新型コロナウイルス禍の長期化は、社会経済全般に深刻なダメージを与え、タクシー業界においてもこれまで経験したことのない事態が発生している。
まず、「多摩の営収が 特別区.武三を逆転 タク需要回復の地域間格差広がる」の前号見出し記事で、今年7月の原価計算対象事業者の実働日車営収は特別区.武三地区が3万5525円、多摩地区が3万9326円と報じた。これは、これまで起こりえなかった現象が惹起しているということだ。
日本を代表する高営収のタクシーマーケットである特別区.武三地区では、大企業の多くが推進するテレワークの拡大や、大型イベントの中止や入場制限、さらに飲食店の営業時間短縮など数々の新型コロナ感染防止対策の影響によりタクシー需要が激減し、かつてない多摩地区との営収逆転となった。
また、タクシーデータ.ランクサービス社(砂田唱志代表、都内青梅市)がまとめた、特別区.武三地区の法人タクシーのうち204社分の7月輸送実績ランクでは、ウイズコロナからアフターコロナにおけるタクシー業界の近未来を暗示するような数値や内容を含んでいた。保有台数割の営収ランクの上位ベスト10社ないし20社をみてみる。(カッコ内は前年7月実績)
特別区.武三地区ベスト10社の実働日車営収は1位が5万2250円~10位4万3357円(7万2768円~5万8851円)、実車率42.7%~39.2%(61.3%~50%)、実働日車走行キロ265キロ~230キロ(305キロ~262キロ)などと軒並み低迷している中で、上位の事業者の稼働率は96.5%~83.6%(96.5%~80.9%)と、前年実績並みのフル稼働状況となっている。
特別区.武三地区ベスト10社の内訳は、国際自動車(4社)、日本交通、日本交通の系列会社またはフランチャイズが5社となっており、国際自動車と日本交通の大手2グループで独占されている。昨年7月は、国際自動車(3社)と国際自動車のフランチャイズ1社、日本交通の系列会社またはフランチャイズが3社の計7社で、残る3社は両大手グループ以外だった。さらにベスト20社まで広げてみると、国際自動車と日本交通の大手2グループ関係だけで20社中18社を占め、昨年同月の20社中15社から、さらに大手2グループで寡占化する傾向が強まっている。
特定顧客の無線利用やアプリ配車に精力的に取り組んできた国際自動車と日本交通の2大手が、他社との競争で優位性を高めている。テレワークの定着化などで流しを中心としたタクシー総需要の回復がおぼつかないことが予想されるアフターコロナに向けて、この二極化傾向はさらに顕著になっていくとみなければならない。
(高橋 正信)
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