タクシー業界は、8月5日を「タクシーの日」として設定し、これを受けて全国ハイヤー・タクシー連合会や全国の都道府県タクシー協会において、タクシーの役割を社会にアピールする広報を兼ねた各種イベントが展開された。
言うまでもないが、「タクシーの日」は、全タク連によると「1912年、東京・有楽町で我が国初のタクシー会社『タクシー自動車株式会社』がタクシー料金メーターを装着したT型フオード6台で営業を開始した」という、その日を記念して設けられたものとして、今年でタクシー誕生111年としている。
東京ハイヤー・タクシー協会では、タクシー発祥の地であるJR有楽町駅前の広場「有楽町イトシア」において、トヨタ自動車のJAPANタクシー車両の展示や子供を対象とした巨大ガチャガチャなどを企画し、多くの参加者で賑わった。川鍋一朗会長も姿を見せて、一般利用客とともに衝突体験車に乗るなどタクシーの広報宣伝活動に務めていた。
8月5日「タクシーの日」に関して、筆者としては、重箱の隅をつつくわけではないが、確かにタクシー料金メーターを装着したタクシーの営業を行ったのは、タクシー自動車株式会社が初めてだったものの、その営業開始は、1912年(大正元年)の8月5日ではなく、8月15日であった。このことは、当時の新聞記事やタクシー自動車株式会社自らの広告記事により明らかだ。
一部の文献では、8月5日はタクシー自動車株式会社の設立された日との記録があるが、会社設立から僅か10日後の8月15日にT型フオード6台を揃えて料金メーターを装着して営業を開始したとするのは、常識からいっても無理がある。
とはいえ、タクシー営業開始の8月15日は、終戦記念日にあたり全国あげて戦争犠牲者への鎮魂を捧げる日である。その日にタクシー誕生の記念日として「タクシーの日」を設定し、広報宣伝活動をすることを憚ったとしても当然の成り行きと理解できる。うがった見方をすれば、「タクシーの日」を8月1日や2日、3日にでも任意に設定することが出来たにもかかわらず、どうゆう経緯で誰が5日に設定したかは不承知だが、営業開始が15日だった事実を知った上で、あえて5日に設定したようにも思える。ここでは、事実は事実として押さえておくとしても、「嘘も方便」ということにしておきたい。
タクシー業界は、新型コロナウイルスによる未曽有の災禍に見舞われながらも耐え抜き、深刻な乗務員不足はあるものの、東京をはじめ全国で取り組まれたタクシー運賃改定では利用者の逸走もなくコロナ禍前を上回る営業収入を上げるなど、タクシー事業再生に向けた力強い足音か聞こえる。アフターコロナを実感させる盛況な「タクシーの日」の全国各地での取り組みを見聞きするにつけ、感慨もひとしおである。
(高橋 正信)
次回Taxi Japan 441号 をお楽しみに!
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