【特集】日本型RSをタクシー産業の防波堤に!斉藤大臣と河野大臣が出発式参加 東タク協の日本型ライドシェア始動(Taxi Japan 455号より)

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東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)は4月8日、地域や曜日・時間帯によるタクシー供給不足を補うとして道路運送法78条3号に基づき導入される自家用車活用事業「日本型ライドシェア」の出発式を、都内江戸川区にある「日本交通葛西営業所」において、斉藤鉄夫・国土交通大臣や河野太郎・デジタル行財政改革担当大臣(規制改革担当大臣)らも参加して開催した。当日は、自家用車活用事業(=東タク協での名称は「日本型ライドシェア」)に参画する、日本交通、陸王交通(日本交通グループ)、宝自動車交通(東京無線協同組合)、日の丸交通、日の丸リムジンの5社の管理の下で運行される自家用車両が会場に並び、自家用運転者がアルコールチェックなどを含む車内遠隔点呼の実演を行い、斉藤大臣や河野大臣がGOアプリを使った模擬配車と試乗を行った。また、川鍋会長が、日本交通における自家用車の点検の様子などを報道陣に披露、記者説明会と質疑応答も行った。自家用車活用事業(=日本版ライドシェア)を巡っては、GOのほか、Uberも4月8日から東京都特別区・武三や京都市域などで「自家用タクシー」の名称で配車運用を開始。S.RIDEでも、東京大手の国際自動車や大和自動車交通などと連携して自家用車活用事業に参画することを発表している。DiDiも含めて、タクシー配車アプリの4大手が揃って自家用車活用事業に順次、参画して行くことになる。

〈本紙編集長=熊澤義一〉
 
 

東京と京都で4月8日スタート


地域や時間帯・曜日におけるタクシー供給不足を補うとして、道路運送法78条3号(公共の福祉の確保)に基づき”緊急避難措置的“に導入されることになった自家用車活用事業(=日本版ライドシェア、東タク協での名称は「日本型ライドシェア」)が4月8日、国土交通省により指定された第一陣の地域である4交通圏(東京都特別区・武三、神奈川県京浜=横浜市・川崎市・横須賀市等、愛知県名古屋、京都府京都市域)のうち、東京都特別区・武三(配車アプリGOとUber)と京都市域(Uber)で先陣を切ってスタートした。今月中には、京浜や名古屋でも地元タクシー事業者の管理による自家用車活用事業の運用が始まる。


5月から大阪など8地域が追加


自家用車活用事業は、同事業(=日本版ライドシェア)に意欲のある指定地域の地元タクシー事業者が、手挙げ方式で任意に参入するという制度のため、当初から業界(協会)として対応に前向きとみられ、配車アプリの導入率も高かった、東京・神奈川・名古屋・京都の4業界(協会)が4月スタートの第一陣に選ばれることになった、と指摘されている。これに、5月スタートの第二陣として、北海道札幌・宮城県仙台市・埼玉県県南中央(さいたま市など)・千葉県千葉・大阪府大阪市域・兵庫県神戸市域・広島県広島・福岡県福岡の主要県庁所在地を含む8地域が追加指定される。東京業界では、東タク協に加入する約280社のタクシー事業者のうち、自家用車活用事業に参入するのは大手事業者を中心に60社程度とみられている。
 
 

許可は2年で、台数は1年有効


自家用車活用事業は、国交省がタクシー不足を理由として、配車アプリのマッチング率90%達成を基準に、地域・時間帯・曜日を原則4時間単位(京都市域の週末などそれ以上のケースもある)で指定して不足車両数を算出、4月段階ではこの半分が申請に基づいて按分して配分され、3カ月ごとに追加・見直しが行われる。許可期間は2年だが、雇用や事業の安定性に配慮して、3カ月ごとの見直しに関係なく、時間帯・曜日ごとに各事業者に按分して配分された自家用車両の最大同時運行台数は1年間有効となる。例えば、東京都特別区・武三交通圏のケースでは、タクシー台数2万6983台に対して、平日(月曜〜金曜)朝7時〜10時台までが1780台(4月スタート時点では半分を按分して各事業者に配分)で、最大は、土曜(金曜深夜)午前0時〜早朝4時台までの2540台となっている。


