中国・武漢で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界規模で拡大し、さらに首都東京など日本国内でも感染者が増加傾向。7月24日からの開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックについても「1年程度以内」の開催延期が3月24日に安倍晋三内閣総理大臣から発表された。
タクシー業界では、外出自粛の強まりやイベント開催の中止と延期、大手企業を中心としたテレワークの増加などが、タクシー需要のさらなる収縮と営収減に繋がることになるため、新型コロナウイルスの終息時期が見通せない中で、先行きに強い懸念と不安を募らせている状況だ。
そうした中で、3月23日に自民党タクシー・ハイヤー議員連盟(会長=渡辺博道衆院議員)と公明党ハイヤー・タクシー振興議員懇話会(会長=富田茂之衆院議員)、翌24日に野党系の立憲民主党や国民民主党などの国会議員で組織するタクシー政策議員連盟(会長=増子輝彦参院議員)の総会が相次いで開催され、全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長をはじめ全国から業界幹部が出席して、3月に入って営業収入が急減している地域の実情を訴えるとともに、マスクや消毒液などの感染防止に係る備品の優先的な供給、資金繰りが厳しくなっている事業者に対する支援策、歩合給が中心のタクシー乗務員の雇用継続のために前年同月比ベースでみた給与減少分の賃金補填などを要望した。
また、国土交通省の一見勝之自動車局長は、3月24日に開催されたタクシー政策議員連盟の緊急総会で「(新型コロナウイルスの影響によるタクシー需要の急減に対応して特定地域や準特定地域においても柔軟に復活増車ができる期間限定減車制度となる見通しの)特別減車についても、我々としては出来るようにしていきたい、と思っている。自賠責保険料を支払う必要が無くなるというだけでも経営的に非常に楽になるという話もいただいたので、どういった形で(特別減車制度の仕組みが)出来るようになるか工夫をしているところだ」などと述べ、東日本大震災による需要急減時に岩手・宮城・福島の東北3県などで導入された期間限定減車制度をベースにした特別減車制度を全国一律に創設する考えを表明した。
経営支援対策の一環として、一見自動車局長が制度創設の意向を示した特別減車は、乗務員不足が全国的に深刻化する中で、当面稼働する見込みの低い遊休タクシー車両を期間限定減車することでのコスト削減による経営効率化策として活用されることになりそうだ。
<Taxi Japan編集長=熊澤 義一>
世界で都市封鎖の動き広がる
中国・武漢で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界規模で拡大し、アメリカのニューヨークやロサンゼルス、フランス・パリなどの世界的大都市が感染防止のために市民に外出自粛などの移動制限を求めるロックダウン(=都市封鎖)を実施したほか、アメリカの首都ワシントンDCでは、3月25日からの1か月間、市民生活に必要不可欠な業種を除くすべての企業の閉鎖が命じられた。
また、新型コロナウイルスの感染爆発が発生して医療崩壊の緊急事態に直面、多数の死者が出ているイタリアやスペイン、さらにはイギリス、インドなどでは3月25日までに国内全土が外出禁止措置の対象となった。さらに南半球のニュージーランドや南アフリカなども3月26日から国内全土で外出禁止を要請する事態となっている。
東京オリンピックが開催延期
日本国内でも新型コロナウイルスの感染者は増加しており、7月24日からの開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックについても「1年程度以内」の開催延期が3月24日に安倍晋三内閣総理大臣から発表された。
首都東京では、小池百合子知事が、東京オリンピック・パラリンピックの「1年程度以内」の開催延期が発表された翌日の3月25日に緊急の記者会見を行い、同日に判明した新型コロナウイルスの都内感染者が41人と急激に増加したことから、都内における新型コロナウイルスの感染状況について「オーバーシュート、感染爆発の重大局面にある」などと指摘し、週末の外出自粛に加えて、平日はできるだけ自宅で仕事をすること、夜の外出は控えること――などといった対応も求めた。
