全国ハイヤー・タクシー連合会の会長としての職責とは何か?
筆者には、川鍋一朗氏は全タク連の会長として、しなければならないこととしてはいけないことの明確な区分けと認識が乏しいとみられることから、あえてその職責のあり方に言及する。
全タク連の定款第23条には「会長は、法令及び定款に定めるところにより、本会を代表し、その業務を総理する」とある。総理とは「事務を統一して管理すること」(「広辞苑」より)であり、そして第31条では、理事会が「本会の業務執行の決定」をする機関と定めているのである。
川鍋会長は、この持説が「ライドシェアに道を開くリスクがかなり高い」としながら、「私が拙速に進めて多くの皆さんに顰蹙(ひんしゅく)を買った」と語った。さらに持説に対して、「いいという人とそうでない人がいる」としたほか、「賛意もあった」、「第二種免許そのものを何とかしようという、ある意味王道の正面突破案も皆の力で出せるかもしれない」などとも言及したのだった。
まず、条件付きであっても第一種免許でのタクシー乗務の問題は、理事会において「業務執行の決定」はなされていないにもかかわらず、タクシー事業の根幹を揺るがしかねない持説の打診を先行して運輸当局や議員連盟などにするなど、独断専行したのは定められた職務権限を逸脱する明白な定款違背ではないだろうか。
その上で、ライドシェアに関しては、当日の通常総会席上でもライドシェア断固阻止の決議を採択しているのである。採択した決議をないがしろにしかねない、ライドシェアに道を開くリスクが高い持説を、「賛意もあった」などとしているのは、会長としての資質を疑わざるを得ない発言だ。さらに「王道の正面突破案」云々の発言は論外である。
定款違背や会長職の資質が問われていることを川鍋氏自身は、どうも気付いていない。その証左は、一連の経緯に関して総会あいさつの中で一言も謝罪の弁を発していないことからも明らかである。顰蹙を買ったとは、「不快感を与えるようなことをして嫌われ、軽蔑される」(「広辞苑」より)とある。不快感を与え嫌われ、軽蔑されたと認識するなら、謝罪の一つも口にするのが常識というものだ。
川鍋氏は、通常総会で4期目の会長に再選されている。会長再選に支持をしたタクシー事業者の中にも、今回の件における川鍋氏の一連の言動に対して反発、不信感を強めている事業者は多い。そのような声なき声に川鍋氏自身が、真摯に耳を傾けて受け止めることを期待したい。
(高橋正信)
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