論風一陣 アフターコロナに向けズバリ地方分権(Taxi Japan 375号より)

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約7年8カ月もの長期に渡った安倍晋三政権が終焉し、9月16日に菅義偉新内閣が発足した。同日に閣議決定した首相談話に「行政の縦割りや前例主義を打破して、既得権益にとらわれずに規制の改革を全力で進める『国民のために働く内閣』をつくる」とあり、河野太郎・前防衛大臣が行政改革・規制改革担当の内閣府特命大臣に就任した。

新型コロナウイルス禍で大打撃を受けているタクシー業界ではこの間、「アベノマスク」に始まる中央政府の緩慢で優柔不断な新型コロナ感染対策に加え、莫大な予算を投じるGo Toトラベル、さらにはGo Toイートなど大きなダメージを受けた観光業や飲食業に対するキャンペーン方式の救済策は、不透明な事務局選定過程が利権がらみだと指弾され、さらにはこうした一部業界に限られた経済対策で経済全体の落ち込みにいかほど貢献するか、心もとない。

全国で緊急事態宣言を発出しながら具体的な感染予防対策は地方自治体任せで、政府は自粛要請一点張りの責任回避の姿勢を垣間見せてきた。具体的な対策は、地方自治体の首長に委ねられたが、各地で地域事情を踏まえて危機意識を持った対応が際立った。

菅

タクシー業界は、菅新内閣発足を契機として、形骸化して効率的なタクシー事業運営を妨げているような規制や、地域事情を斟酌しない画一的な規制の存在など、現行のタクシー事業規制のあり様を改めて見直し、点検してはどうか。

その理由は、現状有姿で何とかタクシー経営を維持したとして、はたしてアフターコロナに向けて事業の将来展望が開けていくのか、という懸念である。この際、タクシー業界自らが「国民のために」役立つタクシーであり続けながら、経営的にも成り立つために、目線を変えた観点が求められるのではないか。

その観点とは、ズバリ地方分権と考える。

現在、国土交通省が道路運送法に基づきタクシー事業を所管している。運賃や事業区域、増減車、営業所設置等の許認可権限を一手に掌握しているが、これを各地方自治体に移譲、分権するというものである。東京を始めとする六大都市、地方都市、そして過疎地域での人の移動のあり方や実態は千差万別で異なっている。人口1400万人の東京と、数万人規模の地方都市、さらに過疎地域が、同じ法律と規制によるタクシー事業として括られているのは大いに無理がある。

新型コロナウイルス禍において一律的な対応が後手に回る政府と、地域事情に沿って迅速に対応しようとする各地方自治体との差は歴然となった。法律に基づく制度運用を杓子定規に当てはめ、地域事情を勘案しないまま「これはダメ、あれもダメ」では、創意工夫によるタクシー事業の活性化と新たな展開は望めない。タクシー業界は、アフターコロナ時代を見据えて、既成の事業規制を総ざらいし、タクシー事業の将来を開くための地方分権への具体的な政策要求の策定に着手すべきではないか。そのことを現在進行形の新型コロナウイルス禍

騒動は、教えているように思えてならない。 (高橋 正信)

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次回Taxi Japan 376号 をお楽しみに!

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