論風一陣 委縮・衰退の未来予想にどう対処する!(Taxi Japan 434号より)

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国立社会保障・人口問題研究所(田辺国昭所長)はこのほど、わが国の人口予測を公表。2056年には、2020年における1億2615万人の人口が1億人を下回り、さらに2070年には、生産年齢人口(15〜64歳)が、2020年の7509万人から4535万人へと、3000万人もの規模で働き手が失われると予測している。

今回の推計では、外国人労働者が日本の人口の下支えになるとしており、2070年には、日本の人口の9人に1人が外国人になると予測している。一方で、65歳以上の人口比率は、2020年に28・6%だったものが2070年には38・7%に上昇し、少子高齢化のさらなる進行で人口構成が極端な逆ピラミッド型となり、日本の社会・経済全体が委縮・衰退していくという、深刻な未来予測を提示している。

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タクシー業界は、コロナ禍において高齢乗務員を中心に退出が相次ぎ、全国的に深刻な乗務員不足に見舞われている。東京都特別区・武三交通圏にしても、コロナ禍前の実働率との比較で10%前後低位のままで、現在も本格的な回復傾向を示していないのが実情だ。

今回の人口予測は、タクシー会社個々の努力や業界ぐるみの取り組みはもちろんとしても、その範疇を超えたマクロの社会・経済における地殻変動を見据えた労働力確保の対応策が求められいると受け止めるべきだ。

生産年齢人口の減少を食い止める方策の一つとして、政府は外国人を対象とした技能実習制度の廃止と新制度への移行、外国人の就労に係る規制を大幅に緩和して受入体制を拡充しようとしている。この政府の動きにタクシー業界も連動して、現在は外国人在留資格の特定技能1号(対象14業種)の対象外となっているタクシー運転者を対象業種に組み入れてもらうなど、各種規制や制約の緩和を求めるとともに、雇用促進の妨げになっているあらゆる要因を洗い出していく。

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一例として、タクシー乗務員に課せられている普通二種免許は果たして必要か?

類似の車両運行管理請負業や自家用有償旅客運送などは、普通一種免許や講習でこれまでも不都合が指摘されたことがないのである。このような必ずしも必要とはいえない行政当局の岩盤規制を大胆に見直す。地方や中小のタクシー事業を維持・存続していくためには、これまでの既得権や既成事実の問題点を洗い出して異次元の発想転換により根本的な改善策を当局に求めていかなければならないのではないか。

今回の人口推計が示す日本の社会・経済全体の委縮・衰退の大きな波から、タクシー業界がひとり手をこまねいていては、その存続の危機から免れることはできないことを肝に銘じなければならない。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 435号 をお楽しみに!

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