小池都知事は、「何もせずにこのまま推移していくと、ロックダウン(=都市封鎖)につながる。だからこそ協力をお願いしている」として、新型コロナウイルスの都内における感染爆発の発生により東京の都市封鎖という事態を避けるための措置であるとの認識を示した。
さらに、東京都に隣接する神奈川県も東京都と同様の外出自粛措置を県民に要請したほか、千葉、埼玉、山梨などの隣接各県においても、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた東京都の対応に歩調を合わせる形で週末の東京都内への不要不急の移動を自粛するよう県民に要請することになった。
需要急減で先行きに不安
一方で、都内タクシー事業者や乗務員からは、こうした外出自粛要請の強まりやイベント開催の中止や延期、大手企業を中心としたテレワークの増加が、タクシー需要のさらなる収縮と営収減に繋がることになるため、新型コロナウイルスの終息時期が見通せない中で、先行きに強い懸念と不安を募らせている状況だ。
特に、タクシー乗務員は歩合給中心の賃金体系で営収減が賃金減に直結するため、都内タクシー事業者からは「急激な営収減を体験し、新型コロナウイルス問題が一定程度終息したとしても、タクシー運転者という仕事に見切りをつける乗務員が出て来るのではないか」などと、乗務員不足が深刻化する中で追い打ちをかけるような乗務員の離職を防ぐための対策の必要性を指摘する声も出ている。
自民党タク議連が総会
そうした状況の中で、自民党タクシー・ハイヤー議員連盟(会長=渡辺博道・衆院議員)は3月23日、都内千代田区にある「自民党本部」において総会を開催し、新型コロナウイルスの感染拡大による影響について、全タク連などからヒアリングを行い、意見交換した。
冒頭の挨拶で、渡辺会長は「全国からタクシー業界の方々に集まっていただき、(新型コロナウイルスの感染拡大の影響について)具体的な状況を説明していただき、意見交換をしっかりとしていきたい。議員連盟は、タクシー業界の皆さんの実情をまずしっかりと把握し、その上で、必要な政策について練り上げ、政府の政策に反映させていく場だと考えている」としたほか、「私としては、タクシー業界において、1社も廃業するようなところが出ないようにして、しっかりと乗り越えて行ってもらいたい。そして雇用を確保していってもらいたい。そこがポイントだと考えている。そのためには、どうしていったらよいのか、そうした視点で取り組んでいきたい」などと述べた。
全タク連がコロナで支援要望
全タク連では、「新型コロナウイルスによる深刻な影響に対するタクシー事業への支援要望について」と題した文書を取りまとめた。
支援要望文書では、「新型コロナウイルスに関わる波紋は、国民生活そして日本経済にも大きな影響を及ぼしている」などとしながら、「ハイヤー・タクシー事業においてもその影響は極めて深刻で、観光客の激減、イベントの中止、外出の自粛要請などによって人の動きが止まり、タクシー需要は激減し、営業収入は大幅に落ち込んでいる」などと説明。
さらに「資金繰りも極めて厳しくなってきており、地域によっては事業の休止・廃業も余儀なくされてきている状況にある」などとした上で、「タクシー事業は地域に密着した輸送サービスかつ地方創生の担い手であり、国民生活に欠かせない公共交通機関」と指摘。
乗務員の安全と雇用を確保しつつ、その使命を達成できるようにするため、①マスクや消毒液などの感染防止に係る備品について、公共交通機関であるタクシー事業者等への優先的な供給、②防菌シート、感染防止仕切り板などを車内に設置した場合の費用助成、③感染防止のためにタクシー事業者が行う安全対策等の正確な情報の積極的な発信、④資金繰りが厳しくなっている事業者に対する支援として、無利子・無担保の融資の返済猶予を含む公的融資制度のより一層の拡充、固定資産税・事業所税・自動車税等の軽減などの税制特例措置、金融機関からの融資金の返済猶予、金融機関による貸し剥がしの防止、社会保険料や雇用保険料の減免、赤字補填などタクシー事業者に対する助成・支援の創設と拡充、⑤乗務員の雇用継続のため、雇用調整助成金の拡大と充実、申請手続きの簡素化と迅速な支給。