論風一陣 コロナ前の営収回復&低稼働率の実態!(Taxi Japan 417号より)

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東京ハイヤー.タクシー協会(川鍋一朗会長)はこのほど、東京都特別区.武三地区における原価計算対象事業者の7月分および傘下会員全事業者の6月分のタクシー輸送実績をまとめた。特別区.武三地区の原計対象事業者の実働日車営収が全社計の実績を従来から下回り続けているという変則状況にあることから、ここでは、全事業者計の輸送実績で検証してみた。

それによると、特別区.武三地区では、既に5月の実働日車営収で4万9800円を記録していて、コロナ禍前の令和元年5月の4万9384円をついに上回ったのであるが、6月についても5万2921円で令和元年同月実績の5万1850円を5月に引き続いて上回った。しかし、ここでアフターコロナと手放しで喜んではいけない。その実態をみる。令和4年6月の全社輸送実績では、総売上は264億円だったが、令和元年6月の307億円との比較では、43億円14%下回っている。6月の稼働率は67.4%で、令和元年6月の75.6%に対して8.2ポイント低下。その結果、総売上がコロナ禍前との比較で14%下回りながらも、実働日車営収についてはコロナ禍前を上回ることになった。

ちなみにコロナ禍の真っただ中である令和2年と同3年の6月実績は、令和2年が実働日車営収3万7980円で総売上165億円、稼働率58.9%、令和3年が3万9157円で192億円、65.6%となっている。コロナ禍前から総売上が半減〜6割近くにまで減少し、乗務員の離職で稼働率も大幅に低下するという大ダメージを受けた。そのことを踏まえると、今年6月の輸送実績の数値は、稼働率の低迷は続いているものの、アフターコロナを視野に入れられるところまで回復してきたとみることも出来る。

さらに総売上は、もう一段の回復を待つとして、注目すべきは稼働率が回復しない結果として実働日車営収がすでにコロナ禍前の水準を上回っていることだ。乗務員にとってはコロナ禍前の収入をすでに上回っていると推計できる訳で、稼働率の回復が無いままに総売上が回復していけばさらに収入が増加していく計算になる。いわばコロナ禍による需給調整の結果を乗務員が享受できている、と言うことも出来る。現在、特別区.武三地区ではタクシー運賃の改定要請をしているが、その要請理由のメインにある乗務員の賃金.労働条件の改善は、現状の需給調整機能が効果を発揮すれば賄えるという見方もあるだろう。

しかし実態は、乗務員不足による稼働率の低下から朝の通勤時などを中心に需要が集中する繁忙時間帯におけるタクシー不足の深刻化が懸念されており、タクシーが公共交通機関としてその役割を果たすためには、いかにも現在の稼働率やタクシーの供給力は心もとないといえる。その意味でも、乗務員不足解消という課題は、日本一のタクシーマーケットである東京都特別区.武三とて例外ではない。東京業界がリードしながら、乗務員不足の解消に向けて全国レベルで業界が総力を挙げて取り組むことを改めて求めたい。

(高橋 正信)
 

次回Taxi Japan 418号 をお楽しみに!

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