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Japan TaxiとMOVが4月1日統合 日交HDとDeNA共同筆頭株主に (Taxi Japan 361号より)

タクシージャパン361号

川鍋氏と守安氏

日本交通ホールディングス(川鍋一朗代表取締役、都内港区)とDeNA(守安功社長、都内渋谷区)は2月4日、都内千代田区にある「ホテルニューオータニ」で記者発表会を開き、4月1日付で日本交通ホールディングス(HD)が筆頭株主であるJapan Taxi(川鍋一朗社長、都内千代田区)のタクシー配車アプリ「Japan Taxi」とDeNAのタクシー配車アプリ「MOV」の事業を統合すると発表した。

両社のタクシー配車アプリ事業の統合は、会社分割による吸収分割のスキームで実施され、分割会社となるDeNAがタクシー配車アプリ「MOV」の事業を分割し、Japan Taxiが継承会社として同事業を統合する。Japan Taxiは対価として新株20万株を発行してDeNAが受領する。これにより日本交通HDとDeNAは、同じ持ち株比率38.17%で両社が並んでJapan Taxiの共同筆頭株主となる。

DeNAが経営に参画することになったJapan Taxiは4月1日付で社名を変更し、代表取締役社長の川鍋氏が代表取締役会長となり、新しく代表取締役社長に中島宏・DeNA常務執行役員オートモーティブ事業本部長が就任する予定。

タクシー配車アプリ「Japan Taxi」と「MOV」の統合作業の進め方やスケジュールは現時点では未定だが、利用者向けアプリは利便性向上の観点などから一本化される見通し。

<タクシージャパン編集長=熊澤 義一>

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2月4日に記者発表


タクシー配車アプリを巡っては、東京大手・日本交通グループ傘下の「Japan Taxi」、DeNA「MOV」、DiDiモビリティジャパン「DiDi」、みんなのタクシー「S.RIDE」、「Uber」の主要5社が熾烈なシェア争いを展開しているが、このうち全国シェアトップの「Japan Taxi」と神奈川や京阪神、東京などで大きなシェアを持つ「MOV」が4月1日付で統合されることで、配車可能タクシー車両数が全国で約10万台強、アプリダウンロード数で合計1000万超の規模となることから、他の3社の事業戦略にも大きな影響が及ぶことは確実で、さらなるタクシー配車アプリの再編・統合の端緒となる可能性もある。

2月4日に急きょ開かれた記者発表会で、日本交通ホールディングス(HD)の川鍋代表取締役は、タクシー業界の抱える課題を示しながら「なかなか思ったようなスピードで改革が進まない中で、技術力やマーケティング力のあるITメガベンチャーDeNAのMOVが横にいた。もっとスピードアップするために、MaaS時代にタクシーがラストワンマイルを担っていくために、DeNAと一緒にやることを決断した。対等の立場での統合だ」などと述べた。

DeNAの中島・常務執行役員オートモーティブ事業本部長は「Japan TaxiとMOVの両事業を対等の立場で統合することになった。これにより日本最大のモビリティサービス運営会社が誕生することになった」などとしながら「国内の約半数のタクシー、アプリのダウンロード数やユーザー数においても日本のタクシー配車アプリとしては最大規模になる。アプリ統合後の会社概要については、日本交通HDとDeNAが共同筆頭株主として持ち株比率38.17%で同じとなる。会長は川鍋氏、社長に私が就任する予定だ」などと説明。

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アプリ配車数は全体の約2%


その上で、DeNAの中島常務は「グローバルにはオンデマンドのモビリティサービスを提供する企業が多数現れ、もの凄い勢いでサービスを普及させており、世界各地で高い価値を提供している。一方で、日本におけるモビリティサービスであるタクシーは、月間で約1億回の輸送回数があるが、この中で配車アプリ経由つまりオンデマンド・モビリティサービスの割合は、我々の2つの配車アプリだけでなく国内主要アプリの全部を合算しても、多くても概算で約2%しかないという我々の調査結果が出た」などと指摘して「日本では(配車アプリなどによる)オンデマンド・モビリティサービスが普及しているとは、到底言えない状況にある」と強調。

日本は配車アプリ後進国


続けて、「日本は配車アプリ後進国と言っても過言ではなく、こうした状況に非常に強い危機感を抱き、このままでは様々な課題を解決することが出来ないと判断したことが統合協議に至った背景だ」としながら、「利用者が乗りたい時にタクシーに乗れないという、乗務員不足と高齢化によるタクシー供給力の減少という業界の根本課題が解決されていない状態にあり、その一方で供給不足となっているタクシーの生産性向上にも大きな課題がある。乗務時間に対する実車時間の割合は業界平均で20~30%程度しかない中で、日本のタクシー会社は中小規模が多く、201台以上を保有する大手は全体の約1%しかなく、200台以下の規模で全国の車両台数の約86%を占めるというのが現状であり、そのため改善に向けた投資も制限される」などと課題を指摘しながらも、「海外などでも問題の多いライドシェア導入がその解にはならない。世界的にも質の高い日本のタクシーサービスにおいて、配車アプリで世界最先端の事例を生み出すというリープフロッグ(蛙飛びのような一気の進展)のような現象を起こすという意識が重要で、日本市場に適したサービスをつくり上げるために両社のタクシー配車アプリ事業を統合することになった」などと説明した。

