MaaSという仕組みそのものの周知方法などについての問題点が浮き彫りとなった。そのことは、現地で話を聞くごとに、観光型MaaSアプリ「Izuko」の利用頻度の低さを感じたことからも明らかだった。

「Izuko」アプリは、観光型MaaSアプリでありながら、アプリ上での旅程のプランニングとスケジュール管理が出来ないという致命的欠陥があり、どちらかというとアプリ上で経路検索をしながら予約、発券、決済、配車などをしていくという都市型MaaSアプリのような機能と仕様になっていた。

MaaSアプリ「Izuko」のベースとなっている、ドイツ自動車大手ダイムラー・ベンツ傘下のMaaSアプリとして世界展開する「moovel」は、海外では主に都市型MaaSアプリとして活用されているケースが多く、反復利用が前提の都市型MaaSと一時的な利用がメインの観光型MaaSでは、アプリの仕様や使い方も含めて、分けて考える必要がある。本紙編集長が、旅行者として「Izuko」アプリが使い辛いと感じた主な理由も、都市型MaaSを前提に作られたアプリを、観光型として流用したことにある、と感じられた。

ダウンロード2万3231件


4月1日から6月30日までの第一フェーズ期間中における「Izuko」のダウンロード数は2万3231件で、実証実験で目標としていた2万件を上回ったものの、ダウンロードされた「Izuko」アプリのうち、実際にデジタルフリーパスとして購入、決済されたのは726件で、ダウンロード数に対して3.1%にとどまった。つまり、「Izuko_」アプリを自身のスマホにダウンロードしても、そのうち30人に1人以下しか実際のデジタルフリーパスを購入しなかったことになる。

デジパス購入は726件のみ


購入されたデジタルフリーパス726件の内訳は、「Izukoイースト」(二日間有効で大人3700円)が561件、「Izukoワイド」(同4300円)はわずか165件だった。

本紙関係だけでも「Izukoワイド」を3件購入したことを考えても、J R東日本や東急グループによる本格的な観光型MaaSの実証実験として注目を集めていることから、全国から相当数の交通・観光・行政などの関係者による視察利用があったことは現地でも聞いており、3ヶ月間の実証実験とは言え、J R東日本や東急グループなどが日本有数の観光地である伊豆で本格的に展開した観光型MaaSとしては、利用数は低調だったと言わざるを得ない。

このことは、観光型MaaSアプリ「Izuko」の、デジタルフリーパスしての使い勝手や商品性、価格設定なども含めて、利用者に対する分かり易さや訴求力が足りなかったことは明らかだろう。

「Izuko」アプリによる観光施設のデジタルパス販売も319件で、小室山リフトが109件、下田海中水族館が98件、黒船遊覧船75件という結果だった。

また、下田市内で運行したAI オンデマンド乗合交通の利用者数は、延べ1,051人(運行日数81日。1日平均13人)という状況だった。

現場レベルでの運用上の問題


本紙編集長が乗車した対象エリア内の路線バス運転手が「Izuko」アプリのことを知らず、購入したデジタルフリーパスが利用できないというトラブルにも遭遇した。一般の観光客だったら「MaaSアプリを使ったことで旅行が台無しになった」と感じただろう。

さらに、伊豆市内タクシー3社が運行するワンボックス車両を活用した乗合タクシー型のAIオンデマンド乗合交通は、運行システムはよくできたものだったが、既存の一般タクシーとの棲み分けを気にするあまり使い勝手が悪くなって利用価値が下がり、ほとんど使われていない実態も判明した。

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アプリからブラウザに変更


第一フェーズの結果を受けて、伊豆における観光型MaaS実証実験実行委員会でも「専用MaaSアプリ「Izuko」が、当初想定を大幅に上回る2万3231ダウンロードを獲得するなど、好調に推移した半面、ダウンロードの手間を含めた操作性や、サービスエリアの限定性、商品の幅、運用面など、多くの課題が浮き彫りになった」などと分析、第二フェーズについては、「Izuko」の運用をアプリ方式からインターネットのブラウザ方式に変更するとともに、JR伊東線(熱海駅~伊東駅)区間をはじめとするサービスエリア拡大や、デジタルパス商品メニュー拡大のほか、実装を見据え、伊豆の多客期(河津桜などが咲く2〜3月)にあわせて実施するとした。

