論風一陣 パブコメ初日の応募900超えの烈風!(Taxi Japan 452号より)

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国土交通省は2月9日、「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送」(タクシー事業者による自家用車活用事業、以下、「日本版ライドシェア」という)の実施に向けたパブリックコメントを開始。その初日だけでタクシー関係では例を見ない900件超えの意見応募が殺到したという。

 通常なら多くて数十件という中で、前代未聞の大量の意見が寄せられたことは、政府の規制改革推進会議WGの委員も務めている川邉健太郎氏(LINEヤフー代表取締役会長)がSNS上などで広く一般に日本版ライドシェアに対するパブコメへの意見応募をアピールしたことが大きく影響しているとみられている。川邉氏は、安全を担保した上でのライドシェア全面解禁を求めていることで知られており、多くのパブコメは川邉氏の意向を踏まえた日本版ライドシェアに批判的で、その問題点を指摘する内容とみられる。



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 確かに日本版ライドシェアは、タクシー事業者による自家用車活用事業といいながら遊休タクシー車両もその対象にするという中身で、換言すればタクシー事業の乗務員に課している二種免許を規制緩和して、一種免許にすれば済むような内容だ。そのために全面解禁派は、日本版ライドシェアを「なんちゃってライドシェア」などと揶揄し非難している。「なんちゃって」を辞書で引くと、「ほんの冗談(でした)」または「本物・本当でない、模造(した)、偽物(の)」という意味の俗語とある。

 では、全面解禁派は、冗談でなく本当に本物のライドシェアを現行法規制の枠組みで実現できるとでも思っているのか。いわば現行法規制の中で国土交通省がライドシェア的な対応をしようとしたのが道路運送法78 条3号の援であり、それ以外では対応できないのは明白だ。そこで、勢いライドシェア新法制定による全面解禁を目論むという動きとなっているが、我が国の鉄板規制をベースとした法的枠組みと、社会受容性が低く自己責任論にネガティブな国民性を乗り越えて、果たして安全や利用者保護などを担保しながら欧米や諸外国と同レベルのライドシェア・サービスをわが国で実現できるのか、不確定要素が多過ぎて甚だ疑問である。

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 反面、欧米や諸外国並みの全面解禁されたライドシェアが実現した場合、これまで国民の移動の足を担ってきたタクシー業界では、ライドシェアによる供給増大の影響を受けた既存タクシー運転者の売上と給与が著しく減少することで大勢が退出、転職していく公算が大きく、そのことにより事業経営が立ち行かなくなる深刻な状況が予想される。

 日本版ライドシェアを吹き飛ばそうとするパブコメ900件超えの烈風に挙手傍観では、タクシー業界がなぎ倒されかねない。この烈風を跳ね返すため、タクシー業界労使が一丸となってライドシェア不要の解禁反対意見のパブコメ攻勢を、全面解禁派とみられる900件を大幅に上回る件数をもって一矢を報いてもらいたい。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 453号 をお楽しみに!

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