フルタイム労働者は対象外に


その一方で、自家用車活用事業は、配車アプリのマッチングデータでタクシー不足が顕在化している時間帯・曜日を原則4時間単位で指定して運用する制度設計のため、「米国型ライドシェア」のイメージのままに自由に時間を使って働きたいという応募者のニーズにはマッチしないケースが続出、さらにタクシー事業者との雇用契約を前提にすると所定労働時間が週40時間のフルタイム労働者は対象外(労働時間超過)となることから、主な自家用運転者の対象が、個人事業主、送迎ドライバーなどの業務委託型の契約社員や短時間労働者、フリーター、主婦、学生などに限定されることになる。これらが、応募者数1万人でも、最終的な採用者数が少数に留まる要因ともなっている。社会保険料適用との関係から、週20時間未満とするケースが主流だ。


東タク協の川鍋会長が挨拶


川鍋会長

4月8日に、都内江戸川区の「日本交通葛西営業所」で開催された、東タク協の「日本型ライドシェア」出発式では、冒頭の挨拶で、川鍋一朗会長が「今から112年前に海外から輸入した、自動車とタクシーという仕組みを使って、日本のタクシーが走り始めた。その日本のタクシーは、今では世界で一番に品質が良くて安全なタクシーになった、と世界の皆さんから評価されている」とした上で、「今日ここに、海外から輸入されたライドシェアという仕組みが、日本人に必要な高いレベルの安全性を身に付けて、新たに進化した形での『日本型ライドシェア』としてスタートする。この『日本型ライドシェア』が、新しい世界のライドシェアのスタンダードになると確信している。新しいタクシー業界の歴史の一歩を刻みたい」などと抱負を述べた。


斉藤鉄夫・国交大臣が挨拶


斉藤国交大臣

続いて、斉藤鉄夫・国土交通大臣と河野太郎・デジタル行財政改革担当大臣が来賓として挨拶した。両大臣には、岸田文雄・内閣総理大臣が3月27日に都内千代田区の「総理大臣官邸」において、村井英樹と森屋宏の両官房副長官、阪田渉・内閣官房デジタル行財政改革会議事務局長、内閣府の井上裕之内閣府審議官、国交省の水嶋智・国土交通審議官、鶴田浩久・物流・自動車局長の同席のもと、4月からスタートする自家用車活用事業(=日本版ライドシェア)に関して「出来るだけ全国で幅広くデータをしっかりと取って、その効果を検証し、法改正の必要性などについて6月に向けて議論を進めて欲しい」などと指示した経緯がある。斉藤大臣は、「本日、東京ハイヤー・タクシー協会において、自家用車活用事業スタートの式典が、全国で初めて開催される。地域交通の担い手不足、地域の足の不足といった課題の解決に向け、昨年の秋以来、デジタル行財政改革会議や規制改革推進会議、また国交省の交通政策審議会において、自家用車と一般ドライバーの活用についての議論を進めて来た」とした上で、斉藤大臣は「これらの検討に当たって、私も強調し、国会での議論の中でも訴えたのが3つの点だ。一番目は、ドライバーとクルマの安全性、二番目は、事故が起きた際の責任、3番目が、適正な労働条件、この3点だ。これらの点で、日本のタクシーには、長い歴史の中で築き上げられてきた世界一の安全・安心があり、本日からスタートする自家用車活用事業では、利用者に安全・安心に乗ってもらうために、タクシー事業者が築き上げて来た安全・安心の仕組みやノウハウ、経験を活かしつつスタートするものだ。まずは東京を始めとする4カ所で開始するが、これを全国でも出来るだけ早くスタートさせたいと、国交省ではタクシー不足地域等のデータ収集に頑張っているところだ」としながら、「この事業を着実に進めていただきたい。国交省としても全力で頑張って行くという決意を表明させていただく」などと訴えて、自家用車活用事業の早期の全国展開に重ねて意欲を示した。

 

