全国自動車無線連合会(高野公秀会長)はこのほど、創立64年余を経て解散した。
スマホによるタクシー配車アプリが急速に普及、拡大し、従来のタクシー無線による配車システムにとって代わる中で、その役割を終えつつあることから幕を閉じることになった。10月23日に開催された解散の臨時総会で、高野会長は、「タクシーについて電話による(アナログ)配車から(デジタル)無線へ対応し、60有余年、タクシーと無線が両輪となって今日の隆盛を築いてきた。そのことを誇りに思っている」として、「私が、最後の世代として組織を閉じる会長になった」と惜別の弁を述べた。
高野氏は、2018年に坂本克己氏が任期満了に伴い勇退したのに伴い、全自無連会長に就任し、3期6年を務めた。自身、「全自無連の組織を創設したのは私の父(故・高野将弘氏)を含む数人で、これも縁」として、事前にあった会長就任の意向打診の段階で腹を括り、内諾した経緯があったという。6年前の会長就任のあいさつの中でも、「タクシー無線は、アナログからデジタル化の時代に移り、さらにIоTやAIなど情報通信技術を活用した完全自動化の時代に突入している」と語っており、就任の時点で、ある意味、今日の解散を予感させていた。そのことを飲み込んで会長職を受諾、そして全自無連における最後の6年間の組織運営を完遂し、無事しんがりを務めたことは多としたい。
スマホによるタクシー配車アプリの本格運用は、3年間に及んだ新型コロナウイルス禍を経てタクシーの利用実態が大きく変化、「密を避ける」という観点からもスマホ配車が注目を浴びて広範囲に普及していった経緯がある。その中でしのぎを削ってきたのは、GOやS.RIDE、外資系のUberやDiDiなどの、いわばメガアプリである。今後は、人件費が掛かる自社無線からの代替として個別の配車アプリも必要になってくる。その際には、車載タブレットにおける複数アプリの共用化、仕様やシステムの平準化などが求められてくるだろう。
全自無連は、「タクシー無線の普及促進、無線通信の秩序維持と公共交通たるタクシーの利便向上を図る」ことを目的に創立されている。翻って、タクシー配車アプリの公共財として秩序維持と公共交通たるタクシーの利便向上を図るため、配車アプリ業者が独自に設定する料金や手数料などのあり方も含むルールの策定とそのチェックなど、タクシー業界との協議を行う場としての、全自無連に替わる「全国タクシー配車アプリ連合会」(仮称)を組織し、タクシー業界にとっての最適な方策を確保していかなければならないのではないか。
(高橋 正信)
次回Taxi Japan 469号 をお楽しみに!
Taxi Japan最新号は公式サイトでご覧いただけます。
日本タクシー新聞社の発行する、タクシー専門情報誌「タクシージャパン」は毎月10・25日発行。業界の人が本当に求めている価値ある情報をお届けするおもしろくてちょっとユニークな専門紙です。