論風一陣 連帯経済から寡占・連鎖化事業へ転換!(Taxi Japan 429号より)

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都内の中小タクシー事業者で組織するチェッカーキャブ無線協同組合などを脱退し、日本交通や国際自動車を始めとする大手事業者との業務提携(フランチャイズシステム)により、フランチャイジーとして大手グループに加入するタクシー事業者が相次いでいる。

東京業界では、大日本帝国の大手四社と準大手の日の丸自動車などが業務提携によるグループ化を実施しているが、チェッカーキャブ脱退事業者の多くが、東京大手・日本交通との業務提携で同グループのフランチャイジーとなっている。東京無線協同組合に加入する事業者の一部にも同様の動きがみられ、都内タクシー業界の勢力図が大きく塗り替えられる可能性をはらんでいる。

これまでの東京業界は、大手四社を筆頭に、準大手3社、それに続く多くの中堅・中小事業者で構成されていて、このうち中小事業者の多くが、無線営業やチケット、クーポンなどの事業で協同組合を組織するなどして共同営業を展開してきた。協同組合とは、中小企業等協同組合法に基づく組織で、「共通する目的のために個人、あるいは中小企業者等が集まり、組合員となって事業体を設立して共同で所有し、民主的な管理運営を行っていく非営利の相互扶助組織。連帯経済の主要な担い手」などと定義されている。

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そしてフランチャイズシステムの定義は、中小小売商業振興法の第11条(特定連鎖化事業の運営の適正化)に定められていて、フランチャイズのことを「特定連鎖化事業」の呼称でフランチャイザー(本部)がフランチャイジーに契約締結前にあらかじめ説明しなければならない事項を次のように具体的に定めている。①加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項②加盟社に対する商品の販売条件に関する事項③経営の指導に関する事項④使用させる商標、商号その他の表示に関する事項⑤契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項⑥前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項Iなどだ。

中小事業者で組織する協同組合などを脱退してのフランチャイジーへの鞍替えは、いわば、相互扶助・連帯経済から脱して、特定連鎖化事業によってタクシー市場の寡占化に参画するものと言えまいか。

その背景には、3年に及んだコロナ禍でタクシーの利用形態に大きな変化をきたしたことが挙げられる。それは、アプリ配車の増大で、ビジネスマンや若年層を中心に配車アプリの利用が活発化していることだ。その結果、アプリ配車回数でトップを走る「GO」を採用でき、グループ専用乗り場を都内各所に有することなどで「稼げる」、「乗務員採用にも繋がる」と、なだれを打って多くの中小事業者が、東京大手・日本交通のフランチャイジーになっている、というのが実態だ。この先、東京のタクシー業界の勢力図は、大手フランチャイザーによる熾烈な寡占化競争で大きく変容していく可能性があり、とりわけ東京大手・日本交通グループの動きを中心に注視していきたい。

(高橋正信)


次回Taxi Japan 430号 をお楽しみに!

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