【特集】コロナ収束後のタクシー事業を考える① 国土交通省の大辻旅客課長が講演全タク連が第156回理事会開催(Taxi Japan 409号より)

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国土交通省講演
全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)は3月15日、都内千代田区の「自動車会館」において、定例の正副会長会議と第156回理事会を開催し、令和4年度事業計画と同収支予算を決めたほか、通常総会を6月27日に都内千代田区大手町の「経団連会館」で開催する一方で、秋の全国事業者大会については中止することが了承された。
 
全タク連の令和4年度予算については、第一種会費の10%引き上げを盛り込んだ新単価で編成されているものの、会費引き上げが見送られた昨年度に引き続き、実際の会費引き上げについては川鍋会長に一任されており、コロナ禍の影響が長引く中で令和4年度においても全タク連第一種会費の引き上げ実施は見送られることになりそうだ。各地方協会では、全タク連会費が引き上げられないことを前提に令和4年度の予算編成が行われている状況だ。
 
また、理事会では、国土交通省自動車局の大辻統旅客課長が「タクシーを巡る最近の情勢について」と題する講演を行った。
 
理事会冒頭の挨拶で、川鍋会長は、地域交通の維持が厳しくなる中で「ライドシェア以外にも、ライドシェアの派生形というような色々な形が出てきている」などと指摘した上で、タクシーが進化することの必要性を訴えるとともに、地域のタクシー業界と自治体とのコミュニケーションが重要になって来るとの認識を示した。
 
また、大辻旅客課長も、講演の中で、地域公共交通活性化再生法に関連して「いま自治体では鉄道やバスなどの一次交通で起点となる駅やバス停から、自宅や出先の目的地までの移動の足をどう確保していくか頭を悩ませており、そういった交通のネットワークという観点からタクシーの役割を、各協会がリーダーシップを持って検討をお願いしたい」などと述べ、地域の足の確保が課題となっている地方自治体から道路運送法に関する規制緩和要望が出ている状況を説明するとともに、各地域においてタクシー業界と自治体が連携していく必要性を強調した。
〈本紙編集長=熊澤義一〉
 

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全タク連が正副会長会議を開く


都内千代田区の「自動車会館」で第156回理事会の前段に開かれた正副会長会議には、自民党の阿達雅志参院議員が挨拶に訪れた。阿達参院議員については、今夏の参院議員選挙においてトラック・バス・タクシーの陸運3団体が支援する方向となっている。
 
川鍋会長挨拶
 
また、国土交通省の祓川直也自動車局長や大辻統・旅客課長が出席して意見交換を行った。
 
川鍋会長は冒頭の挨拶の中で、「あと一週間のまん延防止等重点措置を乗り切って、ようやく解除となるので、死にそうな体に鞭を打って皆さんと生き延びたいと思う。この先、どんな(新型コロナウイルスの)亜種が来ようが、(解除により)3月最後の10日間が我々に与えられたことは、結構、大きいのではないかと思う。希望をもっていきたい」としながら、「(ハイタク労働3団体による)ハイタクフォーラムの総決起集会があり、野党超党派のタクシー政策議員連盟も開かれた。あらゆる応援を味方に付けていかなければならないと思うし、先ほど阿達(雅志・自民党参院議員)先生もいらっしゃった。先週末の自民党大会にも行ってきたが、自民党は既に参院選に向けて戦闘モードに入っているような感じだ。今夏の参院選に向けて、先ほど阿達先生がいらした時にも申し上げたが、我々タクシーのことをご理解いただいている先生方にしっかりと国会の場に立っていただくということが、これほど重要な局面を迎えていることは過去に無かったのではないか。ライドシェアではなく、運行管理責任と整備管理責任をしっかりと負う我々タクシーという形を定義付けてもらう。我々にも設備投資をして進化をしているという自負がある」などと指摘。さらに「どうしても少子高齢化の中で、特に地方において色々な形での移動手段が、様々な方が一所懸命に考えられた結果として『これはどうだ』『あれはどうか』と世の中に出て来る。そういう時に、どうしても我々タクシーが守旧派で、新しい移動手段を考えた人が改革派だというポジションに置かれがちなので、我々はしっかりと地元国会議員の先生はもちろん、自治体とも付き合いをして、少なくとも(地域の移動手段に関する)最初のボールは我々タクシーにいただけるような関係性、形を作ることが大事だと思う」などと訴えた。
 

