論風一陣 日本型RSをタクシー産業の防波堤に!(Taxi Japan 455号より)

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東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)主催の「日本型ライドシェア」出発式が4月8日、都内江戸川区の「日本交通葛西営業所」で開催された。

本紙前号の3月25日付454号の本欄で、出発式について「自社の日本交通葛西営業所で開催する案が浮上しているに至っては、さすがに協会私物化への非難が出ている状況だ」と言及した。既に日本交通の代表取締役を退任しているとはいえ、同社取締役である川鍋会長が、自社で出発式は開催しないとタカを括っていた。本来なら、一般社団法人である東タク協の主催なのだから、都内千代田区市ヶ谷の「自動車会館」をはじめとする公的施設で出発式を行うのが、良識的な判断だ。

川鍋会長の会社で出発式開催の案が浮上した時に、これを諫める協会幹部の不在を嘆かざるを得ない。テレビやマスコミで大きく取り上げられることを前提とした出発式である。日本交通以外の複数のタクシー会社も参加しているとはいえ、報道を見た誰もが「日本交通による日本交通のための出発式」と受け止めたのではないか。

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さらに、本紙前号の巻頭特集1ページのマイクを持った川鍋会長の写真を篤(とく)とみてもらいたい。この写真は3月13日の全タク連正副会長会議でのものだが、ネクタイに配車アプリGOのマークとロゴがはっきりと見える。GOの株式上場に関連して、利益相反関係にある日本交通とGOのどちらの代表取締役をとるか選択を迫られた川鍋会長は、日本交通ではなく、GOを選んだのである。そのことは業界内では既に周知の事実になっているのに、全タク連の正副会長会議にGOのネクタイをしてくることは、「タクシーではなくGOの川鍋だ」と言わんばかりに出席者を挑発しているといえば言い過ぎか。たかがネクタイのロゴに目くじらを立てることはないのかもしれないが、川鍋会長に、GOのネクタイをしないように諭す側近が存在しないのは問題だ。「免許制にあぐらをかいてきた」と批判されてきた過去のタクシー業界の体質がいまも残っているのか、業界幹部連の川鍋会長への見て見ぬふりでモノ言わずの一連のライドシェア対応は、この先で後悔しても遅い。

東タク協の「日本型ライドシェア」出発式は、タクシー産業の衰退、瓦解の序章に過ぎない。この先の需要と供給の逆転とアンバランスに加え、ライドシェア新法による完全解禁でタクシー会社の管理から外れる可能性は強く、この先の成り行きを展望すれば、タクシー産業に未来はない。タクシー業界の対応について改めて万機公論に決した上で、業界が一致結束してライドシェア全面解禁を断固阻止するために、「日本型ライドシェア」を防波堤とする最後のタイミングを逃してはならないのではないか。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 456号 をお楽しみに!

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