論風一陣 全タク連は乗務員不足解消に取り組め!(Taxi Japan 415号より)

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タクシー業界全体の乗務員不足が深刻だ!

全タク連労務委員長も兼務する東タク協の武居利春・労務担当副会長は、先の東タク協理事会において「東京都特別区・武三の乗務員数は4万9700人しかおらず、(法人タクシー)2万3700台に対して1台当たり1・8人を切っている。さらに75歳以上の乗務員が4000人以上の勤務」などと指摘した上で、京都や新潟、九州全体の状況を例に出して、これらの地域では保有台数に対して1車1人を割り込むという深刻な乗務員不足の実態にあることに警鐘を鳴らした。

同時に、高齢化の進行は、東京はまだいい方で、全国の多くの地域が既に”限界集落“と言われてもおかしくない状況である。限界集落とは「過疎化や高齢化が極端に進んだため、共同体の維持が困難化している集落。集落居住者の半数以上が65歳以上の高齢者であることが目安」と定義されており、同様の危機的状況にタクシー業界はある。

全タク連がまとめた「年齢階層別・都道府県別乗務員数令和4年3月末」の統計資料をもとに全乗務員数と65歳以上の乗務員数の占める割合をチェック。それによると、東京をはじめ16都府県が全乗務員に対して65歳以上が超半数以下で、31道県が過半数となっていて事実上の”限界集落“の実態が明らかになった。社会構造とタクシーの業態を同一視するのは無理があるとしても、多くの地域がタクシー事業を維持していく限界点に差し掛かっているといえば言い過ぎであろうか。

これまで乗務員の確保や高齢化対策などの労務管理は基本的に各事業者に委ねられ、業界全体での取り組みは限定的なものだった。それは、賃金・労働条件などが各事業者間で異なる中で業界団体としてまとまった統一的な対応が取れないというジレンマが阻害要因としてあるからだ。それを理解した上でも、現状の乗務員不足と高齢化の急速な進行は、タクシー業界全体として喫緊に取り組むべき課題といえる。

全タク連には、乗務員確保をメインに限界集落化への脱却に特化した特別委員会を設置し、効果が見込める施策を講じてもらいたい。既に、乗務員採用で先行する東京大手の国際自動車や日本交通を見習って東京の中小事業者や地方の大手・中堅事業者の中にも新卒乗務員の採用に取り組む動きが出ており、限定的ながらも乗務員の平均年齢上昇に歯止めをかける効果が出ている。

しかし、このまま事業者任せで放置すれば、全タク連の川鍋一朗会長が標榜する「タクシーの進化」の波及は望むべくもなく、退化・衰退は避けられない。全タク連として乗務員確保のケーススタディーを全国から持ち寄り、共有化することから速やかに取り組んでもらいたい。

(高橋 正信)

 

次回Taxi Japan 416号 をお楽しみに!

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