休業した場合の休業手当と教育訓練した場合の賃金相当額について、リーマンショック時における引き上げと同様に、助成率を中小企業で3分の2から5分の4に、大企業で2分の1から3分の2へ引き上げること。また、教育訓練した場合の教育訓練費についても、1人1日当たりの加算額を1日1200円から中小企業で6000円、大企業で4000円に引き上げること、⑥歩合給が中心のタクシー乗務員の雇用継続のため、コロナウイルス問題が収束するまでの間、前年同月比ベースでみた給与減少分の賃金補填、⑦タクシー需要の激減や売上の激減による待機時間の賃金支払いに対応するため、コロナウイルス問題が収束するまでの間、最低賃金法の規制の例外的・弾力的な適用と運用。具体的には、一方策として。最低賃金額割れとなる場合の不足額の補填――などを求めた。
全タク連が取りまとめた支援要望書は、与党である自民党タクシー・ハイヤー議員連盟(会長=渡辺博道衆院議員)と公明党ハイヤー・タクシー振興議員懇話会(会長=富田茂之衆院議員)、野党の立憲民主党や国民民主党などで組織するタクシー政策議員連盟(会長=増子輝彦参院議員)などの総会にも提出された。
川鍋会長が支援要望を説明
全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は、「昨年末にも議連の力を借りて全国48地域での運賃値上げが実現し、2月1日からの実施となったが、その途端に、また議連の力を借りなければならない局面となってしまった」としながら、「タクシー業界は全国各地で疲弊している状況だ。全国で営収が下がっており、ざっくりと言って4割減といったところだ。他産業では売上が前年から8割減というような数字も出ているが、タクシーは公共交通機関としての足の役割を止めない必要がある」と指摘。
川鍋会長は、全タク連が緊急に実施したサンプル調査による「新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化」(2月および3月1日~14日の前年営収対比表)と、「新型コロナウイルスによる深刻な影響に対するタクシー事業への支援要望について」と題した文書を提示するとともに、タクシー業界で行っている感染予防対策の概要を説明した。
コロナ影響による営収変化
全タク連が緊急に実施したサンプル調査による「新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化」(2月および3月1日~14日の前年営収対比表)によると、2月1日に全国25都道府県48ブロックで実施となった運賃値上げの効果もあり、2月の営収実績については、青森、埼玉、千葉、神奈川、新潟、滋賀、岡山、山口、愛媛、高知、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島などで対前年同月実績を上回っていたが、新型コロナウイルスの影響による営収減が深刻化した3月1日~14日の調査では、営収が全国で対前年同期を下回り、60%台となる地域が続出。
湯布院や別府などの九州を代表する温泉地がある大分の54.5%、日本を代表する世界的観光地である京都の59.1%など、インバウンドや観光需要の激減が直撃して営収が急減する地域も出ている。
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乗務員の離職を懸念
川鍋会長は「タクシーは、他産業に比べて(新型コロナウイルスによる影響が)乗務員の賃金にダイレクトに響いてしまうため、もし、ここで乗務員が離職してしまうと、ただでさえ足りない乗務員がさらに足りなくなり、新型コロナウイルス問題が収束した後に地方における足の確保が継続できなくなってしまう。そういう状況になりかねない危機だと思っている。
副会長らが地域の実情を報告
