Go To停止と飲食の夜間営業短縮 年末年始のタク需要に深刻な打撃 (Taxi Japan 381号より)

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菅内閣と感染対策本部

新型コロナウイルスの感染拡大の傾向が止まらず、大都市を中心に医療体制がひっ迫してきていることから、政府は12月14日、都内千代田区の「総理大臣官邸」で第49回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催し、観光支援事業「Go To トラベル」を全国一斉に一時停止すると決めた。期間は12月28日から来年1月11日まで。

菅義偉内閣総理大臣は、「年末年始において最大限の対策を採るため、今月28日から来月11日までの措置として、GoToトラベルを全国一斉に一時停止する。それ以降の扱いについては、その時点での感染状況などを踏まえ、改めて判断する」などと述べた。年末年始の帰省や年末年始休暇を利用した旅行の自粛が拡がり、さらには有名神社などへの初詣なども手控えられることになりそうだ。

また、東京都の小池百合子知事は同じく12月14日に行った臨時の記者会見で、都内の酒類を提供する飲食店に対する午後10時での閉店を求める営業時間短縮要請を、当初の12月17日までから来年1月11日までに延長すると発表。

東京都と同様の飲食店に対する営業時間短縮要請は、全国の主要都市を中心に増えており、企業や官公庁などが忘年会や新年会を中止するケースが増加している。Go Toトラベルの一時停止と酒類を提供する飲食店の時短営業の拡大は、年末年始のタクシー需要に深刻な影響を与える懸念が強まっており、都内タクシー事業者の間でも乗務員の計画休業による稼働調整を行うことで供給削減を検討する動きが拡がっている。

一方で、新型コロナウイルスの収束に向けた対策も、来夏に予定されている東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、来春までには進展することになりそうで、アメリカ製薬大手のファイザーは12月18日、新型コロナウイルス予防ワクチンの製造・販売の承認申請を厚生労働省に出した。タクシー業界にとって、来春までが当面の正念場と言えそうだ。

<本紙編集長=熊澤 義一>

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菅総理

全国一斉にGo Toトラベル停止

菅義偉内閣総理大臣は、政府が12月14日に都内千代田区の「総理大臣官邸」で開催した第49回新型コロナウイルス感染症対策本部において、「先月来の感染拡大については、専門家の分科会からの提言を受けて、飲食店の時間短縮、感染拡大地域のGoToトラベルの見直しを行ってきた」としながら、「現時点で、全国の感染者数は高止まりの傾向が続き、様々な指標からみて感染拡大地域が広がりつつある。とりわけ、医療機関を始めとして、新型コロナウイルスに最前線で対処する方々の負担が増している。さらに、先日の分科会では、年末年始を静かに過ごすことが大事であり、特に、感染拡大が相当に進んでいる地域の皆さんは、帰省の延期も含めて検討すべきとされた」とし、その上で「年末年始にかけてこれ以上の感染拡大を食い止め、医療機関などの負担を軽減し、皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるよう、まず、GoToトラベルについては、専門家の分科会の提言を受け、従来の取り組みを強化、延長することとし、札幌、大阪に加えて、東京、名古屋についても一律に、今月27日まで、到着分は停止、出発分も利用を控えるよう求める。さらに、年末年始において最大限の対策を採るため、今月28日から来月11日までの措置として、GoToトラベルを全国一斉に一時停止する。それ以降の扱いについては、その時点での感染状況などを踏まえ、改めて判断する」などと述べ、観光支援事業「Go To トラベル」を全国一斉に一時停止すると決めた。期間は12月28日から来年1月11日まで。

年末年始の帰省や年末年始休暇を利用した旅行の自粛が拡がり、さらには大みそかの鉄道の終夜運転中止などもあり有名神社などへの初詣なども手控えられることになりそうだ。

飲食店の夜間営業も短縮

また、東京都の小池百合子知事は同じく12月14日に行った臨時の記者会見で、都内の酒類を提供する飲食店に対する午後10時での閉店を求める営業時間短縮要請を、当初の12月17日までから来年1月11日までに延長すると発表した。さらに、東京都では、飲食業界への支援事業「Go To イート」や、都民割事業「もっと楽しもう! TokyoTokyo」の利用も同様に来年1月11日まで停止する。

