論風一陣 タクシー日本一の傑物黒土始氏の勇退!(Taxi Japan 410号より)

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第一交通産業の黒土始・代表取締役創業者会長は4月6日、福岡県北九州市の本社で記者会見を開き、6月下旬に開催予定の定時株主総会を以て取締役を退任し、相談役となって経営の第一線から勇退することを表明した。黒土氏は、大正11年(1922年)1月31日生まれで今年100歳を迎え、新型コロナウイルス禍が一段落したのを機に勇退する。

記者会見で、黒土氏は「昭和35年(1960年)に創業して以来、100歳を迎えるまで生涯現役をモットーに、経営の最前線に立って第一交通産業を牽引してきた」として、「後事の一切を田中亮一郎社長に託し、田中社長の舵取りにより新たな船出を迎える」と語った。

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その上で、「このタイミングで勇退し、後進に道を譲るとともに、私自身は、これまで以上に地域社会や経済発展に尽力しようと思い立った。この勇退を機に、お客様や地域社会へ更なる恩返しをしてまいる所存」などと述べ、100歳にしてなお前向きに情熱を燃やしている。

黒土氏は、昭和35年(1960年)4月7日に小倉市(現北九州市)を事業区域にタクシー5台で新規免許を取得、38歳であった。爾来、タクシー事業のM&A(合併・買収)を積極的に展開し、平成14年(2002年)のタクシー規制緩和による増車もあって保有総台数が前代未聞の1万台を超えてもなお拡大を続けたが、タクシー適正化・活性化特措法の施行で減車のやむなきに遭遇し、現状は、保有8759台(21年6月末)となっている。

それでも、「日本一のタクシー会社」を標榜している東京大手の日本交通グループにしてもタクシー保有は4296台でフランチャイジーの業務提携会社の2643台を合わせても6939台であり、第一交通産業が突出した保有車両規模トップで、全国を網羅しながら事業展開している唯一のタクシー事業者なのは周知の事実である。

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そして22 年前の平成12年(2000年)4月には福岡証券取引所に株式を上場。その後も全国でタクシー保有台数トップの座を維持してきた。現存するタクシー事業者で株式上場は、東京大手4社の一角である大和自動車交通と第一交通産業の2社のみだ。

大正、昭和、平成、令和の激動を生き抜き、全国規模で事業展開する保有台数ナンバーワンのタクシー会社である今日の第一交通産業を創業から一代で築き上げた黒土始氏。もう二度と出現しないであろう不世出のタクシー経営者であることは間違いない。黒土氏の勇退は、労働集約産業の典型といわれてきたタクシー事業が100年の節目を超えて、新たなモビリティー時代の幕開けを予感させるものとの感慨を抱いた次第である。

(高橋 正信)

 

次回Taxi Japan 411号 をお楽しみに!

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