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全タク連が第156回理事会


全タク連は、第156回理事会において令和4年度事業計画と同収支予算を決めたほか、通常総会を6月27日に都内千代田区大手町の「経団連会館」で開催する一方で、秋の全国事業者大会については中止することが了承された。
 
全タク連の令和4年度予算については、第一種会費の10%引き上げを盛り込んだ新単価で編成されているものの、会費引き上げが見送られた昨年度に引き続き、実際の会費引き上げについては川鍋会長に一任されており、コロナ禍の影響が長引く中で令和4年度においても全タク連第一種会費の引き上げ実施は見送られることになりそうだ。各地方協会では、全タク連会費が引き上げられないことを前提に令和4年度の予算編成が行われている状況だ。
 
 

川鍋会長が挨拶


 
理事会冒頭の挨拶で、川鍋会長は、「(まん延防止等重点措置が全国で解除となる3月21日まで)あと一週間を生き延びれば春の訪れは間近だという気がしている。昨年12月にも一瞬のきらめきがあったので、(解除後)3月も10日間は残ることから少しは挽回していきたい。何とか生き延びたあかつきには、会社にとっては痛いことだが乗務員の総数は減っているので、一人一人の乗務員、コロナ禍でも頑張ってこの業界に居続けてくれた乗務員には、少しは売上が良かったと思える時間が訪れるのではないか、と期待しながら努力していく所存だ」とした。
 
また「先週末には自民党の党大会があり、全タク連は友好団体ということで毎年、表彰を受けている。岸田(文雄)内閣総理大臣と数十ある友好団体の代表で記念写真も撮影した。政治は今夏の参院選に向けて戦闘モードになっている。我々としては昨年秋の衆院選が終わったばかりという感じもするが、我々タクシー業界を理解してくれる国会議員の先生方を国政に送り込むことが、我々のスタート地点だと思っている。本日は、(自民党参院議員の)阿達雅志先生から先ほどの正副会長会議で挨拶をいただいた。阿達先生については、以前に前国土交通事務次官の藤田耕三氏と一緒に私のところに挨拶に来て、国交省としてもバックアップをお願いしたい、とのことだった。そのことを皆さんとも共有したい」などと述べた。
 

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タクシーの進化を世に問う


 
川鍋会長は、「我々タクシー業界では、5〜6年前からライドシェアに対して労使一体で取り組み、ライドシェアの前にまずは我々タクシーが公共交通サービスを提供しており、運行管理責任と整備管理責任をきちんと負って日々の業務を行っている。そうしたことをすっ飛ばして、新しく出てきた移動手段が格好良くて、何でも反対する守旧派がタクシーという一般マスコミがやりがちな二項対立ではなく、我々からもタクシーがしっかりやっていることをアピールすることが大切だ。そのためにも、我々タクシーが進化していることを世に問うためにも、新しいタクシー車両を導入したり、配車アプリで乗れるようにしたり、キャッシュレス決済を導入したりする。最近では、空気清浄機、地域におけるデマンドタクシーなど、我々の出来る限りタクシーというものを公共交通のために進化させる」と訴えた。
 

自治体とのコミュニケーションを


続けて、「ライドシェア以外にも、ライドシェアの派生形というような色々な形で、地域交通の維持が厳しくなる中で、それぞれの方がそれぞれの目線で『こういう車が空いているから、それを活用したら良いのではないか』などと、各地で基本的に『良き心を持った方』が色々な所で出て来る。それは素晴らしい思い付きではあるが、しかしそこには運行責任などの重いものが発生するので、その前に緑ナンバーの我々タクシーで出来ないかどうか、と各地の自治体から声掛けしてもらえるような体制をきちんと作る。我々タクシー側も、そうした声が掛かるように、各地の自治体と日頃からしっかりとコミュニケーションを取ることが大事だと思っている。もちろん国交省や政治家の先生方と全タク連の幹部一同でしっかりとコミュニケーションを取るが、皆さん方の地元でも政治家の先生方や自治体、地方運輸局といった地域コミュニティと、何かあったら声が掛かるような状況を作ってもらえるようにお願いする」などと要請した。
 
