新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が5月25日に解除されてから3カ月が経過したが、低迷する経済からの出口が一向に見えない。
内閣府が発表した今年4~6月期のGDP(国内総生産)は前期比マイナス7.8%、年率換算で27.8%減と、リーマンショックなどを超える戦後最大の落ち込みになった。その反面、7~9月期のGDPについては年率換算で13.3%の増を見込んでいるものの、感染再拡大による政府のテレワーク7割要請や、実施タイミングを間違えた失策との指摘も出ている「Go Toトラベルキャンペーン」などの不適切な対策から、経済のV字回復は難しいとの見方が強まっている。
一方、タクシー事業も本格的な需要回復の兆しがみられない。本紙前号の本欄で、東京都特別区.武三地区のタクシー輸送実績(東タク協まとめ原価計算対象事業者)の3~6月分を紹介し、6月分の輸送実績ついて「7月以降のタクシー需要回復を期待させる」としながらも「外出自粛や政府のテレワーク7割の要請は、せっかく回復基調にあったタクシー需要に冷や水を浴びせかねない」との懸念を指摘した。結果、7月分実績には、残念ながら輸送需要の本格的な回復基調を見ることはできなかった。
東タク協がまとめた、都内特別区.武三地区の7月分輸送実績は、実働日車営収3万5525円(3万5306円)、実車率37.7%(37.8%)、実働率71.2%(65.1%)などとなっていた。(カッコ内は6月分実績) 実働日車営収や実車率は前月と同水準であるものの、乗務員の計画休業による休車措置の解除などから実働率は6.1ポイント増となっており、総需要が本格的に回復しない中での稼働率の上昇傾向は、実働日車営収や実働率の回復にブレーキをかける懸念もあり、V字回復に程遠い状況だ。
都内のタクシー事業者らからは「雇用調整助成金の特例措置が9月末で打ち切られれば、経営の継続はできない」、「継続されても、助成金額の上限が8330円に戻ることになれば、休業手当では生活できない乗務員が退出してしまう」、「雇用調整助成金の活用を続けても、現在の低迷した営収水準のままでは、経営維持のタイムリミットが来る」などと悲痛な声が聞こえる。
失業予備軍と呼ばれる休業者数は、6月時点で236万人と減少傾向にはあるものの高水準で、タクシー会社の多くも乗務員の休業に対する雇用調整助成金のコロナ特例があって何とか経営を維持できている状況だ。雇用調整助成金のコロナ特例は、10月以降の取り扱いをどうするか、財源が急減する中において政府与党内で検討が続いている。仮に現行特例が継続されたとしても、政府や地方自治体による過度な外出自粛要請が続けば、低迷している経済活動をさらに阻害しかねない。タクシー需要のV字回復も遠のくばかりで、企業存続の危機を迎えることにもなりかねない。現状を踏まえた上で、経済活動を阻害しない感染予防策のあり方に、政府と地方自治体は舵を切らなければならない。 (高橋 正信)
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