全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)が7月13日に都内千代田区の「自動車会館」で開催した正副会長会議に、国土交通省の人事異動による新旧の自動車局長と旅客課長、さらに大臣官房公共交通・物流政策審議官および自動車局担当の大臣官房審議官という、タクシー行政を担当する新旧の国交省幹部6人が全タク連会議に揃って出席するのは、異例中の異例である。
地方運輸局では、局長など幹部の人事異動があった場合、全タク連傘下の都道府県協会の幹部が現局を訪問し挨拶するのが慣例となってきた。監督官庁から利害関係者である事業者団体の会議に人事異動後の新旧幹部が顔をそろえて出向く次第は寡聞にして知らない。
当日の会議で川鍋会長は、出席した国交省幹部をして「オールスター」と称した上で、元自動車局長の藤井直樹事務次官が加わればトランプ・ポーカーゲームの最高の役である「ロイヤルストレートフラッシュになる」と持ち上げた。最高の敬意を表明したつもりの川鍋会長には、国交省の幹部をカードの絵札になぞらえることが、上から目線で非礼だということに思いを致さなかったのだろう。
さらに川鍋会長から、転任する祓川直也・前自動車局長と大辻統・前旅客課長の2人にこれまでの正副会長会議への出席などに感謝して、自身が経営する東京大手・日本交通の金色の屋上表示灯の置物をプレゼントした。本来、公務員は利害関係者から物品の贈与を受けることは、国家公務員倫理法の倫理規程で禁止されているが、「広く一般に配布するための宣伝用物品や記念品」を受け取ることは容認されているので、この規定への違背はしていない。だが、全タク連の正副会長会議という公の場で、しかもこれまでの正副会長会議への精勤ぶりへのお礼になぜ日本交通の屋上表示灯なのか?全タク連に結集するタクシーは日本交通だけでは、もちろんない。公私混同の誹りは逃れられないのではないだろうか。
今回プレゼントされた日本交通の金色の屋上表示灯は、自社の優良乗務員対象の表示灯であり、それを国交省幹部に手渡すのは、上から目線でピント外れの行為と感じてしまうのは筆者のみであろうか。
全タク連が、東京大手・日本交通傘下の子会社的な扱いならともかく、今回の成り行きは、主客転倒と言わざるを得ない。それにしても上から目線の非礼やピント外れ、そして自己・自社中心主義の言動は、川鍋会長自らが真摯に顧みるべきだ。全国のタクシー事業者を束ねる全タク連会長として、あえて苦言を呈する次第である。
(高橋 正信)
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