河野大臣、必要な変更を随時に


河野大臣

河野大臣は、「いま日本全国の至る所で、行きたいところに行けない、移動の足が無い、という問題が起きている。昨年秋から議論を始めた、この日本版ライドシェアは、国交省を始めとして多くの皆さんの理解と協力を得て、今日こうしてスタートすることが出来た。非常に早い決断のおかげ、と感謝している」とした上で、「(自家用車活用事業は)今日からスタートをするが、毎日のように状況をみて、必要な変更はしっかりと速やかにやって行きたいと思っている。電車が止まるなど突発的な事態にも移動の足を確保する、それはこれからも考えて行かなければいけないと思っているし、雨が降ったらタクシーが捕まらないという経験を多くの方々がしている。需要が増えた時に、それに応じて、いかに供給を増やして行くのか、そうしたことも、しっかりとこれから対応して行かなくてはならない」としながら、「今までの行政とは違って物事をアジャイル(状況変化への素早い対応)に捉えて行く、変えて行く、そういうことのスタートになる最初の一歩だと思っている。この日本版ライドシェアを多くの人に一度は体験してもらって、その便利さを感じてもらうことが大事だと思っている。その中で、変えなければならないことは、どんどん変えて行きたい」などとする意向を示した。このほか来賓として、国交省の鶴田浩久・物流・自動車局長、舟本浩・大臣官房審議官(物流・自動車局担当)、4月1日付で赴任したばかりの浅井俊隆・旅客課長、さらには勝山潔・関東運輸局長、矢吹尚子・同自動車交通部長、織田陽一・東京運輸支局長、全タク連の神谷俊広理事長らも駆け付けた。自家用車活用事業の制度設計を主導した、国交省の森哲也・前旅客課長(大臣官房参事官・税制担当)も顔をみせた。

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両大臣は試乗体験に高い評価


試乗体験

テープカットに続き、自家用運転者がアルコールチェックなどを含む車内遠隔点呼の実演を行い、斉藤大臣や河野大臣がGOアプリを使った模擬配車と試乗を行った。斉藤大臣はトヨタ・アクア、河野大臣はミニ・クラブマンに乗車して周囲を一周した。トヨタ・アクアを運転した、本業が福祉タクシーの個人事業主という40代の女性が、報道陣の質疑応答に対応。試乗した、斉藤大臣と河野大臣ともに、乗車後の感想では接客対応も含めて高い評価を与えた。


タクシー・ライドシェアを呼ぶ


GOのアプリ画面上では、事前確定運賃のキャッシュレス決済で乗降車地を確定させると、指定時間帯は「ライドシェアドライバー稼働中」として、「タクシー・ライドシェアを呼ぶ」などと表示される。この標準設定では、タクシーと自家用車のどちらが配車されるかは分からず、選択も出来ない。一方で、アプリ設定で条件を変えて、タクシーだけを配車対象にすることは可能だ。

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川鍋会長が記者説明会


記者説明

その後、川鍋会長が、日本交通における自家用車の点検の様子などを報道陣に披露、記者説明会と質疑応答も行った。川鍋会長は、「日本型ライドシェア」における運転者の募集・採用状況を説明して、応募者は男性が約9割、年代は幅広く20〜50代で約8割、ドライバー職の経験者が約半分などとしたほか、採用後に動画を視聴するeラーニングと効果測定などの10時間の研修を実施、うち2時間は自動車事故対策機構(NASVA)による適性診断受診だとした。日本交通が貸与する通信型ドライブレコーダーとドライバーアプリの連携による運転状況のチェックと指導の様子も紹介した。質疑応答では、当日朝の自家用車活用事業の運行状況に関して「日本交通だけで約60人が稼働できる状況にあり、他社も含めるとさらに多くなる。応募者のうち3〜4割は自家用車を持っていない、或いは使いたくない、という方で、貸与した車両で運行中というケースも既にある。東タク協の推奨(ガイドライン)として、車齢は10年以内で衝突軽減ブレーキの装備などがある。使用車両については、タクシーと同等かそれ以上、という水準で選別している。労働時間は、週20時間までで、本業との合算で最大でも週40時間までとしていて、この2つの部分(車両と労働時間の条件)でかなりの応募者が採用見送りになっている。日本交通におけるパート雇用の労働条件として、週20時間までのシフト制で、時給は1400円+1時間当たり400円の手当(ガソリン代、自家用車使用による消耗代、私用スマートフォンの通信代などとして)+歩合となっており、自家用車活用事業における1時間当たりの売上目安を3000円以上(税抜き)に設定している」などと説明したほか、自家用車活用事業のスタート時点での利用状況に関しては、「今朝9時前の時点で、既に50回以上の利用があったとの報告を受けている」などと紹介した。

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