 

大辻旅客課長が講演


川鍋会長の挨拶に続き、国交省自動車局の大辻旅客課長が「タクシーを巡る最近の情勢」と題して講演した。大辻旅客課長は、講演の冒頭で「この半年ぐらいの間の動きを中心に話をしたい。コロナ禍において大変に厳しい状況に置かれているタクシー業界について、我々国交省としてもどういった形での支援が出来るのかを考えて取り組んでいるところだ」などと述べた。
 
大辻旅客課長
 

特措法の恣意的運用はしない


大辻旅客課長は、東京都特別区・武三交通圏など全国の多くの準特定地域が、コロナ禍で輸送需要が激減した輸送実績により特定地域の指定候補となったことに関して、タクシー業界内に「コロナ禍で需要が激減しているのだから特定地域の指定要件に該当するのは当然だ。実態を反映していない」などと反発する声があることについては「承知している」としながらも、「我々としては、要件へ
の合致を機械的な数値の当てはめで行ったものであって、実際に特定地域に指定するかどうかはその地域の判断で行ってもらえればと思っており、そのための手続きも出来るだけ簡便な形で対応させてもらっている」などと説明しながら、「(特定地域指定の同意・不同意の意向調査や準特定地域協議会の開催などで)手間をかけさせて大変に申し訳ないが、我々としてはむしろ、特定地域指定において『コロナ禍だから』というような恣意的な運用をすることが、後々の将来に禍根を残すのではないか、ということで、そうした前例を作ってしまうと、せっかく関係する議員の先生方に支えていただいて作ったタクシー特措法を、運用がけしからんという指摘を受ける可能性があるため、淡々と粛々と運用したということでご理解をお願いしたい」などと理解を求めた。
 
 

運賃改定は速やかに対応する


タクシーの運賃改定状況について、大辻旅客課長は「2020年2月に全国48地域で運賃改定した後において、申請(要請)いただいた地域については順次に運賃改定を実施(宮崎県B、栃木県、福島県、福岡県A、熊本県、福岡県B、札幌B、奈良県)させていただいており、要否判定(岩手県A、東京都特別区・武三)や運賃改定率(新潟A、北九州)などの審査中という地域もあるが、我々としては出来る限り審査をスピーディーにやっていきたいと思っており、運輸局には、しっかりと資料をいただいた上で対応させていきたい」とする一方で、「私からのお願いとしては、我々がコントロールできる部分についてはしっかりと対応させていただくが、原価計算のために出していただく書類がきちんと出て来ないと次のプロセスに進めない部分もあるので、タクシー業界の皆さんも早く運賃改定審査を進めて欲しいということであれば、そうしたことにも留意していただき、会員事業者や原価計算対象事業者に周知してもらいたい」などと要請した。また、「今後もコロナ禍という状況の中で運賃改定の申請(要請)をしたいという地域も出て来るとは思うが、我々としてもそれを受け止めて、速やかに対応できるようにしていきたい」との意向を表明した。
 
タクシーをめぐる情勢について資料
 

運改後のフォローアップ再開


一方で、大辻旅客課長は、運賃改定後のフォローアップについて言及して「運賃改定の目的のひとつは乗務員の労働環境の改善であり、しっかりと運賃改定をしていただき、その効果が乗務員に対してもあるのかどうかを確認していきたい。運賃改定後のフォローアップはコロナ禍の中で中断していた、来年度以降はぜひ実施していきたいと思っている」などとした。
 
 