スマートフォンのアプリ方式からインターネット・ブラウザ方式への見直しについては、ホームページやポスター、パンフレットなどのQRコードから誘導ができること、ダウンロードの手間が省けること、コンテンツを更新しやすいこと、などを挙げている。

伊豆でも生活交通維持が課題


温泉地としても有名な風光明媚の観光地である伊豆半島は、東京を中心とする首都圏などから訪れる観光客の約8割が自家用車を利用しており、観光シーズンの土日は道路渋滞が顕在化する一方で、地域住民の移動の足となっている伊東と下田を結ぶ伊豆急行線や修善寺と三島を結ぶ伊豆箱根鉄道駿豆線などの鉄道、東海バスや伊豆箱根バスなどの路線バス、タクシー会社などは、少子高齢化と過疎化の進行、さらには地域経済の疲弊による需要減が経営上の大きな課題となっている。

そこで、地方鉄道や路線バス、タクシーなどを積極的に活用した周遊型観光の促進が、地域の生活交通としての側面も併せ持つ二次交通の維持と発展には必要不可欠との考えなどから、伊豆観光の拠点となる熱海・伊東・伊豆急下田・修善寺の各駅まで東京からの直通列車(特急踊り子号など)を運行しているJR東日本と、伊豆急行を傘下に持つ東急電鉄が中心となり、さらに小田急グループの東海バス、西武鉄道グループの伊豆箱根鉄道、静岡県タクシー協会伊豆支部、旅行業者の楽天なども参加して、伊豆における観光型MaaS実証実験実行委員会(事務局=ジェイアール東日本企画)が結成され、観光型MaaS「Izuko」の実証実験が実施されることになった。

MaaSで地域の生活交通を維持


そうした背景もあり、「MaaSを活用した周遊型観光の促進が、地域の生活交通としての側面も併せ持つ二次交通の維持と発展には必要不可欠」という視点は、これからの日本における地域公共交通の維持・発展を考えると重要であり、実証実験である観光型MaaSアプリ「Izuko」の取り組みについては、さらなるブラッシュアップと運用方法の改善を期待したい、と言うのが、第一フェーズを視察した本紙編集長としての見解だった。

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観光型MaaS「Izuko」 第一フェーズ実績


(2019年4月1日〜6月30日)

内容

実績数

内訳

アプリ「Izuko」ダウンロード

2万3231

 

デジタルフリーパス販売

726

Izukoイースト   561(77%)

Izukoワイド    165(23%)

観光施設デジタルパス販売

319

小室山リフト        109

下田海中水族館      98

黒船遊覧船         75

 AIオンデマンド乗合交通

1051

1日平均13人(最多44人)

JR伊東線区間を新たに追加


今年4月1日から6月30日まで実施した、観光型MaaSの実証実験「Izuko」の第一フェーズでは、専用MaaSアプリ「Izuko」が、目標の2万件を上回る2万3231件のダウンロードを記録した反面、ダウンロードの手間を含めた操作性や、サービスエリアの限定性、商品の幅、運用面など、本格的な観光型MaaSを実現していく上での多くの課題が浮き彫りとなった。
これらを踏まえ、第二フェーズでは、「Izuko」の基幹部分を、アプリではなく、ダウンロードが不要なインターネット・ブラウザを利用するシステムに切り替え、操作性や運用性を大幅に改善することに取り組むほか、JR伊東線(熱海駅―伊東駅)区間をはじめとするサービスエリアの拡大、観光施設などのデジタルパスの商品メニューの充実などを行い、河津桜祭りが催されるなど伊豆の多客期(2~3月)に合わせて、12月1日から3月10日まで実施する。
さらに、ワンボックス車両による乗合タクシー型のオンデマンド乗合交通については、地域課題解決の施策として、下田市内においてTVの操作だけでAIオンデマンド乗合交通が簡単に配車できる仕組みを導入し、観光客だけでなく、より多くの住民が利用できるように配車の仕組みを充実させた。

