東京無線協同組合(坂本篤史理事長)とチェッカーキャブ無線協同組合(秋山利裕理事長)は4月2日、都内新宿区の「京王プラザホテル」において「東京無線・チェッカー無線業務提携合同出発式」を開催した。
東京無線とチェッカーキャブの業務提携により、タクシー車両台数が約6500台(東京無線社約3700台、チェッカーキャブ社約2800台)という、都内最大のタクシーグループが誕生し、4月1日からスタートした。
将来的な組織統合も視野に入れた今回の東京無線協組とチェッカーキャブ無線協組の業務提携では、両協組の屋上表示灯をタワー型の「東京無線」のものに統一するほか、タクシー車両にはチェッカー模様の帯(JAPANタクシーなどに限る)を装着することで、タクシー車両外観の統一を図る。また、タクシーチケットの相互通用、さらには3日間の新任乗務員研修の東京無線での合同研修実施など乗務員教育研修の共同運営が開始された。
合同出発式には、東京無線とチェッカーキャブ無線の正副理事長や理事など両協組に加盟する多くの事業者が出席したほか、来賓として、東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長、東京タクシーセンターの松澤義雄専務理事、東京ハイタク交通共済協組の飯村勉専務理事、関東自動車無線協会東京支部の佐藤博文常任理事、日産自動車販売の須山義弘社長、トヨタモビリティ東京の村山巌常務、MobilityTechnologiesの中島宏社長、S.RIDEの西浦賢治社長ら多数の来賓が駆け付けた。
東京無線の坂本理事長が挨拶
冒頭の挨拶で、東京無線協組の坂本篤史理事長(実用興業社長)は「感無量だ」としながら、「新型コロナウイルスという逆風が吹く中だが、一緒になろうとしたチェッカーキャブ無線と東京無線のメンバーにも恵まれ、今日のこの日を迎えることが出来た。そして感慨深いのは、チェッカーキャブの三浦(宏喜・毎日タクシー)顧問、そして歴代の東京無線理事長である西澤(憲嗣・代々木自動車)相談役、荻野(隆義・国産自動車交通)相談役、川村(泰利・宮園自動車)相談役にも臨席を賜ったことだ」などと感慨深く述べた。
そのうえで「思い起こせば、新型コロナウイルスが問題になっていなかった頃に、チェッカーキャブと東京無線の首脳陣が一堂に会しての業務提携に向けた初会合を開催した。その後の懇親会の姿をみて、私はチェッカーキャブの皆さんと一緒にやっていきたい、やっていけるぞ、そう確信した。その後、何回も会合を重ね、そして営業、教育、無線の3つの分科会を作って、細かな案件の調整をしてもらって今日に至った」などと振り返った。
すぐに捕まるタクシー目指す
坂本理事長は「私が求めるタクシーとは、お客様が求める時にすぐに捕まるタクシーだ」としたうえで、「今回のチェッカーキャブ無線協組と東京無線の提携によって6500台、東京都特別区・武三地区の法人タクシーの4台に1台が(業務提携した)私たちのグループのタクシーになる。この規模を活かして、東京で一番に捕まり易いタクシーを実現したい。ただし、規模があればよい、というだけのものではない。そこには、お客様に乗って良かった、と思っていただけるような接客・応対が必要だ。今般の業務提携では、乗務員教育を一緒にやっていこう、ということになっているので、(東京無線とチェッカーキャブ無線の)両者が切磋琢磨して接客のレベルを上げていきたい」と要請した。
日本交通に負けないよう頑張る
さらに、坂本理事長は「来賓として、東タク協の川鍋(一朗・日本交通)会長にも出席していただいているが、(東京大手でフランチャイズ化を進める)日本交通にも負けないように頑張っていきたい。今日は、そのためのスタートの日だ。この先には、『舗装された道』が用意されている訳ではない。砂利道や泥道、あるいは草木が生い茂ったところを切り拓いていかなければならないかもしれない。そんな時に、今日出席している(東京無線・チェッカーキャブ無線の)皆さん方と喧々諤々、意見をぶつけ合って道を切り拓いていける、そういう素地のある両協組だと確信している」と述べ、最後に「チェッカーキャブの皆さん、東京無線の皆さん、力を合わせながら、選ばれ、愛用されるタクシーグループを作って行こう」と呼び掛けた。
