論風一陣 危急存亡の時にリーダー不在のカオス!(Taxi Japan 453号より)

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ライドシェア解禁に向けたこれまでの経緯を振り返る。

 昨年8月19日、菅義偉・前内閣総理大臣が長野青年会議所の記念講演会で、ライドシェア解禁について、「議論していきたい」などと肯定的な意向を開陳したのが発端。2カ月後の10月23日には衆議院本会議での所信表明演説において岸田文雄・内閣総理大臣が、「ライドシェアの課題に取り組んでいく」との政府方針を示し、タクシー業界に大きな衝撃を与えた。

 同11月22日のデジタル行財政改革会議では、岸田総理大臣が斎藤鉄夫・国土交通大臣に、ライドシェアを含む対応策について、「年末に報告」を指示。同日には、小泉進次郎・衆院議員が「超党派・ライドシェア勉強会」を発足させ、会長に就任した。

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 年末となった12月20日、デジタル行財政改革会議の第3回会合で、斉藤・国交大臣は、岸田総理大臣の指示に対する国交省としての回答として、道路運送法78条3号に基づく新制度として「タクシー事業者を実施主体として地域的・時間的・基幹的なタクシー不足を自家用車と一種免許運転者で補完する自家用有償旅客運送の活用拡大=日本版ライドシェア」を報告。同会議としての中間とりまとめに盛込まれた。

 一方、12月26日に開かれた第18回規制改革推進会議は①タクシーの規制緩和②自家用有償旅客運送の制度改善③タクシー事業者以外の者によるライドシェア事業のための法律制度についての議論Iの3点を要旨とする中間答申を取りまとめた。

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 これら前年のライドシェア解禁への動きに、多くのタクシー事業者は戸惑い茫然と推移を見守るばかりの状態が続いていた。そこに2月26日の第5回「超党派・ライドシェア勉強会」において、規制改革推進会議WGの委員を務める川邉健太郎氏(LINEヤフー会長)が、同WG専門委員の国峯孝祐弁護士との連名で、「ライドシェア新法の必要性について」と題してライドシェア新法案を提起した。いまの流れから、この新法案を叩き台に立法化の動きが加速することが予想される。

 ライドシェア解禁、事業化が進展していけば、移動需要のパイは限られているのだから、供給過多によりタクシー事業の縮小、衰退は避けられない。

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 川鍋一朗・全タク連会長は、ライドシェアへ新規参入を目論む大手配車アプリ会社の経営者で大株主。タクシー事業の維持・発展を期す見識や力量のある、業界全体の利益を意思統一して取り組むことの出来るリーダーが不可欠であるにも関わらず、不在と言える状況だ。ライドシェア全面解禁に向けて為されるがまま、ただ手をこまねいていていいのか。タクシー事業の危急存亡の時を目前にして、それは許されないはずだ。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 454号 をお楽しみに!

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