実績年度の取扱いは検討課題


大辻旅客課長は、運賃改定の実績年度の取り扱いについては「現在はコロナ禍の異常値であり、実績年度の取り扱いは、昨年のこの時期に出した事務連絡(2021年3月31日付旅客課長事務連絡「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた運賃改定の実績年度の取り扱いについて」)において、コロナ禍前の実績値で運賃改定を審査することになっている」と説明しながらも、「このことを今後どのようにしていくかという論議はあり、昨年(2021年)と一昨年(2020年)の実績値はコロナ禍で相当に傷んでいるが、コロナの影響がある程度は収束して、コロナ以前にまで戻るかどうかは微妙だが、ニューノーマルな生活様式になって従前のようなタクシーの利用には戻らいということであれば、そうしたことを前提とした実績についても考えていく必要があるのだろうと思っている。この部分についての結論は出ていないが、今後、我々国交省の中でも検討して、しかるべきタイミングで皆さんにも話が出来ればと思っている」などとする意向を示した。
 

相乗りはアプリ側で開発中


大辻旅客課長は、タクシーの新サービスである一括定額運賃や変動迎車料金などが一昨年11月からスタートしたことを説明した上で「相乗りに関しては、コロナ禍の中では実施できないと延期していたが、昨年11月に実施通達を出した。今まさに、これらの新サービスに対応するためのアプリ側の開発が行われているところであり、相乗りサービスについても世には出ていないが、こういった新サービスについても活用していただき、利用者サービスの向上に努めてもらえればと思う」とした。
 
 

ソフトメーター23年度にも


また、大辻旅客課長は、規制改革関係では3つあり、ソフトメーター、変動運賃=いわゆるダイナミック・プライシング、IT点呼だとしながら、ソフトメーターについては、昨秋に実証実験を行い、年度末に向けて報告書の取りまとめを行っている段階だとした。その上で、「今後、ソフトメーターを制度化していくに当たっては、正確性をしっかりと担保していくことが必要だという議論になっており、当たり前のことだが、流し営業でも使用できる現在の機械式メーターに代わるものとして正確性が担保されたソフトメーターとなると、制度的な担保も必要となって来る」としながら、「今後は、昨年に実施した実証実験を踏まえて、来年度からまずは1年ぐらいをかけてJIS規格(日本工業規格)を取っていくことで正確性を担保していこうと思っている。(JIS規格を所管する)経済産業省とも協力して、プロセスを踏んで具体的な仕様を決めていきたいと思っている。早ければ令和5(2023)年度にも制度化をすることで製品化につなげていきたい」などとする考えを示した。
 

変動運賃で有識者会議を設置


変動運賃について、大辻旅客課長は「事前確定型変動運賃としており、一般的にはダイナミック・プライシングと言われているものだが、昨年秋に2グループの参画を得て実証実験を実施した。実証実験の検証中であり、その結果に基づいて今後の作業方針を決めていく。業界の皆さんや様々な方からも指摘されていることだが、事前確定型変動運賃の導入に当たってはタクシーが公共交通機関としての役割を損なうことなくタクシーの生産性・利便性の向上につながることが重要であるとのことから、そのために来年度から有識者による検討会を新たに設置して、実証実験の結果も検証しながら制度のあり方を議論していきたい」とした。
 
さらに、「このため、事前確定型変動運賃についても、来年度すぐに制度が出て来るということでは無く、有識者会議を立ち上げてしっかりと検討していきたい。有識者会議の中には全タク連の関係者にも入っていただきたいと考えているし、労働組合や学識経験者の方にも入っていただいて、メンバーの中でしっかりと議論をしていきたい。これまでは実証実験の結果をみてどうだった、というところで終わっていたが、今後は中身についてもう少し詰めた議論をしていきたい」として、事前確定型変動運賃=タクシーのダイナミック・プライシング導入はしばらく先になるとの見通しを示した。
 
 

IT点呼と遠隔点呼を拡大


IT遠隔点呼について、大辻旅客課長は、昨年にIT点呼と遠隔点呼の対象を拡大する通達を発出したところだとしながら、「従前は処分の無い優良事業者を対象に営業所と車庫の間での点呼のみを対象にしていたが、今後は使用する機器が要件に合致するものである場合には全ての事業者にIT点呼を可能とし、対象も営業所間の遠隔点呼で使えるようにする」との考えを示した。
 

