論風一陣 業界イメージ損ねる入社祝い金のウソ!(Taxi Japan 406号より)

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都内を中心にタクシー乗務員に特化した有料職業紹介事業を展開している日本総合ビジネス(清水弘一社長、東京都渋谷区)が運営するインターネットの求人サイト「転職道」に「全員対象入社祝金100万円」のセンセーショナルな見出しのタクシー乗務員募集広告が掲載されている。
 
この広告は、エコシステム(中村秀樹社長、東京都足立区)が数年前から掲載しており、コロナ禍の中で影を潜めていたのが、このところアフターコロナを見越して掲載が再開されている。100万円の入社祝い金は、「業界内でも最高峰!経験者も未経験者も全員対象」と謳っているが、実際は、一般的な入社祝金とは別物と指摘したい。
 
 
まず、広告の100万円の表記の下に小さく「*社内規定あり」とあるが、説明文の中に社内規定の具体的な内容は一切記載されていない。明らかになっているのは、100万円の支給方法で、次のように掲出している。「業界内でも最高峰!経験者も未経験者も全員対象」、「支給例:入社日20万円→2カ月後20万円→4カ月後20万円→6カ月後20万円→8カ月後20万円合計100万円を支給いたします」とある。支給例をよくみると、入社時の祝金といえるのは、最初の入社日支給の20万円のみといえ、これは同業他社の入社祝金と変わらない。その後の、入社2カ月後、4カ月後、6カ月後、8か月後は、素直に読むと2カ月勤務ごとに20万円を支給するというもので、これは都内の同業他社にみられるような給与保障的な金額だと言える。ともかく入社日から長期間が経過して、ようやく満額の100万円が受給できるという支給方法は、すでに入社祝金の体を成さない。
 
 
というよりも、このようなまぎらわしく事実に反するような誇大広告を無条件で掲載していてよいのかを当事者であるタクシー事業者と求人サイト側に問いたい。この広告の表現そのままに経験者も未経験者も全員が入社祝金として100万円を手にしているのなら別だが、長期間にわたる支給方法から明らかなように、そんな話は寡聞にして知らない。
 
支給方法のみを開示しているが、その他の条件、例えば入社後の勤務態度や売上状況などにより支給額を減額、控除されるのかどうか、知りたい情報をことごとく公表しないこの誇大広告の掲載は即刻、取りやめてもらいたい。そうしなければタクシー業界のイメージを大きく損ねることおびただしいと危惧されてならない。タクシー事業にとって乗務員確保は、経営存続のための生命線であることには間違いないが、だからといって誇大でなりふり構わずの募集広告などの行為は、厳に慎むべきはずなのは言うまでもないはずだ。
(高橋 正信)
 

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次回Taxi Japan 407号 をお楽しみに!

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