自民党タク議連には、川鍋会長のほか、坂本克己最高顧問、さらに副会長の今井一彦(北海道)、佐々木昌二(宮城)、川野繁(東京)、武居利春(東京・労務委員長)、伊藤宏(神奈川・総務委員長)、市村祐二(石川)、天野清美(愛知)、田畑太郎(滋賀)、坂本栄二(大阪)、信原弘(広島)、田中亮一郎(福岡・地域交通委員長)、羽仁正次郎(鹿児島)の各氏、秋山利裕・交通安全委員長、佐藤雅一・経営委員長、漢二美・ケア輸送委員長、藤原廣彦・広報サービス委員長、神谷俊広理事長、東タク協の根本克己・車両資材委員長らが出席。
意見交換では、全国の地方ブロックを代表する副会長らが、新型コロナウイルスの影響で深刻な営収減に見舞われている地方タクシー業界の実情を訴え、融資に関する公的な支援や助成措置、乗務員の賃金補填、税や社会保険料などの納付免除などを強く求めた。
雇用調整助成金の見直し要望
また、歩合給中心のタクシー労働では、固定給労働者の休業補填を前提とした雇用調整助成金の利用が難しいことから、歩合給労働者の賃金補填にも活用できるような雇用調整助成金への制度の見直しを求める意見も出た。
渡辺会長と盛山事務局長会見
議連終了後、渡辺会長と事務局長の盛山正仁衆院議員が記者会見を行い、渡辺会長は「タクシー業界側からは、前年対比での乗務員の賃金補填などの要望も出たが、そうしたものは制度的な前例もなく、対応についてどうするか、我々としても検討していきたい」などと述べたほか、乗務員用マスクの供給ルートの確保にも取り組んでいく考えを示した。
渡辺会長は、資金繰り支援では、運転資金のためのキャッシュフローを確保していくため、社会保険料や雇用保険料の納付の繰り延べや減免、乗務員の雇用確保では、雇用調整助成金を全国一律で中小企業については4分の3から5分の4へ、大企業は2分の1から3分の2への引き上げ、さらに教育訓練費などの拡充などについても要望していきたいとした。
政調会長に要望していく
渡辺会長は、新型コロナウイルス問題に関して「今日は、様々な意見を議員の先生方から伺い、タクシー業界からは実情について説明してもらった上で様々な要望も聞いた。我々議連として、(自民党の政策立案を担当する)政調会長にしっかりと要望していきたい」などとする意向を示した。
また、新型コロナウイルスの感染拡大による影響の深刻度を他業種と比較して、盛山事務局長は「(ハイタク業界は)相当に厳しい方だと認識している」としたほか、「労働者の働き方についても他業種と比べて歩合給の割合が高いことなど、タクシーの働き方独特の特徴があって、厚労省が一般論として(雇用調整助成金などの制度で)みているような典型的な労働の仕方とは違いがあるので、その橋渡しをどうしていくのかについて急いで取り組んでいく必要があるのではないか」などとする見方を示した。
公明党タク振興議員懇話会
自民党タク議連総会に続き、公明党ハイヤー・タクシー振興議員懇話会(会長=富田茂之・衆院議員)の総会が3月23日、都内千代田区の「衆議院第一議員会館」で開催された。
全タク連の川鍋会長、坂本最高顧問、全国の地方ブロックを代表する副会長らが出席して、全タク連が取りまとめた要望文書「新型コロナウイルスによる深刻な影響に対するタクシー事業への支援要望について」に基づいて意見交換が行われた。
出席した副会長からは、北海道ブロックの今井副会長が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について「北海道では緊急事態宣言が北海道知事により行われたが、経済活動を止める効果も大きく、タクシーの営収については4~5割の減というのが実態だ」として、中小企業の資金繰りに即効性のある消費税などの税金や社会保険料などの納付猶予や減免を強く求めた。
東北ブロックの佐々木昌二副会長(宮城)は「昨年は深刻な労働力不足で地元のタクシー2社が倒産した。また今年3月になって1社が新型コロナウイルスの影響で廃業することになった」などと指摘した上で、経営コストを下げるためにも深刻な乗務員不足に対応した柔軟性のある預かり減車制度の創設を要望した。
営収低い地方タクに配慮を
九州ブロックの田中亮一郎副会長(福岡、地域交通委員長)は、「福岡県でも、福岡市内のタクシーは平均3万5000円ほどの営収が上がるが、一方で北九州や筑豊・筑後では平均1万4000~1万6000円の営収にしかならない。つまり前年比4割の営収減だといっても、地域によって残る金額は大きく違う」などとして、営収の低い地方のタクシーへの配慮を求めた。