車いす乗降料金の設定問題


車いす利用者の乗降料金設定問題では、大辻旅客課長は「昨夏に私の名前で出した事務連絡(UDタクシーの乗降のみに係る料金収受は認めないとした8.16事務連絡)を契機として、業界の中で賛否、否の方が多いと思うが、異論が色々とあったことから、そうした意見も踏まえた事務連絡を発出するために昨年末に全タク連を通じて都道府県協会に意見照会をしたところだ」としながら、主なポイントを①運送する上で例外なく必要となる乗降は、運送と密接不可分な関係、②このため、運賃通達上、道路運送法上の手続きが不要となる「運送に直接伴うものではない料金」に該当しない、③かつ、特定の顧客(車いす利用者)のみに負担を求める乗降料金の収受は、UDタクシーであるか否かにかかわらず、「不当な差別的取り扱い」に該当し、道路運送法の料金として認可できないーなどとし、ここまでについては昨夏の8.16事務連絡で示した通りだとした。
 
 

福祉限定のみ料金設定が可能


そして、新たに整理した内容として、④ただし、福祉限定輸送サービスは、高度な福祉輸送サービスを質・量の両面で着実に提供するために導入された事業形態であり、福祉サービスが付加される割合が高いための特別な措置として、一般タクシーよりも規制を柔軟に取り扱われていることから、乗降に係る料金を設定できるものとして扱う、として、福祉限定輸送サービスだけは例外的に取り扱うという整理をする考えを示した。
 

国交省としての考え方を示す


大辻旅客課長は、この一連の内容での意見照会に対して『一般タクシーでも十分な福祉サービスを提供する場合があるため、福祉限定の運用と同様、乗降に係る料金を設定できるようにできないか』(→ 福祉限定の運用をする場合は、一般タクシーと異なり、高度な福祉サービスの提供を専門に行う特性上、これまでも一般タクシーに関する規則【増車規制等】の対象外としてきたところであり、これらを一律に扱うことは適当ではない)、『乗降料金を収受できる場合もあるとのことだが、特に流し営業の場合は、即座に判断できないことから、対象の有無について詳細に事例を示して欲しい』(→ 例えば、乗降前後における介助にはサービス料金を設定することが可能と考えているが、すべての事例を示すことは困難なため、適用関係が不明な場合、その都度、国交省に相談して欲しい。これにより蓄積された事例については、必要に応じて事務連絡に追加する等の措置を講じる)、『乗降サービスに係る負担は、行政や幅広い利用者が負担すべきである』(→ 乗降サービスに必要な負担を費用として支出している場合、運賃改定の際には原価の対象として扱われることになるが、いずれにせよ、国交省としてはUDタクシーの購入補助等を通じて必要な支援を実施していく)、『車いすのままでも乗車できるが、車いすを格納して移乗することを旅客が希望した場合、その対価となる料金を収受可能か。また、利用者の同意の下で乗降に係る料金を収受しても構わないか』(→ 基本的に、車いすのまま乗車するか、移乗して乗車するかにかかわらず、乗降に係る料金は収受できない)などの意見が寄せられ、国交省として考え方を示したとした。
 
ソフトメーターの制度統計について資料
 
 

障がい者の社会進出が背景


その上で、大辻旅客課長は「我々としても現場での対応には様々なものがあり、一概に『それは運送に当たる』、『これは運送に当たらない』などと整理するには限界もあるので、不明な点についてはその都度ごとに運輸局などで相談して欲しい。いずれにしても、(車いす利用者の乗降のみに係る料金収受は認めないという)こうした方向性については、昨今の障がい者の社会進出などに鑑みても、タクシー事業者においてしっかりと対応していただく必要があると考えている」などとした。
 

4つの柱でタク事業者を支援


大辻旅客課長は、令和3年度補正予算では、4つの柱でタクシー事業者を支援していきたいと考えており、▼感染症対策、▼地域交通の経営改善支援事業、▼LPガス高騰に対する支援、▼自治体等の観光関係者と連携した収益回復のための実証運行、となっているとした。
 