DeNAが501億円の赤字に


一方、DeNAでは、タクシー配車アプリ「MOV」を含むオートモーティブ事業に関して、2019年3月期決算において1億9700万円の売上で36億1100万円の赤字を計上し、その後の2020年3月期決算においても第2四半期までの半年間で5億6600万円の売上で31億9300万円の赤字となり、さらに第3四半期(昨年4月~12月)には同事業の赤字額は53億円にまで拡大。このうちシェア獲得競争が激しく、先行投資の大きな「MOV」事業が赤字の大きな割合を占めていたようだ。

DeNA本体も翌2月5日に開催した2020年3月期決算第3四半期(昨年4月~12月)決算説明会において、主力のゲーム事業の不振による売上減少に加え、米国ゲーム会社の買収等に関するのれん代など494億円の減損損失を計上したことから501億円の赤字となり、南場智子会長と守安功社長が役員報酬の50%を3か月間自主返上することなどを発表した。

そうした状況の中で、大規模な先行投資をしながら短期的な収益化の見通しが立たないタクシー配車アプリ「MOV」事業を会社分割でDeNA本体から切り離し、吸収分割の仕組みを利用して同業のJapan Taxiが事業承継することで「MOV」と「Japan Taxi」のタクシー配車アプリ事業を統合。DeNAは4月1日以降、日本交通HDと並ぶJapan Taxi(会社名は変更の予定)の筆頭株主として、統合後のタクシー配車アプリ事業に関与していくことになった。

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吸収分割による会社分割


吸収分割は、株式会社などがその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後に、他の会社に承継させるという会社法に基づく会社分割の仕組みで、吸収分割のメリットとしては、事業を承継する側の企業(承継会社:今回のケースではJapan Taxi)は対価として新株を発行すればよく資金が不要なこと、事業資産や各種契約などの包括承継のため事業譲渡と比べて契約関係の移転手続がシンプルなこと、転籍させる従業員から個別に同意を得る必要がないこと、事業の承継会社側が経営統合を一気に実現できるためシナジー効果を早期に獲得しやすいこと、などが挙げられる。デメリットとしては、分割会社(今回のケースではDeNA)に対して新株を発行することから、承継会社側の株主価値が希薄化することだ。

今回の吸収分割では、DeNAが分割会社となり、タクシー配車アプリ「MOV」事業(AIとIoTを活用したタクシーなどの商用車向け交通事故削減支援サービス「DRIVE CHART」などを含む)を分割、同事業の承継会社となるJapan Taxiが対価として20万株の新株をDeNAに発行するという形となる。新株発行によりJapan Taxiに出資している既存株主であるトヨタ自動車やNTTドコモ、韓国・カカオモビリティなどの株主価値は希薄化し、出資時点における事業スキームからも大きく変わることになるが、その一方でこれら出資者にとってもタクシー配車アプリ事業の拡大メリットは大きい。

日交HDとDeNAが筆頭株主


20万株の新株発行により、Japan Taxi(4月1日付で社名変更予定)の持株比率は、日本交通HDが現在の68.03%から38.17%に下がる一方でDeNAも38.17%の持株比率となることから、両社が同じ持株比率でJapan Taxiの筆頭株主となる。残る23.66%の株については、Japan Taxiの既存株主であるトヨタ自動車やNTTドコモ、韓国・カカオモビリティなどが保有する。

タクシー配車アプリ「MOV」事業の吸収分割が実行される4月1日以降のJapan Taxi(社名は変更予定)の役員体制は、Japan Taxi代表取締役社長の川鍋一朗・日本交通ホールディングス代表取締役(日本交通会長、東タク協会長、全タク連会長)が代表取締役会長となり、新しく中島宏・DeNA常務執行役員オートモーティブ事業本部長が代表取締役社長に就任する予定となっている。

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配車アプリは規模が重要


また、DeNAの守安社長は、2月5日に都内で開催された同社の2020年3月期第3四半期決算説明会において、タクシー配車アプリ事業「MOV」を「Japan Taxi」と統合することについて触れ、事業統合の2つのポイントとして①タクシー業界に深く関わり全国で約7万台のタクシー配車ネットワークを持つ「Japan Taxi」と、AIやインターネットを活用した技術開発やサービスづくりに強みを持つ「MOV」により、補完関係の取れたパートナーシップが構築できること、②タクシー配車アプリのビジネスは規模が非常に重要であり、「Japan Taxi」と「MOV」の統合により約10万台強のタクシー配車ネットワーク、2つのアプリ合計で1000万超のダウンロード数となり、強い陣営になること――などを挙げた上で、「具体的なサービスの統合やスケジュールなどについてはこれから協議していくことになる」としながらも「今後は、タクシー配車アプリにとどまらず、自動運転時代や他のモビリティサービスも見据えて、MaaS領域においても有力なプレイヤーになれるのではないか」との見方を示した。

タク配車アプリは体力勝負に


タクシー配車アプリを巡っては、激しいシェア獲得競争から全国シェアトップのJapan Taxiも2019年5月期決算で19億6400万円の売上に対して29億500万円の当期損失を出す赤字となっており、「先行投資による体力勝負」の様相を呈している。

全国シェアトップの「Japan Taxi」と神奈川や京阪神、東京などで大きなシェアを持つ「MOV」が4月1日付で統合されることで、配車可能タクシー車両数が全国で約10万台強、アプリダウンロード数で合計1000万超という一歩抜けた規模になることから、他の主要タクシー配車アプリ会社の事業戦略にも大きな影響が及ぶことは確実で、さらなるタクシー配車アプリの再編・統合の端緒となる可能性もある。また、配車プラットフォームとして自動運転やMaaSへの対応も睨みながら、事業の収益化に向けた取り組みも加速することになりそうだ。

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次回Taxi Japan 362号 をお楽しみに!

Taxi Japan最新号は公式サイトでご覧いただけます。

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