第二フェーズでの改善点


観光型MaaS「Izuko」の第二フェーズにおける主な改善項目は、①システムの運用をアプリからインターネット・ブラウザに変更、②対応言語について、日本語と英語に加え、台湾や香港などで使用されている繁体字を追加(中国本土は簡体字)、③宿泊客も多い熱海市内からも利用しやすいように、J R伊東線区間(熱海駅―伊東駅)を追加するなどデジタルフリーパスの適用区間を拡大するとともに、熱海市内のバス乗り放題など新たに4種類が加わり、デジタルフリーパスは第一フェーズの2種類から第二フェーズでは利用目的に合わせて6種類に増加、④「Izuko」で発券と決済ができる観光施設のデジタルパスは、「アカオハーブ&ローズガーデン」や「伊豆・三津シーパラダイス」など新施設が加わるなどして第一フェーズの7種類から第二フェーズでは12種類に拡充、⑤下田市内のAIオンデマンド乗合交通は、運行エリアを大幅に拡大して、観光施設や宿泊施設、病院、行政機関など11カ所が追加され、27カ所の乗降ポイントで運用。地元住民向けに、自宅のTVでの配車予約の仕組みについても試験導入された。一方で、運賃については、第一フェーズでは無料だったが、第二フェーズでは運行エリアの大幅な拡大もあり、1日乗り放題で400円に設定――など。

デジパスは2種類から6種類


第一フェーズでは、メインとなるデジタルフリーパスは、伊東や伊豆高原、河津、下田などの東伊豆地域を中心とした観光のための「Izukoイースト」(二日間有効で3700円)と、東伊豆地域に加えて、浄蓮の滝や天城越え、修善寺などの中伊豆地域と修善寺から東海道新幹線やJ R東海道線との接続駅となる三島駅を結ぶ伊豆箱根鉄道駿豆線を含む「Izukoワイド」(二日間有効4300円)の2種類だったが、第二フェーズでは、もっと多くの観光客に観光型MaaS「Izuko」を利用してもらうため、東海バスや伊豆箱根バスの1日フリー乗車券なども含めて6種類に拡充した。

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アプリ方式とブラウザ方式


12月1日から来年3月10日までの第二フェーズの「Izuko」では、ドイツ自動車大手ダイムラー・ベンツ傘下のMaaSアプリとして世界展開する「moovel」をベースとしたアプリではなく、インターネット・ブラウザ方式に変更した。

インターネット・ブラウザ方式にすることで、ホームページやポスター、パンフレットなどのQRコードから「Izuko」に誘導ができること、ダウンロードの手間が省けること、コンテンツを更新しやすいことなどがメリットして挙げられている。

一方で、アプリから利用者に通知するプッシュ通信が出来ないことや、観光の途中で観光情報などをウェブで閲覧するためにインターネット・ブラウザを使用すると、デジタルフリーパスのページが変更されてしまい、スマホ操作に慣れていない利用者が困惑するケースが想定されるなどのデメリットもある。

旅行した際の一時的な利用が多い観光型MaaSでは、アプリとインターネット・ブラウザのどちらの方式が主流になるか、反復利用がメインで高機能アプリが主流になるとみられている都市型MaaSとのシステム運用の相違にも関心が集まりそうだ。

デジパスは目視確認での運用


「Izuko」で導入されるデジタルフリーパスは、駅係員や路線バス運転手などにスマホ画面を見せて目視での確認をするタイプで、このため画面キャプチャーなどによる偽造防止を目的に、有効期間内は画面上の鉄道アイコンが動く仕様になっている。

第二フェーズでは、デジタルフリーパスのエリアに、東海道新幹線やJ R東海道線との接続駅となる熱海駅と、伊豆急行線との接続駅となる伊東駅とを結ぶJ R伊東線区間が追加され、観光型MaaSとしての利便性や商品性が大幅にアップ。

特に、東京と伊豆との接続駅となる熱海がデジタルフリーパスのエリアに含まれることになったことで、宿泊客の多い熱海から、伊東、伊豆高原、河津、下田といった東伊豆地域の観光拠点、さらには河津から温泉地で有名な修善寺へと向かい、三島から東海道新幹線で東京方面に戻るという周遊ルートとしても「Izuko」が活用できる。

伊東線が加わり商品力アップ


第二フェーズのデジタルフリーパスは、「Izukoイースト」(二日間有効、大人3700円)、「Izukoワイド」(二日間有効、大人4300円)のほか、新しく追加された「Izukoプチ」(二日間有効、大人2800円)、「Izukoグリーン」(二日間有効、大人2400円)、「東海バス熱海エリア遊〜遊〜パス」(フリー切符一日乗車券、大人800円)、「伊豆箱根バス 熱海満喫乗車券」(フリー切符一日乗車券、大人500円)の6種類。

