公正取引委員会(古谷一之委員長)は4月23日、「タクシー等配車アプリに関する実態調査」の調査結果を公表した。
今回の実態調査は、配車アプリが、間接ネットワーク効果(=製品やサービスのユーザー数が増加することで、間接的にその製品やサービスの価値を高める効果)が働くデジタルプラットフォームの一種で「配車アプリサービス市場において独占・寡占に至り得るとともに、利用者との取引において交渉上優位な立場にもなり得る」などと指摘して、「配車アプリに関する取引やタクシー乗り場の入構及び乗車を公正かつ自由なものとし、競争を促進する観点から調査を実施した」としている。
その上で、調査結果では、①配車マッチングの基準等における差別取り扱い②他の配車アプリの利用制限③ソフトメーター導入に伴う自社配車アプリの利用強制④優先配車サービスの手数料⑤タクシー乗り場におけるアプリ配車タクシーの入構に関する公正な競争環境—の5項目に関していずれも独占禁止法上の問題として指摘している。
調査対象は、配車アプリ事業者5社としているが、提言している内容をいずれも惹起しているのは、全国のタクシー事業者の約5割が加盟しているタクシー配車アプリ最大手のGO(中島宏社長、東京都港区)であることは明らかである。
提言内容は、すべて独占禁止法に抵触する優越的地位の濫用にほかならず、利用者利益を損ねているばかりかタクシー業界全体の利益をも大きく棄損するものと言える。本紙本欄では、「コンプラ欠如と企業統治の欠陥認める!」(24年12月10日付)、「上から目線の無責任なGOはストップ!」(24年11月30日付)などと、GOの企業体質の問題点を報じて来ている。さらにGOの代表取締役会長の川鍋一朗氏が、全国ハイヤー・タクシー連合会の会長を兼務していることで、再三、利益相反(一方の当事者にとっては利益となるものの他方の当事者にとっては不利益となる行為)に該当する可能性を報じて、問題を提起してきた。
にもかかわらず、全タク連は、この問題に対して論議そのものが皆無だ。その理由は、GOの大株主で代取会長を兼務する川鍋会長に忖度して、副会長や常任理事(協会長)らが沈黙を続けているからに他ならない。タクシー業界全体の不利益を放置して、黙して語らず、という不作為が許されないのは明らかだ。本来であれば、配車アプリの問題について専門に論議する委員会を全タク連に設置し、その実態を把握した上で、問題点を整理し、配車アプリ事業者に何らかのアクションを起していかなければならないはずだ。公取委の今回の調査結果をどう受け止め対処するのか、全タク連の真価、存在意義が問われている。
(高橋 正信)
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