論風一陣 川鍋会長の無意識かつ軽率な発言に喝!(Taxi Japan 413号より)

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東京ハイヤー・タクシー協会、全国ハイヤー・タクシー連合会の会長を務める川鍋一朗氏のある発言が、当面する都内タクシー運賃改定に対する行政の判断によっては、悪影響を及ぼしかねない内容があり見過ごすことができないことを指摘する。
 
それは、6月1日の全タク連正副会長会議席上で、まん延防止等特別措置が解除されて以降のタクシー売り上げの状況ついて、川鍋氏は自社グループに言及しつつ「乗務員に聞いてみても、コロナ禍前の賑わいに戻って来ているようだ。稼働1台当たりの売上もかなり戻って来ている」などとコロナ禍前の売り上げをすでに上回っていることを背景に述べたことだ。全タク連まとめの「新型コロナウイルス感染症の影響による営業収入の変化」の19年同月比の4月サンプル調査によると、全国平均は76.6%の回復で、東京は79.6%だった。5月も回復傾向にあるとは言え、全国的には回復の途上というのが実態である。正副会長会議は、サンプル調査とは異なり自社の売り上げが戻っていることを自慢する場でないのはもちろん、全タク連の会長職として、疲弊する地方の中小零細事業者も含めて業界全体を俯瞰する立場からも不適切な発言である。さらに、不適切な自慢話というだけで見過ごす訳にはいかない。その理由は次による。
 
 
本紙本欄2月28日付け第407号で、「そも原価計算対象事業者とはなんぞや!」の表題で運賃改定による原価計算対象事業者の選定に問題ありと提起。東京都特別区・武三交通圏における選定された原価計算対象事業者の営収が以前から、全社計の数値を下回っていることにクレームをつけた。そして国交省が定めた運賃改定手順に基づいて原価計算対象事業者の適切な選定を求めた。
 
運賃改定の審査は、一定の基準に基づいた標準能率事業者の選定、そこから車両台数規模別に抽出した原価計算対象事業者の経営収支の数値を元に行われることになっており、そして運賃改定率が決定される。東京都特別区・武三地区の運賃改定については、コロナ禍の影響を除外した2019年実績が実績年度として適用され、運賃改定審査が関東運輸局において進行中だ。
 
運賃特別区・武三の運賃改定事案は、消費者庁との協議に加え、最終的に物価問題に関する関係閣僚会議へ付議される、いわば政治案件だ。最終的な改定率に、どこで、何が影響するか分からない、とも言え、慎重さが求められる。去る5月25日の東タク協総会席上で川鍋氏は、「運賃改定については粛々と進めたい」とする意向を示したが、それに対して自社の高営収を自慢するような発言は、無意識だったにしろ軽率のそしりを免れないはずだ

(高橋 正信)

 

次回Taxi Japan 414号 をお楽しみに!

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