本当に大変な状況にある
北陸信越ブロックの市村祐二副会長(石川)は、「今日は、金沢から妻が運転する自家用車でやって来た。北陸新幹線を使わなかったのは新型コロナウイルスへの怖かったからであり、タクシー会社の社長である私が感染すれば、風評被害で会社が潰れることになるからだ」としながら、「当社の貸切バスはすべて予約がキャンセル、タクシーは3月中旬で対前年比の売上は4割減。JR金沢駅前のタクシー乗り場における乗車回数は、半減以下のマイナス56%。これからどうしていったらいいのか分からない、そういう本当に大変な状況にある」などと訴え、運転資金確保と雇用維持のためにも消費税の納付免除などの措置を求めた。
大分の前年同期比54.5%
大分県タクシー協会の漢二美会長(ケア輸送委員長)は、大分市の特定地域指定が3月末で解除されることを挙げて、半年以内に復活させなければならない預かり減車の期間延長を要望した。
公明党国会議員側から、全タク連が緊急に実施したサンプル調査による「新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化」(2月および3月1日~14日の前年営収対比表)に関して、「大分県における3月1日~14日の前年同期比が54.5%と全国で一番低い数値となっているが、背景等があれば説明して欲しい」との質問があり、大分県協会の漢会長は「大分には湯布院や別府などの観光地が多く、中国などからのインバウンド需要が激減したことに加え、国内からの旅行者も減っている。大分市内の夜の繁華街の店舗従業員が新型コロナウイルスに感染したことの影響で、夜のタクシー需要がまったくダメになってしまった。役所や大手企業のタクシー利用も減っている」などと説明した。
当面の資金繰り対策を検討
最後に、公明党ハイタク振興議員懇話会顧問の北側一雄衆院議員(公明党副代表、元国交大臣)は、「タクシー業界における現場の切実な声を聴いたので、しっかりと受け止めて、これからの経済対策に反映できるように取り組んでいきたい」などとしながら、「公共交通機関の利用自粛という表現は言い過ぎであり、それでは人の動きはますます止まってしまう。政府にも表現の仕方には注意するように言っているところだ。新型コロナウイルスの終息時期が見通せない中で、当面の資金繰りについては何ができるのか、今日の意見も踏まえながら、自民党や政府ともしっかりと協議をして経済対策を打っていきたい」などと締め括った。
野党系タクシー政策議員連盟
立憲民主党や国民民主党などの野党で組織する、タクシー政策議員連盟(会長=増子輝彦参院議員・国民民主党)は3月24日、都内千代田区の「衆議院第二議員会館」で緊急の総会を開き、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うタクシー事業への影響についてヒアリングを行い、意見交換した。
労働側からは、全自交労連と交通労連ハイタク部会、私鉄ハイタク協議会で組織するハイタクフォーラムの伊藤実代表(全自交労連委員長)らが出席したほか、経営側からも、全タク連の川鍋一朗会長や今井一彦副会長(北海道ハイヤー協会会長)、坂本克己最高顧問ら幹部が出席した。
増子会長が挨拶
タクシー政策議員連盟の増子会長は「新型コロナウイルスという未知のウイルスとは挙国一致で戦っていかなければならない。経済が異常なほど縮小しており、生活環境が激変する中で、政府の緊急経済対策に従っているだけでいいのか、という疑問も感じながら、今日は全タク連の川鍋会長、坂本最高顧問、ハイタクフォーラムの伊藤代表をはじめとするタクシー業界関係者、さらに国交省の一見自動車局長にも集まってもらって緊急の総会を開くことにした」などとしながら、「昨年の運賃改定ストップに続き、一難去ってまた一難、という状況だが、タクシー議連として与野党の壁を乗り越え、国難ともいうべき新型コロナウイルスを克服して新しい時代を創っていかなければならない。タクシー事業の継続と雇用の確保に向けて、議連の総力を挙げて、力を結集して取り組んでいきたい」などと述べた。
乗務員のタク業界離れを危惧
