論風一陣 開いた口が塞がらないとはこのことだ!(Taxi Japan 405号より)

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昨年12月15日付朝日新聞の報道で国土交通省による統計資料の改ざんが発覚し、斎藤鉄夫国土交通大臣が繰り返し謝罪する事態となるなど政府内外に衝撃を与えている。
 
改ざんがあったのは、建設業の受注実態を表す「建設工事受注動態統計」だ。国内総生産(GDP)の算出に使用される基幹統計資料を、国交省が都道府県の担当者に命じて、10年以上前から二重計上や改ざんを行ってきたというもの。その改ざんに2019年11月に会計検査院が気付き、問題点を国交省に指摘。それを受けた国交省は、都道府県の担当者らには二重計上や改ざんを止めることを指示したが、その一方で、こともあろうにその二重計上や改ざん行為を国交省自らがその後も1年余り継続していたというものだ。開いた口が塞がらないとはこのことであろう。国交省への信頼は完全に失墜してしまったといえる。
 
 
時あたかも東京都特別区・武三地区のタクシー運賃改定要請が8社747台を第1陣として昨年末からスタートし、その後も運賃改定要請の提出が続いている。本稿では、新型コロナウイルスのオミクロン変異株が爆発的に感染拡大する中でのタクシー運賃改定の是非を問うのではなく、改めてタクシー運賃改定における審査のあり方そのものにスポットを当てたい。
 
まず、タクシー運賃改定の審査手順は、①最初の運賃改定要請(申請)から3カ月以内に法人全車両数の7割を超える申請があった場合に手続きを開始(70%ルール)②標準能率事業者の実績年度または実績年度の翌年度の収支が赤字となる場合に運賃改定の審査を開始し、標準能率事業者の中から車両規模別に原価計算対象事業者を抽出③原価計算事業者の数値に基づき「輸送力及び輸送効率の審査」「適正利潤を含めた輸送原価の算定」「運賃改定しない場合の収入見込み額の算出」「所要増収率の算出」などを経て上限運賃の改定率を決定することになる。
 
標準能率事業者の選定には、次の事業を除外する。▽小規模または零細▽事業開始から3年以上経過していない▽平均車齢が特に高い▽事故を多発している▽年間の実働率または従業員1人当たり営業収入が低水準。
 
 
ここで指摘したいのは、多くの審査の基準が一見もっともらしくて、実は抽象的かつ曖昧なことである。例えば、標準能率事業者の選定でも、除外事業者の選定における具体的な数値(特別区・武三における小規模・零細とは保有台数が何台以下のことのなのか、平均車齢が特に高いとは何年以上のことなのか)は示されておらず、すべてがその時の運輸当局による裁量によっているのである。
 
タクシー運賃改定の審査手順をケーススタディとして、国交省が所管する各業種に無数に存在する裁量権というさじ加減行政に思いをいたす時、統計資料改ざんで自浄能力が欠落している国交省に、果たしてそれらを委ねることができるのか。すみやかに国交省は第三者委員会や審査担当官の設置などというおざなりな対応ではなく、これまでの悪弊を断ち切るための根本的な信頼回復策を図るべきだ。
(高橋 正信)

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