このうち、感染症対策(高性能空気清浄機やオゾン発生装置、車内の抗菌加工など)では、昨年と同様の形で支援(補助率2分の1)を実施したいと考えており、既に要望調査も行っている。
 
また、地域交通の経営改善支援事業が新たに追加され、4月上旬から約2カ月間の要望調査を実施することを計画している。支援する中身は、大きく「配車アプリ関係などデジタル化に要する費用」と「研修関係」の2点であり、配車アプリについては、要望調査において、配車アプリに要する月額費用やタブレット等の導入費用であり、各社の個別契約に加え、無線協同組合等での契約も支援の対象とする予定。補助率は、感染症対策と同じで2分の1。
 
大辻旅客課長は「配車アプリに関しては、まだまだ地域によっては導入しきれていないところもあり、この支援事業をきっかけに生産性向上に繋がるような配車アプリの導入を検討してもらいたいと思っている」などとする考えを示した。
 
配車アプリ以外のデジタル機器としては、クレジットカード決済機器やQRコード決済機器などの導入経費、決済機器の利用に要する月額費用などについても2分の1の補助率で、要望を聞く。
 
大辻旅客課長は「コロナ禍の中で、国からの2分の1補助があっても残り2分の1の負担が厳しいという声
は、昨年の感染症対策への支援でも聞いており、今回は追加負担が発生しない配車アプリや決済機器などの月額費用などもメニューに加えて要望調査を行うことにした」などと述べた。
 
タクシーの乗降にかかる料金設定資料

研修費用や特例教習でも補助


研修関係では、デジタル化と併せて生産性を上げる取り組みとして、具体的には、社内で実施する研修での講師派遣費用、タクシー協会や自治体が実施する研修の受講費用などで、さらには、乗務員不足における人材確保の観点から、改正道路交通法の施行で今年5月13日から引き下げとなる二種免許の受験資格(19歳以上、普通一種免許保有1年以上に)についても、必要となる受験資格特例教習の費用を補助対象にしたい考えを示した。ただ、改正道路交通法の施行がこれからであり、特例教習の内容や費用がどうなるか分からない面もあるものの、分からないなりに要望の中に書き込んでいただければ考慮したいとした。こちらも2分の1補助となる。
 

LPガス支援は4月以降受付


LPガス高騰に対する支援では、資源エネルギー庁の原油価格高騰に対する激変緩和制度に準じて、支給額の上限を5円から25円に引き上げて支援する。これまでの5円においては、資源エネ庁の支給額に応じて同期間・同額での支援としてきたが、支給額の幅が25円に拡がったので、国交省でLPガスの価格調査を毎週ごとに行い、変動価格をしっかりとみて対応したい。ガソリン価格とLPガス価格がどれほど連動して上下しているかは分からないが、そこのところを(LPガスの価格調査を実施することで)しっかりと対応していきたいなどとした。
 
支給方法について、大辻旅客課長は、簡便に、簡単に、速やかに、支援を届けたいと考えており、申請方法については検討中だが、タクシー1台当たり月300リッター分とした上で車検証と共に保有台数分を申請してもらう考えだとした。支給額については、1週ごとにこの週は何円という形で全体額を決めて、タクシー1台当たりいくらという形で支援する。
 
そういう仕組みのため、ガソリン価格に対する元売りへの支給とは異なり、後付けでの支援となることから、3月末までの状況を確認した上で、4月以降に申請してもらうことを考えているとした。ゴールデンウィーク以降、6月ぐらいまでには各タクシー事業者の口座に入るようにしていきたいとの考えを示した。そのための事務局を作る入札を現在行っており、その事務局に申請してもらって事務局から入金するという仕組みを考えており、この支援金は、通常の補助金とは異なり、申請が簡便となるよう申請時期も考慮して、簡単に、速やかに、支払いを行いたいと思っているとした。
 
 

