国土交通省は10月〜11月をメドに、事前確定方式で需要に応じてタクシー運賃を変動させるダイナミックプライシングの実証実験を行うと発表した。
このダイナミックプライシングは、2016(平成28年)に全タク連のライドシェア問題対策特別委員会がまとめた11項目の「今後新たに取り組む事項について」の1項目として盛り込まれたことに端を発している。
この11項目のうち、「ユニバーサルデザイン(UD)タクシー」、「第2種免許緩和」、「乗合タクシー」の3項目以外は、全国一律の取り組みを前提にしておらず「地域の状況を踏まえて検討」としていた。問題は、全タク連の中でダイナミックプライシングの及ぼす問題点や弊害について、ほとんど検証や議論がなされず、川鍋一朗会長を中心とした在京幹部と国土交通省との間で導入を前提とした話がすでに進められてきたことである。
そのことは、本紙前号(8月25日付け、第395号)の巻頭特集「タクシー事業のこれからを考える①変動運賃が招く運賃競争を懸念」での、つばめ自動車・天野清美社長のインタビュー記事に明らかである。天野氏は、名古屋タクシー協会会長であり全タク連副会長を兼務。ダイナミックプライシングの導入に関しては「もう実証実験の段階まで進んでいるのか、(略)要は東京業界サイドで話が進んでいた、ということになる」と述べている。
さらに天野氏は、「東京のタクシーを前提に、タクシー全体のことを考えるとズレが生じる。そのことは、地方の協会長が共通して持つ認識ではないか。地方において運賃競争が起こることはシミュレーションをしてみればすぐに分かる」、「明らかに(運賃値下げの)口実として使えるような稚拙な取り組みをどうして行うのか」などと、ダイナミックプライシングのタクシー運賃への導入に対する強い懸念と警戒感を表明している。
天野氏が指摘していることは、実際に全タク連の正副会長会議や理事会、専門委員会等の場などでまともに議論が行われていない、ということになる。それは、何もダイナミックプライシングに限ったことではない。筆者は、ライドシェア対策として金科玉条のごとく全タク連での議論らしい議論抜きで川鍋会長を中心に在京幹部による独断専行でコトが進められてきている、とみている。例えば、全タク連において、タクシー配車アプリに関する事項が、ご法度として取り上げられないのはどうしたことか。配車アプリ会社の経営者としてタクシー配車アプリの寡占化に傾倒している川鍋会長には、タクシー事業者の、タクシー事業者による、タクシー事業者のためにある全タク連の存在意義に立ち返った運営姿勢を求めたい。
(高橋 正信)
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