このうち、「Izukoイースト」(3700円)は、J R伊東線(熱海駅―伊東駅)、伊豆急行線(伊東駅―伊豆急下田駅)、東海バス(伊東駅―小室山リフト、伊豆高原駅―シャボテン公園、伊豆急下田駅―龍宮窟・海中水族館)が二日間乗り放題となる。

J Rと伊豆急が相互乗り入れをしている熱海駅から伊豆急下田駅までの片道運賃は1980円であり、往復運賃だけで3960円となることから、東伊豆地域の公共交通による周遊観光ならいかに「Izukoイースト」が割安になるかがわかる。

「Izukoワイド」(4300円)なら、J R伊東線(熱海駅―伊東駅)、伊豆急行線(伊東駅―伊豆急下田駅)に加え、伊豆箱根鉄道駿豆線(修善寺駅―三島駅)、さらには伊豆箱根バス(三島、伊豆長岡、沼津など)、東海バス(伊豆急下田駅―龍宮窟・海中水族館)などが二日間乗り放題となり、東伊豆の河津駅と中伊豆の修善寺駅間を結ぶ東海バス(片道方向の乗車のみ)も利用でき、うまく利用すれば伊豆の周遊観光における利便性は非常に高い。

新しく追加された「Izukoプチ」(2800円)は、J R伊東線(熱海駅―伊東駅)、伊豆急行線(伊東駅―伊豆高原駅)と、東海バスが運行する熱海市内の主要バス路線の二日間の乗り放題がセットになったもので、熱海からもう一足伸ばす観光に便利な構成。

「Izukoグリーン」(2400円)は、温泉で有名な修善寺を中心とした中伊豆と三島がメインで、伊豆箱根鉄道駿豆線(修善寺駅―三島駅)、伊豆箱根バス(修善寺駅―修善寺温泉)、東海バスが運行する三島市内の主要路線が二日間乗り放題となる。

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熱海から下田、修善寺、三島


本紙編集長は、東京駅から東海道新幹線で熱海駅へ、熱海駅でデジタルフリーパスの「Izukoワイド」(二日間有効で4300円)を購入し、伊豆高原で宿泊、下田、河津と巡り、河津から路線バスに乗車して浄蓮の滝、天城越え、そして温泉で有名な中伊豆の修善寺へ。修善寺駅から伊豆箱根鉄道駿豆線に乗って三島駅へ。三島駅から東海道新幹線で東京に戻った。

周遊観光では、やはりエリア内は乗り降り自由(一部制限あり)となるデジタルフリーパスは便利だ。一方で、観光や周遊のモデルルートの提示と、そのためのデジタルフリーパスと連携した旅程のプランニングとスケジュール管理機能の実装は、観光型MaaSでは必要不可欠であり、特に地方では電車や路線バスの運行本数が限られ、1本乗り遅れただけで旅程を大幅に変更したり、訪問予定の観光施設を諦める必要性が出てきたりすることも想定され、そうなると「やはり時間の融通の効く自家用車で観光」ということにもなりかねない。

公共交通が充実しているエリアの都市型MaaSでは、即時的なルート検索と予約・発券・配車・決済などの基本的な機能を充実させれば良いが、そもそも運行本数などの面で公共交通の利便性が高くない地方がエリアとなる観光型MaaSでは、旅行に出発する前における旅程のプランニングとスケジュール管理、現地において当初の旅程やスケジュールを変更した場合のルート検索結果との連動などの機能実装が、MaaSとしての利便性を高める上では必要不可欠であり、そうした観点からは「Izuko」も旅程のプランニングとスケジュール管理の機能を実装しておらず、これからの機能改善が期待される。

下田のAIオンデマンド交通


ワンボックス車両による乗合タクシー型のAIオンデマンド交通は、高齢者などの地域住民の足の確保という地域課題解決の施策として、TV の操作だけで AI オンデマンド乗合交通が簡単に配車予約できる仕組みを試験導入したほか、より多くの人が利用できるよう利用手段を拡充。乗降スポットも第一フェーズの16カ所から、さらに利便性を高めるため第二フェーズでは27カ所に増やした。

乗降スポットには、下田港内クルーズの黒船遊覧船や下田ロープウェイの乗り場、下田東急ホテルなどの観光施設、下田メディカルセンターなどの病院、下田市役所などの行政機関など11カ所を追加したほか、運行時間も、第一フェーズの午前10時~午後5時までから、午前9時から午後5時までに、開始時間を1時間早めた。

