論風一陣 お金で釣る乗務員募集のエセ誇大広告!(Taxi Japan 411号より)

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誇大な金額を提示して求職者の注目を集めようとするタクシー乗務員の募集広告が後を絶たない。

本紙2月10日付第406号の本欄で、表題「業界イメージを損ねる入社祝い金のウソ!」を掲載し、「誇大でなりふり構わずの募集広告などの行為は、厳に慎むべきだ」と論じた。これは、都のタクシー会社がインターネットの求人サイトに出した「全員対象 入社祝い金 100万円 最高歩合率67%」とのセンセーショナルな見出しの乗務員募集広告を取り上げて批判したものである。その時に、こんなお金で人を釣るような広告のあり方が他社に拡散してほしくない、と脳裏をかすめた。ところが、その後、次のような募集広告が出現しているのである。

広告例

「入社したい方へ! 総額 130万円*規定あり 内訳↓給料保障90万円 入社祝い金最大40万円 住宅サポート併用可 安心の高歩率!!最高歩率63%」

この募集広告を出したのは千葉県習志野市のタクシー会社で、先の入社祝い金100万円を上回る金額でアピールしようとしている。その中身は、乗務員未経験者を対象に3カ月×30万円で90万円に加え、経験・未経験問わずに入社祝い金40万円で計130万円を支給するというものだ。いずれも「当社規定あり」と記載されているが、その具体的な内容は提示されていない。千葉県内の乗務員募集広告では、特に目立つ金額だ。

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先の入社祝い金100万円も今回の総額130万円の募集広告も、就職希望者へのインパクトが強い反面、実際に提示された金額を受領できるかは社内規定が明示されていないのでにわかに即断できない。さらに「最高歩合率」の表記である。これも誇大表記でまぎらわしいものだ。営業収入の高い乗務員に対しては高歩合率が適用され、低営収者には低歩合率で全員が63%や67%の歩合率が適用されるわけではないのは、タクシー業界の常識だ。しかし、これらの広告を見たタクシー業界の実情を知らない求職者にとっては、「このタクシー会社は他のタクシー会社に比べて最高の歩合率を設定している会社だ」、「自分もこの歩合率が適用される」などと誤解してしまうことが容易に推定される。誤解されないための社内規定や詳細な説明などはあえて掲載していないのかもしれない。むしろ誤解されて自社に注目してもらい、会社の門を叩いてもらうことが優先されるとでもいうのであろうか。

タクシー業界では、募集広告に記載された入社祝い金の相場が、以前は10万円〜20万円だったものが、最近は40万円〜50万円に跳ね上がっているというのが実態だ。タクシー業界が、いくら乗務員不足とはいえ、このようななりふり構わずの募集を行っている業界だと求職者からみられてよいのか。どんどん跳ね上がる入社祝い金などの表面的な金額で労働者を釣るような募集広告のあり方は、やはり不健全であり、一般社会や求職者、さらに現場で真面目に働く乗務員からどのようにみられるのか、一度、業界内で実態をチェックした上で議論すべきではないだろうか。

(高橋 正信)

次回Taxi Japan 412号 をお楽しみに!

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