米Uberのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は6月3日、都内で記者会見し、「(全面解禁されれば)日本のライドシェア市場はいずれ世界トップ10に入ると確信している」と述べる一方、日本版ライドシェア(=自家用車活用事業)については、タクシー会社に実施主体を限定していることや稼働できる時間帯や地域が限られていることなどを、「運用が複雑。(制限を)撤廃を検討すべきだ」と訴えた。そしてコスロシャヒCEOは同日の夕刻、デジタル庁を訪問し、規制改革などを担当する河野太郎大臣と非公開で会談し、ライドシェアの全面解禁について意見を交換したとみられる。
コスロシャヒCEOの来日のタイミングは、岸田文雄・内閣総理大臣が国土交通大臣などに指示して、タクシー事業者にライドシェアの実施主体を限定を解除するための論点整理を5月中に規制改革推進会議に提出させ、6月に閣議決定する骨太の方針にライドシェア解禁を盛り込み、そして秋の臨時国会にライドシェア新法を上程するなど、全面解禁に向けて舵を切ろうとしている真っ只中のタイミングである。
本紙前々号の本欄で、「解禁派3人組の軌を一にしたライドシェアに関する言動は、(略)利権を見越した組織、団体による大きな推進圧力がその背景」と問題提起し、その推進圧力が”ライドシェア大国“であるアメリカに他ならないことを、今回の非公開会談が裏付けているかのようである。
アメリカVSニッポンの関係は、戦勝国VS敗戦国による“占領統治”は言い過ぎとしても、色濃く当時の成り行きが継続しているのは周知の事実。沖縄における在日米軍の過大な存在をはじめ、首都東京の広大な空域の管制権を在日米軍が掌握している”横田空域“の存在による、日本の自衛隊機から民間航空機まで在日米軍の許可無しには飛行できないという、首都上空の管制権=国家主権を揺るがす問題まで散見されるのが実態である。「米国がくしゃみをしたら日本が風邪をひく」と日本経済が揶揄されたが、政治的にも制度政策立案の段階でアメリカ政権中枢の意向が色濃く反映されて来たと言われる。日本の戦後史を振り返る時、安全保障と国家統治は、占領時からの延長線上でアメリカ頼みが根強く存在、継続されているといえる。
岸田総理や自民党の茂木敏充幹事長らも解禁派3人組と軌を一にしていることは、アメリカの政権中枢の意向に政権与党の自民党が忖度している、というのが、このところのライドシェア解禁を巡る狂騒ぶりを表しているといえまいか。既にタクシー不足は、回復傾向を示している。引き続きライドシェア全面解禁の断固阻止に細心の警戒を怠ってはならない。
(高橋 正信)
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