一方で、第一フェーズでは無料だったAIオンデマンド乗合交通の利用料を、第二フェーズではエリア拡大などに伴い一日乗り放題で400円に設定した。

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本紙編集長が伊豆へ


本紙編集長は、12月14、15の両日、JR東日本や東急グループが中心となって展開する静岡県・伊豆半島における観光型MaaS「Izuko」の第二フェーズ(期間は12月1日から来年3月10日まで)を現地に赴いて視察した。

熱海駅で東海道新幹線から降車すると、アプリからインターネット・ブラウザ方式に変更された「Izuko」をスマートフォンのブラウザで検索し、専用ページで会員登録を行い、クレジットカードで決済した。利用を開始すると二日間有効となり、インターネット・ブラウザ上に表示された「Izukoワイド」のデジタルフリーパスポートの画面では、電車のアイコンが動くことで有効期間内であることを示していた。

専用アプリをダウンロードする必要性は無くなったものの、スマートフォンのインターネットブラウザは観光の途中でも頻繁に利用することから、その都度、デジタルパスポートの表示画面が切り替わることから、スマートフォンの扱いに慣れていないケースでは、有効にしたインターネット・ブラウザ上のデジタルフリーパスポートがどうなるのか、不安になる利用者もいるのではないか、と気になった。

また、経路検索には「mixway」という外部サイトの機能を利用するシステムで、実証実験なので仕方ない部分もあるが、別々のサービスを組み合わせただけ、インターフェースや使い勝手の一体感、連携には欠ける感じもした。

アプリからインターネット・ブラウザ方式への変更には、機能性との関係において一長一短があることは確かだが、それよりも、そもそも運行本数などの面で公共交通の利便性が高くない地方がエリアとなる観光型MaaSでは、旅行に出発する前における旅程のプランニングとスケジュール管理、現地において当初の旅程やスケジュールを変更した場合のルート検索結果との連動などの機能実装がMaaSとしての利便性を高める上では必要不可欠であり、そうした観点からは「Izuko」も旅程のプランニングとスケジュール管理の機能を実装しておらず、これからの機能改善は必須だ。

駅構内などに多くのポスター


伊豆急行線の伊豆高原駅に到着すると、駅構内に「Izuko」をアピールする看板が多数設置されていた、第一フェーズにおける実利用低迷への対策だろうが、観光型MaaSは、旅行を開始する前に、訪問者に周知し、利用してもらう必要がある。第二フェーズの実施期間が12月1日から3月10日までと考えると、仮に、伊豆高原駅で「Izuko」に関心を持った観光客が、期間中に再度、伊豆を訪れる可能性を考えても、P Rの方法には再考の余地がありそうだ。

それでも東京からの特急踊り子が伊豆急下田駅に到着すると多くの乗客が降車したが、その中には車内配置のIzukoパンフレットを手に持つ観光客の姿も散見され、利用は低迷しているものの観光型MaaSそのものへの関心は一定程度あるようだった。

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AIオンデマンド交通を利用


伊豆急下田駅の改札を出ると、AIオンデマンド交通のデジタルパスを決済した。 1日乗り放題で400円だった。登録したクレジットカードで決済すると、AIオンデマンド交通のデジタルパスがIZUKOに追加された。

一方で、「Izuko」デジタルフリーパスの保有者でもAIオンデマンド交通を使うためには、再度、利用者情報の登録が必要だった。システム運用上の都合だろうが、利用者の立場からは、同じMaaSの中で利用する交通モードが変わるたびに利用者登録を行うことは面倒であり、利用者にとって必然性を感じない。それも決済後に利用者情報の登録を求めてくるという手順も疑問で、実証実験とはいえ、有償であり、利用者負担の軽減と利便性は優先すべきで、一括登録によるワンストップは必須だ。

そもそも、旅行先で乗合タクシーを利用するためだけに利用者情報を登録することに抵抗感を覚える観光客も多いのではないか。

全国から多くの視察者訪れる


乗車ポイントを伊豆急下田駅、降車ポイントをペリー上陸記念公園に設定すると、約8分で配車されてくると表示された。アプリと違い車両の動態表示はされず、到着までの所要時間がカウントダウン方式で示された。大きな不都合は無いが、やはり動態表示があった方が利用者としては安心だ。

