タクシー配車アプリ大手のGO(中島宏社長、東京都港区、資本金1億円)は、東京大手・日本交通系のJapan TaxiとDeNAのタクシー配車アプリ事業などを統合して誕生したGOが、2020年9月にスタートして以来、全国で約20万8000台(法人が約18万2000台、個人が約2万6000台)のうち、実に全国の5割弱となる約10万台のネットワークを構築し、タクシー配車アプリのトップシェアの座を占めている。
GOでは、これらのネットワークを背景として、①ドライバーズ求人サイト「GOジョブ」で有料職業紹介事業を展開②運転管理支援サービス「GO運転管理」でタクシー会社の点呼・運行管理全般をシステム提供③交通事故削減を支援する次世代AIドラレコサービス「DRIVE CHART」で交通事故につながる危険シーンを自動検知し、運転傾向を分析、事故予防対策を図るIなど、単にタクシー配車に止まらず、タクシー事業における喫緊の課題である乗務員確保から、さらには運行管理や事故防止策など、事業の根幹に係る主要な経営ツールをアウトソーシングとして取り込み、事業化していこうとしている。さらに、既存のメーター器を代替するソフトメーターが、これらに加わることになる。
また、東京都心を筆頭とした都市部では、配車アプリが従来の無線呼び出しや街頭流しの利用形態に取って代わり、タクシー利用のスタイルも大きく変化している。このようにGOは寡占的な地位の強みを発揮して、タクシー会社の乗務員確保や運行管理システムや車載機器に至るまでの包括的な営業戦略を目指しているとみられ、いわばタクシー事業における”GO経済圏“を確立することで、タクシー事業者から徴収する配車手数料を任意に引き上げることが可能となる。そして、全国に拡大しつつある配車利用者から徴収するアプリ手配料1回100円についても、同様に寡占的地位があっての対応といえる。
本来なら全国ハイヤー・タクシー連合会に配車アプリに関する検討対策委員会を設置し、配車アプリを利活用するタクシー業界側の利益を最大化する策を講じなければならないはずだ。本欄でこれまでも主張してきたように、配車アプリ事業とタクシー業界は、その利益が相反することが避けられないが、現状は、寡占的地位にあるGOによって「なされるがまま」といった状況にある。
GOは、株式上場を目指す方針を公表しており、ここ1〜2年での早期上場を果たすためにも、収支の改善が喫緊の課題との見方も出ている。このままさらに寡占化を進めるGOのなすがままでいていいのか。全タク連とは、誰のために何をなすべき団体なのか。その存在意義を改めて、GOの大株主で代表取締役でもある全タク連の川鍋一朗会長を除く、全国の幹部および全タクシー事業者に問いたいものだ。全タク連幹部や事業者の過半が、異議があっても竿を刺さずに大きな流れに命運を委ねると判断するというのなら、何をかいわんや、である。
(高橋 正信)
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