論風一陣 二極化加速のタイムスリップに備えよ!(Taxi Japan 412号より)

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全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)はこのほど、都道府県別の4月の新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化(サンプル調査)をまとめた。それによると4月の全国平均は、コロナ禍以前の2019年同月と比較して76.6%(23.4%減)となっている。直近では、2月が56.9%(43.1%減)、3月が68.0%(32%減)だったことから、3月下旬にまん延防止等重点措置が全国で解除されて以降、4月実績の19年度対比が3月に比べて8.6ポイント上昇するなどタクシー需要の回復傾向が顕著となっていることが分かる。
 
政府のコロナ対策でも、飲食店や大規模レジャー施設などへの入場制限の緩和、移動制限の解消に踏み切るなどアフターコロナに向けた舵取りに方針を転換している。特に新型コロナウイルスの水際対策である外国人観光客の入国制限を6月1日から現行の1万人を2万人に引き上げ、さらに6月10日からは団体ツアーに限って98の国と地域からの観光客の受け入れを再開することにして、いよいよインバウンドの本格的な再開を目指す方向となっている。タクシー業界はこの3年間、コロナ禍による大きな経営的ダメージを受けてきたが、このところの感染拡大の鎮静化でタクシー需要は回復傾向にあり、継続的なタクシー事業経営の正常化を願いたい。改めてサンプリング調査結果をみる。
 
 
全国47都道府県のうち2019年4月実績に対して宮城県が130.9%、福島県が114.8%となっているが、これら2県は3月16日に発生した最大震度6強を観測した地震の損保会社による調査特需の影響が大きく、地域のタクシー需要の実態を反映しているものとはいえないだろう。翻って東京をみると、平均では79.6%だが、顧客確保を進めてきた最大手事業者はコロナ禍以前の営収実績を既に上回っている。
 
一方、保有50台前後で大手のフランチャイズや無線協組に加盟していないタクシー事業者では、一定の営収の回復はあるものの稼働率がコロナ禍以前に比較して極端に低下し、営収全体の回復がおぼつかないのが実態だ。さらに各種の助成や公的負担の猶予、先送りなどの措置も終了しつつあり、傷ついた財務体質はさらに一層の厳しい状況を強いられ、すでに限界に来ているという。
 
タイムマシーンで時間を先取りするようなコロナ禍の長期化によって、勝ち組と負け組との格差がさらに拡大する二極化加速の状況が待ち構えている。タクシー需要がコロナ禍以前の水準近くにまで戻ったとしても、経営環境が旧に復することはあり得ない。タクシー事業者には、コロナ禍でタイムスリップのように加速した変化に、フレキシブルかつ創意工夫を凝らしてアフターコロナを見据えた対処が求められる。
 
(高橋正信)

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次回Taxi Japan 413号 をお楽しみに!

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