ワンボックス車両の相乗りタクシー型AIオンデマンド交通が乗車ポイントに配車されて来たら、デジタルパスの画面を運転手に見せて乗車した。運行はスムーズだった。

運転手に聞くと、冬のオフシーズンということもあり、平日は1台、土日祝日は2台体制での運行ということだった。

注目を集める本格的な観光型MaaSということもあり、運転手に聞くと、交通・観光・行政など様々な関係者が九州をはじめ全国から視察に来ており、本紙編集長が訪れた3日前にも50人規模の関係者による視察があり、対応のために3台体制でAIオンデマンド交通を運行したとのことだった。

高齢者など地元住民の利用


一方で、AIオンデマンド交通には、観光客だけでなく、高齢者など地元住民の足の確保という役割も期待され、病院や市役所などの公共施設、買い物のための商業施設なども乗降ポイントに設定し、地元住民には紙の利用券も配布したが、配車システムがお年寄りには複雑で、利用はほとんど無いということだった。地域の実態や実情にあった運行方法への見直しが必要だ。

運転手は、せっかくお年寄りが普段の生活で使用する病院にも乗降ポイントを設置したのだからぜひ利用してもらいたい、と話していた

一方で、配車システムの操作性の問題からキャンセルと再予約が繰り返されるケースもあるとのことだった。

観光施設のデジタルチケット


観光施設のデジタルチケットでは、下田港内クルーズの黒船遊覧船を決済して利用。通常1250円が1000円に割引されたが、せっかくスマホで決済・発券したのに、乗船する前に乗船券の販売窓口に行ってスマホ画面に直接機器を当てて電子スタンプを押してもらう必要があり、「何のためにスマホで決済し、発券したのか」という気分にもなった。

また、下田港内クルーズの黒船遊覧船は本紙編集長が訪れた12月15日までの2週間ほどで「Izuko」による利用は10人ほどあったが、すべて関係者の視察とのことだった。

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公共交通利用時の待ち時間


伊豆急行の河津駅から中伊豆の修善寺駅まで東海バスの路線バスに乗車したが、待ち時間が1時間ほどもあった。公共交通利用時の長い待ち時間の発生は、地方の観光地をエリアとする観光型MaaSにおける大きな課題だ。だからこそ、旅程のプランニングとスケジュール管理の機能の実装は、観光型MaaSのシステムには必要不可欠となる。また、最初3人いた路線バスの乗客も、途中から本紙編集長1人になった。バス路線を維持していくためにも、需要喚起の取り組みは必須だ。

一方で、今年4月に本紙編集長が「Izuko」実証実験の第一フェーズで利用した際には、路線バス運転手が「Izuko」実証実験の存在を知らず、本来は利用できるデジタルフリーパスが「利用できない」と言われて仕方なく現金決済、営業所担当者から返金を受けるというトラブルに遭遇したが、今回は運転手への周知もしっかりと出来ており、スムーズにデジタルフリーパスが使用できた。

観光型MaaSに積極的参画


観光型MaaSに対する注目が全国で高まり、様々な実証実験が行われているが、利便性の高さや商品力が評価されて利用増に結び付いているモデルは今のところ出ていない。そうした中で、J R東日本と、伊豆急行を傘下に持つ東急グループが中心となり、小田急グループの東海バス、西武グループの伊豆箱根鉄道、さらには静岡県タクシー協会伊豆支部などが参画する観光型MaaS「Izuko」の実証実験には、全国から注目が集まっている。

自家用車の利便性を凌駕する移動サービスを提供するハードルは、日本では道路環境や道の駅などの施設整備が進む中でさらに高くなっているのも事実だが、一方で、運転免許証を返納する高齢者、さらには運転免許を取得しない若者も都市部を中心に増えており、そういった人々の観光ニーズも踏まえて観光型MaaSについては利便性と商品力のさらなる向上、ワンストップで公共交通機関だけでなく宿泊や旅行先でのアクティビティなども含めて予約・決済・発券・配車、さらには旅程のプランニングとスケジュール管理、MaaSを活用した観光モデルルートの提示、利用者の嗜好やニーズに合わせたAIによる提案やおすすめ機能の搭載なども含め、目指すべき日本の観光型MaaSの世界が拡がっているのも事実だ。

そして、柔軟に観光ルートが組めるのがタクシーの機動力であり、観光タクシーの商品力を高めて、利用増を図っていくためにも、タクシー業界として他業種とも連携して観光型MaaSに積極的に関与し、参画していく必要性があるだろう。

<高橋 正信>

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