チェッカー無線の秋山理事長挨拶
続いて挨拶した、チェッカーキャブ無線協組の秋山利裕理事長(山三交通社長)は、「今日を迎えるにあたり、チェッカーキャブ無線と東京無線の幹部の方々には何度も集まってもらい、そして、この業務提携に賛同していただいた皆さんにも感謝を申し上げたい」とした上で、「実は、(東京無線とチェッカー キャブの)業務提携の話は、東京無線の西澤相談役とチェッカーキャブの三浦顧問(が両協組の理事長などを務めていた数年前)の頃からずっとあって、それに私も関わってきたという経過がある。当時は、両協組とも5000台以上の規模があり、様々な意味で余裕もあったと言えるかもしれない」などと指摘。
大手のフランチャイジーや廃業
そのうえで、秋山理事長は「しかし近年は、(チェッカーキャブや東京無線を脱退して)大手のフランチャイジーになる事業者が増え、残念ながら(事業を譲渡するなどして)廃業するという選択をした事業者も出ている。新型コロナ禍の中で、そうした傾向が強まった側面もあるだろうが、今日、(チェッカーキャブ無線協組と東京無線協組の業務提携という)この日を迎えられたことは大いなる喜びだ」とした。
協組そのものの合併へ期待
秋山理事長は「新型コロナ禍の収束後には、少しは(中小タクシーを取り巻く事業環境の)様子も変わってくるのかもしれないが、高齢化する日本ではタクシーを必要とする方はまだまだ多く、そういったお客様に選ばれるように、また、移動の助けが出来るように、協同組合としての相互扶助の精神で皆が協調して頑張って行けるように、全員参加で(今回の業務提携を)盛り上げていきたい」とし、「近い将来に、この業務提携がうまくいって、無線事業、そして協組そのものの合併が出来ることを願っている」などと締め括った。
来賓に東タク協の川鍋会長ら
来賓として、東タク協の川鍋一朗会長、東タクセンの松澤義雄専務理事、東京ハイタク交通共済協組の飯村勉専務理事、関自無東京支部の佐藤博文常任理事、日産自動車販売の須山義弘社長、トヨタモビリティ東京の村山巌常務、MobilityTechnologiesの中島宏社長、S.RIDEの西浦賢治社長ら多数の来賓が駆け付けた。
川鍋会長「素晴らしい決断」
来賓を代表して挨拶した、東タク協の川鍋会長は「本日は、この記念すべき日にお招きをいただき感謝する。私は、タクシー業界に入って年になるが、東タク協副会長時代の正副会長会議において『ああ、そうか』と思ったことがあり、それは、大手協同組合の理事長の方から『川鍋さんのところは一人で決められるからいいよね。うちには人ものオーナー経営者がいて大変だよ』などと言われたことだった。当時は、あまり理解できていなかったが、その後に私も業界での経験を重ね、協同組合という組織における意思決定の大変さ、祖父や父の代からという歴史の積み重ねなどもある複雑な組織構造、そうした中で、(東京無線協組とチェッカーキャブ無線協組の将来における統合も視野に入れた業務提携という)このニュースを初めて聞いた時には、素晴らしい決断が出来たな、と心からの感謝と尊敬の念を禁じ得ない」などとした。
東京のタク業界をリードして
川鍋会長は「ライドシェアとの闘いの中では、タクシーはもういらない、オワコン(終わったコンテンツ)だ、ライドシェアが新しい、などとも言われたが、日本のタクシーは世界で一番にサービスが良い、忘れ物だって返ってくる、その上で、初乗り運賃を安くし、(JAPANタクシー導入で)タクシー車両も新しくして、キャッシュレス、配車アプリ、そして今は高性能空気清浄機と、どれだけタクシーは進化していくのか。こうしたことに私も旗を振ったが、ここにいるオーナー経営者の皆さんが一緒に決断して進んでいただいた、ということが事実だ」と述べるとともに、「東京無線とチェッカーキャブが一緒になって東京最大の6500台という規模になるが、東京無線の坂本理事長が言われた通りで、すぐに来るというのがタクシーの第一であり、来なければ始まらない。この新しいスタート地点から、東京のタクシー業界を増々リードしてもらうことを心から祈念している。決断に心から敬服する」などとした。
三浦、西澤両氏とテープカット
