論風一陣 明快で説得力ある新しいコンセプトを!(Taxi Japan 409号より)

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タクシー・バス専門紙「東京交通新聞」3月21日付(第3015号)紙面に「特集都内個人タクシー野球開幕コロナ吹き飛ばす球春到来」の見出し記事が掲載されていた。

 その中で、都内の7連盟を勝ち抜いた7チームで優勝を争ってきた全都個人タクシー野球大会が今年、参加チームのメンバーがそろわないことを理由に1連盟が不参加となり6チームで争うことになったと報じている。このことは、個人タクシー事業者数の激減傾向と高齢化の高止まりという、個人タクシー業界が直面している課題を象徴している。

 東京都特別区・武三交通圏の個人タクシー事業者数は、最近では1997年度の1万9027事業者がピークで、その後はタクシー規制緩和実施直前の2001年度で1万8798事業者、2005年度が1万8229事業者と漸減傾向だったが、2009年10月1日にタクシー特措法が施行されて新規許可がストップすると、個人タクシー事業者数の減少傾向が加速。2010年度1万6307事業、2015年度1万3501事業者、2020年度1万696事業者となり、このところは年間平均で約600事業者の減という状況だ。直近の2022年2月末には1万268事業者となっており、1万の大台割れが目前に迫っている。さらに、都内個人タクシー事業者の平均年齢は64.2歳と高齢化も進んでいる。

 
そうした中で、国土交通省は本年1月に特別区・武三交通圏などの準特定地域において個人タクシーの新規許可を認める一方で若返りを促進するパッケージを発表した。個人タクシー業界は減少し続ける個人タクシー事業者数に一定の歯止めをかける措置として歓迎しているものの、一方で、このパッケージがコロナ禍対応の暫定新規許可に加え75歳以上の高齢事業者の廃業者数と同等の新規許可という時限措置で、従来からの譲渡譲受で上積みができなければプラスマイナスでは増減ゼロということになる。あくまで高齢事業者にターゲットを絞った若返りの促進と組織のスリム化が主たる目的で、個人タクシー事業者数の減少そのものの本格的な抑止策とは別物だ。
 
 
そして単純計算すると1万268という都内個人タクシーの事業者数は、現在の毎年平均600という減少傾向が続くと仮定すると、18年を待たずに消滅してしまう計算になる。ずいぶん乱暴な試算ではあるが、個人タクシーがおかれている現状の厳しさをむしろ象徴しているといえまいか。

 個人タクシーが誕生した当時の、法人の神風タクシーが社会問題化していた時代背景は無くなり、法人タクシー乗務員に個人タクシー事業者という夢と希望を与えるという政策的な意義も薄れつつある。しかし、このまま個人タクシーの存在感の低下と消滅を待つ愚は何としても回避しなければならない。そして現状の中で改めて個人タクシーの存在意義を問い直した上で、明快で説得力のある新しい個人タクシーのコンセプトを打ち出して社会に訴えていってもらいたい。(高橋 正信)

 

次回Taxi Japan 410号 をお楽しみに!

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