東京都と同様の飲食店に対する営業時間短縮要請は、全国の主要都市を中心に増えており、企業や官公庁などが忘年会や新年会を中止するケースが増加している。Go Toトラベルの中止と酒類を提供する飲食店の時短営業の拡大は、年末年始のタクシー需要に深刻な影響を与える懸念が出ており、都内タクシー事業者の間でも乗務員の計画休業による稼働調整を行うことで供給削減を検討する動きが拡がっている。

要請

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感染リスクの高い高齢乗務員

そうした中で、タクシー業界には、新型コロナウイルスの感染リスクの高い65歳以上の高齢で基礎疾患を持つ乗務員も多く、飛沫感染防止シートのタクシー車内への設置や乗客のマスク着用を原則として義務付ける運送約款(乗客が、乗務員によるマスク着用の要請を正当な理由なく拒めば乗車拒否の対象となる)を採用するケースが全国的に増えているが、それでも新型コロナウイルスが感染拡大してタクシー需要が低迷する傾向を強める中で、高齢乗務員への対応は当面の経営課題としてクローズアップされそうだ。

厚労省にワクチン承認申請

一方で、新型コロナウイルスの収束に向けた対策も、来夏に予定されている東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、来春までには進展することになりそうだ。新型コロナウイルス予防ワクチンの接種が始まった米欧に続き、アメリカ製薬大手のファイザーは12月18日、ドイツのバイオ企業ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルス予防ワクチンの製造・販売の承認申請を厚生労働省に出した。ファイザーは既に、日本政府と1億2000万回分(1人2回の接種が必要なため6000万人分)のワクチンを来年上半期に日本に供給することで合意している。

早ければ来春にも国内で接種

ファイザーとビオンテックが開発したワクチンは、約4万人を対象に行われた世界規模での比較試験で、95%の発症予防効果を示したという。一方、痛みや疲労などの副反応は一定頻度でみられたが、臨床試験段階では重篤なものは報告されていないという。ただし、新型コロナウイルス感染拡大の程度や重症化率が国・地域によって大きく異なることなどから、厚生労働省では、日本人に対する安全性と、免疫誘導を確認するための国内での臨床試験が必要との考えを示していて、ファイザーとビオンテックは現在、日本での臨床試験を行っており、2月までには主要な結果がまとまるとしている。今後、この試験の結果も交えて承認の可否が判断され、早ければ3~4月には日本国内でもワクチン接種が開始されることになりそうだ。

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テレワーク定着への対策

国内でのコロナ予防ワクチン接種の開始で、来春には、社会経済の正常化に向けた一定の見通しが立つことにもなりそうだが、テレワークの拡大など、新型コロナ禍をきっかけとした生活スタイルの変化、ニューノーマル(新常態)についても一定程度の社会への定着が予想され、都内事業者からも「タクシー需要が以前のように戻るという確証はない」との見方も出ている。このため、新しく導入された一括定額運賃によるタクシー回数券や定期券(一定条件を付した乗り放題)、迎車料金のダイナミックプライシングと配車アプリのさらなる活用、コロナ収束後に向けたタクシー相乗り、さらには実証実験が進むMaaSへの積極的な参画などで、新たなタクシー需要の掘り起こしに向けた取り組みも必要だ。

感染対策本部

全国のタク需要11月は下落

そうした中で、全国ハイヤー・タクシー連合会がこのほどまとめた、11月の新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化(サンプル調査。高知のサンプル調査対象事業者が変わったことから数値は若干の変更)では、全国の営業収入の前年同期比(単純平均)は70.1%で、10月の74.9%から4.8%の減となった。タクシーの営業収入は、新型コロナウイルスの感染拡大対策で緊急事態宣言が発令されたことにより急落したものの、4月の37.9%、5月の37.2%を底に回復傾向を示し、若干の増減をしながらも基本的に右肩上がりの傾向を示し、9月は68%、そして10月には74.9%となっていたが、11月は再び減少して前年同月比70.1%にとどまった。11月の対前年同月実績比が10月を上回ったのは、宮城(59.5%→64.2%)、石川(55.8%→60.7%)、京都(58.2%→67.2%)、香川(69.8%→72.4%)、長崎(87.5%→89%)の5府県のみで、ほとんどの都道府県が下回った。

京都の11月は大きく回復

また、新型コロナウイルス禍によるインバウンドの訪日外国人観光客の消滅と国内観光客の激減から、全国でも突出してタクシー需要が低迷した京都は、11月の対前年実績比は、10月の58.2%から67.2%へと7割弱にまで回復。政府のGo Toトラベル・キャンペーンなどで多くの観光客が京都を訪れた紅葉観光なども、タクシー需要の回復を後押ししたようだ。