京王プラザホテルの玄関前で行われた出発式では、東京無線から坂本理事長と西澤相談役、チェッカーキャブ無線協組から秋山理事長と三浦顧問、さらには東タク協の川鍋会長、東タクセンの松澤専務理事によるテープカットが行われ、東京無線の屋上表示灯とチェッカー模様の帯を装着したタクシー車両を見送った。
チェッカーの藤原社長が閉会挨拶
閉会の挨拶で、株式会社チェッカーキャブの藤原廣彦社長(チェッカーキャブ無線協組副理事長、本州自動車社長)は、「大変多くの皆さんの理解と協力を得て、この日を迎えることが出来た。まだまだ道半ばであり、スタートラインを切ったところかもしれない」としながら、「6500台という規模で、どこでも乗り易いタクシー、サービスも良い、と言われるように皆でして行こう」と呼び掛けた。
中小事業者でも出来ると立証
続けて、藤原社長は、東京無線協組とチェッカーキャブ無線協組の業務提携に言及して「中小事業者の集まりであってもタクシー事業者は出来る、ということを立証していこう。乗務員のため、ここに集う組合員事業者のため、そして何よりも利用者のためになるタクシーにしていかなければならない。今後とも皆さんの理解を得ながら、チェッカーキャブ無線と東京無線が手を組み合って様々な問題に取り組んでいく」と強調した。 そして、「中には、チェッカーとは嫌だよ、また東京無線か、という方もいたが、そうした山を乗り越えて今日を迎えた。なお一層の皆さんの理解と協力が無ければ、この業務提携が統合へとは繋がっていかないので、今後とも宜しくお願いしたい」と要請した。
坂本理事長にインタビュー
本紙の熊澤義一編集長は、東京無線協組とチェッカーキャブ無線協組の業務提携が4月1日にスタートしてから1週間余りが経過した4月9日に、都内葛飾区にある実用興業を訪れ、同社社長の坂本篤史・東京無線協組理事長へのインタビューを行い、業務提携スタートから1週間の状況のほか、業務提携への期待と課題、今後の取り組みなどについて聞いた。
早くも提携効果の声が届く
ー東京無線協組とチェッカー キャブ無線協組の業務提携スタートから1週間余りが経過しました。
坂本 ある東京無線のお客様に4月になってから言われたことに、タクシーがすぐに捕まって助かったが、そのタクシーが東京無線の屋上表示灯を設置したチェッカーキャブの車両だった、ということがあって、それは私が一番に求めていた業務提携の効果でした。
ー6500台という、東京の法人タクシーの4台に1台が東京無線・チェッカーキャブ連合になった効果ですね。また、都内西部の城西地区に強い東京無線と都内東部の城東地区に強いチェッカーキャブという地理的な補完性から、今回の業務提携で、都心部はもとより、東京無線の利用者にとっては城東地区、チェッカーキャブの利用者にとっては城西地区でタクシーを捕まえ易くなったのは明らかです。
4月2日には、新宿区の京王プラザホテルで東京無線とチェッカーキャブ無線の合同出発式が開催されました。
合同出発式は本当に良かった
坂本 合同出発式が開催できて本当に良かった、と思っています。チェッカーキャブ無線協組と東京無線協組の両協組の幹部同士は何度も会っていたのですが、理事など双方の加盟事業者全員が揃って顔を会わせる機会がこれまで無かったので、こうした機会が持てたことは事務局も含めて関係者には感謝している。 東京の緊急事態宣言がどうなるかとの兼ね合いなどもあって準備のための時間もあまり無かったが、一堂に集まれたことで一緒に頑張っていこう、という気持ちも醸成でき、とても嬉しかった。
中小の経営環境が大きく変化
ーチェッカーキャブ所属のベ テラン事業者を中心に、やはり慣れ親しんだ歴史と伝統のあるラグビーボール型の「チェッカーあんどん」が無くなってしまうことには寂しさもあるようです。 将来の統合も視野に入れた今回の業務提携は、かつてはライバル関係にあった東京無線とチェッカーキャブが、都内中小タクシー事業者を取り巻く経営環境が大きく変化し、大手が中小タクシー事業者のフランチャイズ化を推進する中で、将来を見据えた中小事業者の自律的タクシー経営の維持と発展を目指した取り組みということですね。
坂本 4月1日から東京無線の屋上表示灯を設置して営業をスタートしてくれたチェッカーキャブ所属の事業者の皆さんには敬意を表したい。何といっても屋上表示灯はタクシー事業における一番の看板ですから。