増子会長の挨拶に続き、全タク連の川鍋会長が「新型コロナウイルスによる深刻な影響に対するタクシー事業への支援要望について」の概要を説明した。
このうち「歩合給が中心のタクシー乗務員の雇用継続のため、コロナウイルス問題が収束するまでの間、前年同月比ベースでみた給与減少分の賃金補填」に関して、川鍋会長は「歩合給というのがタクシー業界の特徴であり、営収4割減イコール乗務員給与4割減となる。乗務員の生活維持が非常に心配だ、というのが我々の考えだ」としながら、「タクシー乗務員のタクシー業界離れが発生しないか大変に危惧し、非常に心配している」などと補足した。
経営支援策での減車制度を
また、川鍋会長は、文書として取りまとめた支援要望には盛り込んでいないものの、タクシーならではの経営支援策として、減休車や減休車車両の復活に制限のある特定地域や準特定地域において「乗務員が足りなくてタクシー車両を休車させた場合に任意保険の保険料負担や法定整備費などがいらなくなってランニングコストが下がるため、(柔軟に運用できる)休車制度や預かり減車制度などがあれば有り難い。自賠責保険料に関しては(減休車するタクシー車両の)登録抹消の必要性があるということなのだが、そのあたりも含めた制度創設のお願いをしたい」などと述べた。
人のできることは何でもやる
国交省の一見自動車局長は「(新型コロナウイルス禍は)まさに国難であり、一刻も早くウイルスを撲滅しなければならないが、その前に『人のできることは何でもやる』というのが我々の考え方であり、国土交通大臣からもそのような指示を受けている。しっかりと対応していきたい」などとした上で、「タクシーは地域交通を守っており、日常交通になくてはならないものだ。また観光の重要なツールというだけでなく、横浜港に停泊した(新型コロナウイルスが集団発生した)ダイヤモンドプリンセス号の下船オペレーションでタクシーは大いに活躍した。最後に頼りになるのは公共交通機関であり、(新型コロナウイルス問題が収束して)反転攻勢の時に重要な武器となるタクシーが毀損しないようにしていきたい」などとする意向を示した。
また、一見自動車局長は「雇用調整助成金については、雇用を守ることが何よりも大事だと考えており、少なくとも過去と同じレベル(リーマンショック時には中小企業は4分の3、大企業は3分の2の助成率)にしたいと厚生労働省には要請している。また金融庁には貸し剥がしなどをしないように、さらには公租公課の減免などについてもお願いをしているところだ」ともした。
自賠責負担不要の特別減車
一方で、一見自動車局長は「川鍋会長から提起のあった、(新型コロナウイルスの影響によるタクシー需要の急減に対応して特定地域や準特定地域においても柔軟に復活増車ができる期間限定減車制度という)特別減車についても、我々としては出来るようにやっていきたい、と思っている。自賠責保険料を支払う必要が無くなるというだけでも経営的に非常に楽になるという話もいただいたので、どういった形で(特別減車制度の仕組みが)出来るようになるか工夫をしているところだ。とにかく、(新型コロナウイルス対策で)人間ができることは何でもやっていこう、という考えでやっていく」などと述べ、タクシー事業の経営支援策としての特別減車制度を創設する意向を示した。
今井副会長が税納付免除要請
地方業界を代表して発言した、全タク連の今井副会長(北海道ハイヤー協会会長)は、新型コロナウイルスの感染増加で緊急事態宣言が出た北海道の状況を説明するとともに、中小企業の資金繰りに即効性のある消費税などの納付免除や社会保険料の納付猶予などを要請した。
ハイタクFの伊藤代表が挨拶
ハイタクフォーラムの伊藤代表(全自交労連委員長)は、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い全国でハイヤー・タクシーの売上は激減している。歩合給がひろく採用されていることから現場の乗務員は今後の生活に大きな不安を抱えているという状況だ」としたほか、「地方では、最低賃金の支払いも含めて事業継続が難しくなっているタクシー会社も出て来ており、雇用確保の観点からも助成などの支援措置、また、乗務員用のマスク確保もお願いしたい」などと述べた。
早船旅客課長が特別減車説明