コロナ感染症の影響によるタクシー営業収入の変化

北海道は20%超のマイナス

一方で、札幌の歓楽街ススキノを中心に新型コロナウイルスが感染拡大した北海道は、10月の84.3%が11月は62.4%と、20%を超える急激な需要減少によるマイナスを記録した。12月は、全国的な新型コロナウイルスの感染拡大で、大都市を中心に酒類を提供する飲食店の夜間営業の時間短縮が拡がり、「とても年末繁忙期というような状況にない」との見方が支配的で、全国的に大きなマイナスとなる懸念が強まっている。最低限の営収水準を確保するため、乗務員の計画休業による稼働調整を行うことでの供給削減も必要になって来そうだ。

東京のタク需要は6割強の水準

また、東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)がこのほどまとめた令和2年11月の東京都特別区・武三地区における原価計算対象26事業者1701台の輸送実績速報をみると、実働率は70.2%で、前年同月実績の79.1%から8.9%のマイナスだっただけでなく、10月の73.6%も下回っている。上昇傾向にあった都内の実働率も、11月は一転して低下することになった。

11月の実実働日車営収は3万7142円で、昨年同月の5万912円との比較で73%の水準で、10月の3万7948円との比較でも2.1%の減。実働率が下がる中で、実働日車営収も前月から減っている。運送収入が、前年同月との比較で62.2%と大幅な減少となっている上に、前月の10月との比較でも90.5%と1割弱のマイナスとなっており、都内タクシー需要の深刻な減退傾向には注視が必要だ。

東京都輸送実績

タク配車アプリの存在感高まる

一方で、11月も輸送回数が前年同月比で64.9%と大きく減っていることに対し、迎車回数は同90.8%にとどまっており、配車アプリでタクシーを呼ぶという利用スタイルが都内の流しマーケットでも確実に定着しつつあることをうかがわせている。配車アプリの存在感が、今後ますます高まっていくことになりそうだ。

11月も多摩が特別区を上回る

 東京都心のタクシー需要の低迷が深刻なのは、同じく東タク協がまとめた東京都多摩地区の令和2年11月の原価計算対象16事業者909台(うち普通車は876台)の輸送実績速報との比較からも明らかで、特別区・武三地区の運送収入の対前年実績比が62.2%だったのに対して、多摩地区は73.6%と、11.4ポイントもの差がついている。もっと深刻なのは実働日車営収で、特別区・武三地区は3万7142円で対前年比73%であるのに対し、多摩地区は3万8382円で対前年比86%と、多摩地区でも10月との比較では減退傾向ながらも、実働日車営収で特別区・武三地区を1200円以上も上回った。

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国交省のコロナ影響調査

国土交通省はこのほど、11月31日現在における新型コロナウイルス感染症による所管する関係業界への影響についての調査結果を公表した。

国土交通省 発表

このうちタクシー業界の調査結果に関しては、「11月においては、運送収入が30%以上減の事業者が前月の31%から44%に、輸送人員が前月の25%減から30%減となるなど、前月から悪化しており、依然として厳しい状況」としているほか、「12月以降は運送収入が30%以上減の事業者が前月より悪化して52%となる見通しであり、引き続き厳しい状況が継続する見込み。また、感染再拡大があった一部の地域で需要が落ち込むなどの傾向が拡大するおそれ」などと分析しており、タクシー需要の現状と今後の見通しに厳しい見方を示している。

また、タクシー事業者による各種支援制度の活用については、「資金繰り支援を98%の事業者が活用しており、98%の事業者が給付済み。雇用調整助成金を約86%の事業者が活用しており、約76%の事業者が給付済み」としている。

コロナ感染症によるタクシー業界への影響

新型コロナウイルス禍によるインバウンドの消失、団体旅行や修学旅行の激減などから深刻な経営難に陥っている貸切バス業界の調査結果に関しては、「10月は、秋の行楽期を背景に、Go To トラベル事業や臨時交付金、感染症対策、換気性能のPR等の効果も相まって改善傾向にあったが、11月は、感染再拡大の影響により、改善傾向にブレーキ(11月は、運送収入が50%以上減の事業者が39%、車両の実働率が約44%)」と分析。その上で、「12月も、33%の事業者が50%以上の運送収入の減少を見込んでおり、年末年始にかけての需要についても予断を許さない状況」などと厳しい見方を示している。

コロナ感染症による貸切バス業界への影響


次回Taxi Japan 382号 をお楽しみに!

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