今回の業務提携に至ることができた背景として、両協組における経営者の若返りが進んでいたことも大きかったと思います。
また、新型コロナ禍という中で、長年にわたり業界重責を担って来られたチェッカーキャブの三浦宏喜顧問や東京無線の西澤憲嗣相談役に合同出発式に出席していただけたことは、本当に有り難かった。東京無線とチェッカーキャブで一緒にやれたらいいね、という話は両氏の頃から出ていたものだと聞いていましたから、なお更です。
ーそうした歴史を紡いで来た成果が、将来の統合も見据えた今回の業務提携ということですね。
台数だけでなく接客でも向上
坂本 タクシーの車両台数が増えて乗り易くなったというだけではなく、お客様に乗って良かった、と言っていただけるようにしていかなければなりません。東京無線では、、7年ぐらい前から接客コンテストに取り組んでいますが、当初は「何でこんなことをやるのか」というような声も乗務員から出ることもありましたが、今では一所懸命に接客の練習をして「優勝するぞ」という雰囲気になって来ています。
お客様を増やしていくための今回の業務提携であり、東京無線とチェッカーキャブでお互い切磋琢磨をしながら接客の向上にも取り組んでいきたい。
ーひとつのことをやり続ける、継続の力ですね。 東京無線とチェッカーキャブ無線の業務提携では、一本化による業務運営の効率化や経費削減などの目的もあると思いますが、具体的にはどのような取り組みが進められていますか。
坂本 東京無線と チェッカーキャブでの車両外観の統一、タクシーチケットの両協組での相互通用、3日間の新任乗務員研修の東京無線での合同研修実施などがスタートしています。
屋上表示灯というタクシーの看板を統一するので、お客様にも分かり易く、さらには業務の効率化や合理化という意味でも、チケットの一本化ということにはなりますが、一方で、お客様があることなので、お客様に不便や手間をなるべくかけない形で、お客様の了解を得ながら丁寧に進めていくことが必要です。相当の時間はかかるとみています。チケット在庫との関係もあります。
東京無線でもS.RIDEを採用
ーなるほど。タクシー営業において存在感を増す配車アプリへの対応はどうですか。
坂本 配車アプリに関しては、東京無線として、(チェッカーキャブ無線が採用している)S.RIDEの採用を既に機関決定しており、後はシステム的な対応ということになっています。
一方で、先ほども話をしましたが、お客様がタクシーを捕まえ易くするためには、配車不能をいかに無くしていくか、が重要です。例えば、東京無線の3700台では配車注文に対応できないというケースが現在でもあり、それをチェッカーキャブの力を借りて解消し、配車注文したらタクシーがすぐに捕まるね、という形にしていきたい。今回の業務提携で、お客様の利便性は大いに高まることになると期待しており、無線配車に関しては、伸びシロが非常に大きい、とみています。 そうした中で、配車アプリだけに特化していくのではなく、電話による配車受注についても力を入れていきたいと考えています。
ー屋上表示灯の統一で「東京無線」の存在感がさらに東京のタクシーマーケットで高まりそうですね。
都内で一番に乗り易いタクに
坂本 さらに、東京無線と チェッカーキャブ無線の業務提携による地域的な補完で、特別区・武三地区の全域において配車供給力が高まることになりました。例えば、これまでは江戸川区で東京無線のタクシーを捕まえることは難しく、一方で、チェッカーキャブのタクシーを中野区で捕まえることも難しかった。そうしたことが業務提携で解消されることになります。
また、東京無線は現在、大和自動車交通とも配車連携をしており、東京無線で配車対応できない場合は大和自交に注文を送り、逆に大和自交で配車対応できない場合は東京無線に注文が送られてくるという相互補完の連携も行っているところです。お客様に選ばれ、(特別区・武三の)都内のどこでも一番に来てくれるタクシーにしていきたいですね。
ーありがとうございました。
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