論風一陣 酷暑に身を焼く闇夜のうたかたのユメ!(Taxi Japan 461号より)

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地球温暖化の影響は深刻です。謹んで暑中お見舞い申し上げます。

筆者は酷暑に身を焼きながら、息苦しい眠れぬ夜に次のようにタクシー事業がこの世から消滅するうたかたのユメにうなされ青ざめてしまいました。

〈うたかたのユメ〉

一代で大阪業界最大手の関西中央グループを築き、地元業界に君臨して多くのシンパを擁してきた薬師寺薫氏が、寄る年波と時代の変化に勝てずに民事再生法の適用を申請してタクシー事業を譲渡したのには驚いた。さらに準大手の未来都も、大阪でのタクシー事業に新規参入したnewmoに株式譲渡したとの報に接し、タクシー業界の構図が音を立てて変形、瓦解して地殻変動をきたしているように感じた。

タクシー業界は目下、日本型ライドシェアによる水際作戦に躍起だが、タクシー業界の思惑とは無関係に、菅義偉・前内閣総理大臣、河野太郎・規制改革担当大臣、小泉進次郎・超党派・ライドシェア勉強会会長という神奈川県選出の全面解禁派3人組は、その強大な政治的影響力を背景とした突破力を有しているとみている。

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6年前にアメリカ第二の都市で人口が約400万人というロサンゼルスに行った際、タクシーは2000台規模で、空港や駅、主要ホテル前、ショッピングモールなどの一部で見られた程度で、大半の移動をライドシェアが担っていた。都市部でライドシェアを全面解禁すれば、タクシー事業が致命的な大打撃を受けることは必至だ。

いつだったか日本経済新聞の一面記事で、本田技研がアメリカのGMとコラボして2年後に都内お台場で自動運転車によるタクシー営業の実証実験を開始するとの報道があった。既にアメリカや中国では、無人の完全自動運転車によるタクシー営業が一部都市で現実のものになっている。自動運転車両を利用者がスマホでチャーターして移動する、この行為は、旅客運送事業ではなく、自動運転車両をシェアリングする新しいエコノミーの誕生とみることも出来る。その名の下に、運転者管理を主体とする現在のタクシー事業は存在価値を失うのではないか。モータリゼーションの進展で人力車が消滅したように、タクシー事業も自動運転車両のシェアリングエコノミー化によって消滅してしまう!

日本型ライドシェアか、全面解禁のどちらにせよ、この先の自動運転車両の技術革新の進展によって、両者共に過去の遺物になってしまうのではないか。記者稼業47年の筆者にとって、タクシー事業そのものが消滅するような未来は、自らの社会人としての来し方も消え去るようで、その喪失感は耐え難く、うたかたのユメにうなされ青ざめてしまった次第である。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 462号 をお楽しみに!

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