論風一陣 他社のアプリデータ侵害の禁じ手に喝!(Taxi Japan 394号より)

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東京大手・日本交通のグループ会社で、タクシー配車アプリを運営するモビリティ・テクノロジーズ(中島宏社長、東京都千代田区)はさる6月7日に「個別アプリ配車情報等の取り扱い不備についての調査結果」を公表した。その調査結果は、「日本交通の担当者が他のタクシー会社のアプリ配車情報を閲覧していた」とするもので、いわば同業他社の営業に係る守秘されるべき情報を日本交通グループの営業に利用できたことを暗に認める内容で、タクシー配車アプリをリードしてきた同社への信頼を損ねる致命的な行為の発覚にタクシー業界は大きな衝撃を受けている。  

GOアプリイメージ

調査結果によると、モビリティ・テクノロジーズは2017年2月当時、タクシー配車アプリ「JapanTaxi」(事業統合前のJapanTaxiが運営)に加盟していたタクシー会社の配車実績等の情報(客先の氏名、電話番号、メールアドレス、配車日時、配車地点、タクシー会社名などの「配車等関連情報」)のアカウントを日本交通の担当者に付与した際に、他社の配車等関連情報の閲覧を制限する設定をしていなかったというもの。この行為は、すべき設定を怠ったということに止まらず、日本交通の担当者が、同業他社の特定顧客の各種情報や配車実績などの営業に係る守秘されるべき情報を自由に閲覧、侵害することが可能な状態を放置していたことが明らかな不正競争防止法にも抵触する違法行為だといえる。

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その原因について、調査結果では、①現場担当者の個人情報保護に関する理解不足 ②個人情報を取り扱う部署における情報共有・連携の不備 ③各種社内規定の運用上の問題ーーーとしている。そして再発防止策として、全役職員に対する継続的な教育・研修、個人情報の保護に関する組織体制の拡充、社内規定の運用状況の点検ーーーなどを挙げている。しかし、今回の不祥事は、現場の担当者や取り扱う部署に限定して惹起できる問題ではない。誰が同業他社の配車関連の営業情報を閲覧・侵害できるようなアカウント作成を命じたのか。今回の不祥事を惹起した人物を特定もせずに処分のないまま、おざなりな再発防止策で事の本質をうやむやに済まそうとする意図は明らかであり許されない。

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 日本交通グループは、タクシー配車アプリの開発と軌を一に2014年に大阪に進出、翌2015年に京都、2016年に神戸に進出するなど、東京を中心とする首都圏以外の地域にもタクシー事業を拡大していった。さらに都心部における積極的な企業買収やフランチャイジーの加入拡大にも躍起になってきている。その背景にタクシー配車アプリによる配車等関連情報を武器にした営業戦略を展開してきたということなら、企業ぐるみによる唯我独尊で違法ともいえる寡占化戦略として看過できない。日本交通とモビリティ・テクノロジーズは、事の重大さに鑑みすみやかに責任の所在を明らかにするとともに、タクシー業界が納得できるような対応を示さなければ信頼回復はおぼつかないことを肝に銘じなければならない。

(高橋 正信)

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次回Taxi Japan 395号 をお楽しみに!

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