観光連携した実証運行に補助


大辻旅客課長は、自治体等の観光関係者と連携した収益回復のための実証運行については、公募要領を公表した上で公募開始は4月上旬を予定しており、1カ月間での公募を予定としているとした。実証運行支援の実施例としては、観光協会や自治体、ホテルなどの宿泊事業者といったところと連携して、当該観光地の場所をつなぐために観光タクシーを運行したような場合に、タクシー運賃相当額の2分の1を補助するというもの。これによって、観光地ではタクシーを使ってアクセスし易くしたり、集客し易くしたりする一方で、タクシー事業者の収益にもなる。そうした形での実証運行に対して補助をする。
 
観光関係者との連携がポイントであり要件にもなるので、ある程度の時間を要するものと考えており、早めに関係者に声をかけてもらって企画を立て、運輸局や運輸支局にも相談してもらいたいとし、観光担当部門などにおいて、お手伝いも出来ると思うなどとした。
 

自治体とのコミュニケーションを


大辻旅客課長は、最後に、地域公共交通活性化再生法に言及して「あまりこのような場でこういう話はしないが、先ほど冒頭において川鍋会長が話をしたように、地域、そして自治体とのコミュニケーションをぜひ図ってもらい、そういう必要性が非常に重要になっていることを申し上げたい」とした上で、「4〜5年前頃にライドシェアがタクシー業界を騒がせたことがあった。今はだいぶ下火になっているが、とはいえ、地域においては高齢化が進み、過疎化が進み、移動の足の確保がなかなか難しくなっていることで、何らかの代替手段が必要であって、それを自治体としては考えなければならない、となった時に、やっぱり新しい移動サービスが何らかの形で出てきている。そういう中で、タクシーがしっかりとあるとアピールし、(移動の足を)受けていただくことが何より重要だと思っている」などとした。
 
さらに、「まさに地域公共交通活性化再生法は、一昨年に改正して、それまで義務化されていなかった地域公共交通マスタープランということで、地域公共交通計画を作成する義務が生まれた。各自治体で地域公共交通計画が作成されているが、その中でタクシーが果たす役割を打ち込んでいただきたいと思っている」とした。
 
 

自治体からの規制緩和要望


大辻旅客課長は「国家戦略特区であるとか、スーパーシティであるとか、デジタル田園都市構想であるとか、こうした規制緩和関係では、各自治体の首長が手を挙げて規制緩和を要望されている。その中には道路運送法の規制緩和もたくさん含まれていて、昨年も全国から約80の提案があり、そのひとつひとつに(できないものは出来ないなどと)対処している状況だ。タクシー業界として(地域の足の確保に)しっかりと取り組んでいただくことが、そうした要望に対処をしている我々への大きなサポートになる。タクシー業界が守旧派であり規制改革の反対派という印象を持たれてしまうと、対外的なタクシー業界の見え方が悪くなってしまう。地域の足としてバスと並んでタクシーがあるということで、通常のタクシーだけでなく、乗合タクシーなどの自治体と連携した形での対応などもお願いしたい」などと要請した。
 
 

地域におけるタクシーの役割


そして「いま自治体では鉄道やバスなどの一次交通で起点となる駅やバス停から、自宅や出先の目的地までの移動の足をどう確保していくか頭を悩ませており、そういった交通のネットワークという観点からタクシーの役割を、各協会がリーダーシップを持って検討をお願いしたい」と求めて講演を終えた。
 

さらなる運賃改定の可否で質疑


大辻旅客課長の講演後の質疑応答では、佐賀県の出席者から「コロナ禍に入る直前(2020年2月)に運賃改定を実施したが、コロナ禍が収束してもタクシー需要は8割までしか戻らないという見方も出ており、それでは経営は厳しい。さらなる運賃改定は可能か」との質問が出たが、これに大辻旅客課長は「運賃改定については、基本として各地域のタク
シー事業者が経営判断することが大事だと思っている。我々としては、2020年に運賃改定をしてから2年しか経過しておらず改定のサイクル
としては短い、というような考えは持っていない。必要な時に、必要なタイミングで、適正に運賃改定をしてもらう、というのが我々のスタンスだ」などと答えた。
 

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