論風一陣 乗務員不足解消に業界あげて取り組め!(Taxi Japan 408号より)

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新型コロナウイルス禍は、タクシー業界における深刻な乗務員不足を加速化させている。そこで、東京と大阪の実態を見てみる。
 
東京都特別区・武三交通圏では、コロナ禍の影響が顕著となる前の令和元年度における法人タクシーの運転者証交付数は5万8257件だったが、これが令和2年度には5万3788件、直近の令和4年2月末では5万0237件と、コロナ禍の中で一挙に8020人、13.8%大幅に減少している。
 
 
一方、大阪市域交通圏では、令和2年1月に1万9385件だった運転者証交付数が、令和4年1月には1万6921件となっており、3464人、12.7%の減少。直近の令和3年4月から令和4年1月までの10カ月間でも853件の減少となっている。東京、大阪のいずれも、感染拡大の影響を強く受けたこの2年間で、東京や大阪の法人タクシー業界から12%台後半〜14%弱の労働力が去ったことになる。
 
例えば、特別区・武三交通圏における平成25(2013)年度の運転者証交付数は6万4060件で、当時の実働率は80.3%だった。直近の2月末は5万0237件だったので、この9年間でマイナス1万3823件、21.6%の大幅減となっている。実働率は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されて営収が回復基調を示していた令和3年9月〜12月までの4カ月間においても65.5%、67.9%、68.1%、68.9%と低迷が続き、25年度に比べて12.7%〜16.1%も下回っている状況だ。
 
 
新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の感染拡大でまん延防止等重点措置が適用され、昨年末まで回復基調だったタクシーの売上が再び急落している。タクシー業界では、雇用調整助成金や各種の助成措置、公的な融資制度を活用しながら多くの事業者がこの難局をしのいできている状況だが、そこにウクライナ紛争のあおりで燃料コストの急騰が追い打ちをかけているほか、雇用保険料の引き上げや社会保険料猶予分とのダブル納付など経営圧迫要因が目白押しである。
 
これらの何重苦を乗り越え、アフターコロナ・ウィズコロナでタクシー需要が回復したとしても、深刻な乗務員不足から低迷する実働率がこのまま続けば全国各地でタクシー会社の労務倒産が待ち構えているといえまいか。都内の一部大手事業者で新卒者採用などにより乗務員確保に成功している僅かな例があるのみで、都内を含めて全国ほとんどのタクシー事業者にとっては乗務員確保が喫緊の課題となっている。全国ハイヤー・タクシー連合会では、乗務員確保について事業者個別の経営努力とせず、業界全体の重要課題と認識して同連合会の総力をあげて対処することを求めたい。
(高橋 正信)
 

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