都内準大手事業者の日の丸交通がUberと業務提携したことに端を発した騒動が昨年末に勃発した。
東タク協の総務委員長を務める富田和孝日の丸交通社長は、東タク協の正副会長から提携を止めるよう説得されるとともに「執行部の方向性と違う。辞任しろ」などと迫られた結果、総務委員長の辞任届を提出した。
東タク協は、全タク連などとともに「ライドシェアと称する白タク行為」絶対阻止の立場だが、一方で、特定のスマホ配車アプリは採用しない、などという申し合わせや決議などは存在しない。従って、どのスマホ配車アプリを採用するかの選択は、個々の事業者の経営判断によることになる。Uber以外にも外資系の配車アプリは存在するが、いずれも違法な「ライドシェアと称する白タク行為」はしないことを明言している。東タク協執行部は、富田総務委員長に「執行部の方向性と違う。辞任しろ」などと迫ったようだが、東タク協として配車アプリ採用に関する具体的な申し合わせや決議、ガイドラインなどが無い中で、そのような主張には合理性が無く、さらに辞任を迫るのは、暴挙そのものだ。
全タク連では富田昌孝前会長時代に、タクシー業界共通・統一のスマホ配車アプリ検討の方針を打ちだしたものの、しばらくして「業界内に配車アプリを巡る勢力争いを持ち込みたくない」との考えから、スマホ配車アプリの業界共通化・統一化に向けた検討方針は撤回されることになった。その後、スマホ配車アプリのあるべき姿や果たすべき役割についての議論は、全タク連をはじめとしてタクシー業界の表舞台から消え去った。
また、ライドシェア対策とされた事前確定運賃や相乗り導入のための実証実験は、国交省とスマホ配車アプリ事業者を中心に実施された。全タク連での本格的な論議抜きにこうした実証実験が実施されてきたのも、全タク連として正面からスマホ配車アプリ問題を論議してこなかったことの弊害だ。
政府は8日、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない首都圏の1都3県を対象に1か月間の緊急事態宣言を発出した。2月下旬からは国内でも新型コロナ感染予防ワクチンの接種が開始される方向だが、このワクチンが効果を発揮すれば新型コロナ禍は収束に向かうはずだ。
それを信じながらアフターコロナのタクシー業界を俯瞰すれば、これまで封印してきたスマホ配車アプリのあるべき姿や果たすべき役割を、タクシー業界全体の利益の観点から公明正大に検討すべきだ。タクシー業界として、スマホ配車アプリのあり方についてこれ以上、一部アプリ事業者のやりたい放題を黙認して議論を避けて通ることは許されない。
<髙橋 正信>
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