意見交換では、議員側から一見自動車局長が示した「特別減車」に関する質問が出たが、これに対して早船文久旅客課長は「東日本大震災の時にも(期間限定減車という)同様の仕組みを入れており、今回は新型コロナウイルスでタクシー需要が減少しているのに減車が出来ず、そのためにコストがかかるということになってしまうので、一旦は減車して、再び需要が戻ったら増車できるような仕組みにしようと考えている。使わないタクシー車両を維持することが負担にならないようにするためのものだ」などとした上で、「今回はさらに、自賠責保険についてもかからないようにする仕組みには出来ないか、と検討しているところだ」などと説明した。
東日本大震災で期間限定減車
東日本大震災が発生した平成23年(2011年)に、特例的な措置として岩手・宮城・福島の東北3県で導入された、「東日本大震災に係る突発的な輸送の減少に対応するため一定期間内に実施した減車に限り、その減車分の車両にかかる増車を弾力的に取り扱う期間限定減車」制度については、①期間限定減車を実施しようとする対象事業者は、道路運送法第15条第3項に規定する事業計画(事業用自動車の数)変更の事前変更届出書を運輸支局長あて提出する、②期間限定減車期間中にその減車分の車両を増車する場合には、特措法に基づく事業計画の変更認可申請を運輸支局長あて提出する、③期間限定減車満了後にその減車分の車両数を増車する場合には、期間満了前に特措法に基づく事業計画の変更認可申請を運輸支局長あて提出し、当該事業計画の変更認可後3ヶ月以内に増車を実施する。期間満了時までに、特措法に基づく事業計画の変更認可申請が提出されなかった場合には、増車しない分の車両は期間満了をもって減車として取り扱う――などが、期間限定減車車両の取り扱いとなっていた。
社会保険料の等級見直しを
また、全タク連の武居利春副会長(東京・労務委員長)が発言を求めて、「現在支払っている社会保険料は、昨年の4・5・6月の賃金から算定されており、売上が5割も下がってしまうと(歩合制により賃金も売上に連動して下がるため)社会保険料負担が非常に重くなってしまう。そこで3月の賃金が急減して社会保険料の等級で2等級以上、下がるような場合には、翌月の4月から社会保険料を変更してもらえるようにお願いしたい」などと要請した。
また、武居副会長は「地方のタクシー乗務員の平均年齢は60歳を超えており、年金を受給しながら正社員の4分の3未満の乗務で仕事をしているケースが多く、地方のタクシー乗務員の半数以上がそうした年金受給併用者という可能性もあるような状況だ。東京においても70歳以上のタクシー乗務員は約17%いる」などとしながら、「そういう高齢乗務員は重篤化する恐れのある新型コロナウイルスへの感染を懸念して休んで乗務しない者が増えていて、地方では売上の減少に加えてタクシーの稼働率まで下がり、さらに出庫した乗務員も(新型コロナウイルスの影響による売上の急減で)最低賃金と昨年の4・5・6月の賃金で算定した社会保険料を支払うと、売上の額を超えてしまい、このままだと3カ月で倒産するという悲鳴が私のところにも寄せられている。このまま行くと、全国のタクシー事業者の3~4割は無くなってしまい、雇用問題となり、さらに公共交通機関としての役割も果たせなくなってしまう。そういう状況にあると理解して欲しい」などと厳しい実態を訴えた。
坂本最高顧問が挨拶
最後に、全タク連の坂本最高顧問は「公共交通を担っているのは現場で働く乗務員であり、(新型コロナウイルスの影響による需要急減などの事態に直面すると)こんな仕事からはもう離れたい、という人がどうしても出て来る。しかし、何としても乗務員を確保して、新型コロナウイルスが収束した時に反転攻勢していくためには各地域に乗務員がいなければならない。(野党の)国会議員の先生方には、現場で働く乗務員の声を聴いていただきたい」などと訴えた。
経済危機としては非常に深刻
タクシー政策議員連盟幹事長の辻元清美衆院議員は「(世界的金融危機の)リーマンショックや東日本大震災よりも、今回の新型コロナウイルスの方が経済危機としては深刻だという認識のもとに取り組んでいきたい」と締め括った。
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