論風一陣 ウィラーを凌駕するタク事業者出でよ!(Taxi Japan 401号より)

2001

エリア限定・定額乗り放題のAIオンデマンド交通の実証実験が、京都府京丹後市のほか、東京や名古屋、大阪などの都市部で展開されており︑これを受けて東京と大阪のタクシー協会は、タクシーと需要競合するものとして強く反対している反面、名古屋業界では、名鉄タクシーホールディングスとつばめタクシーグループの2大手がWILLER(ウィラー)によるmobiの車両運行を受託するなど、対応が分かれている状況だ。

mobi車両

高速バス事業者として知られるWILLER(村瀬茂高代表取締役、大阪府大阪市)は、東京都渋谷区でバーチャル乗降ポイント方式によるエリア限定の定額乗り放題のAIオンデマンド交通「mobi」を企画・運用しており、さらに豊島区でも実施しようとしている。これに対して東京ハイヤー・タクシー協会では「道路運送法21条の乗合運送許可ではなく、同4条の一般乗合旅客運送事業の区域運行によるべきだ」と関東運輸局に要請するとともに、タクシーとの需要競合に対して強く反発している。  大阪では、大阪メトロ傘下の大阪シティバスが主体となって大阪市生野区と平野区においてAIオンデマンド交通の実証実験が実施されており、さらに大阪市北区や福島区を新なエリアに設定し、大阪市の中心部においてWILLERのmobiとともに来年3月以降1年間の予定での実証実験が予定されている。これに対して大阪タクシー協会では、東タク協と同様に反発を強めている。

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一方、名古屋では、市内千種区を中心にWILLERのmobiが無償による実証実験を行っているが、12月6日からは有償運行に移行する。このmobiの車両運行を、名古屋業界大手の名鉄タクシーホールディングスとつばめタクシーグループが受託。全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は、東西のタクシー業界が反対しているときに名古屋業界の大手2社がmobiに参画していることに強い疑義と不満を表しているとのことだ。  

しかし、タクシー業界はこれまで、これらのオンデマンド交通実証実験が目指す都市部の交通不便地域解消に向け、具体的な施策を講じてきただろうか。本来、受皿になるべきは既存公共交通のタクシーであったはずで、川鍋会長の疑義・不満は当たらない。ただmobiはタクシー需要を侵食するから反対だ、と唱えるだけでは埒が明かないはずで、具体的な代替案を提示しなければならないのではないか。

タクシー業界は、運転代行を白タク行為、車両運行管理業を白ハイヤー行為と主張して反対したが、結局は利用者ニーズに押されて今日では既存のハイヤー・タクシー事業者が運転代行や車両運行管理を正業として営んでいるのが現実だ。タクシー業界は、反対を唱えるだけの愚を繰り返してはならないという過去の経緯から学ばなければならない。むしろラストワンマイルの潜在需要を掘り起こす、WILLERを凌駕するような進取の気性に富んだタクシー事業者の出現を期待したい。

(高橋 正信)

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次回Taxi Japan 402号 をお楽しみに!

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