論風一陣 タクシーの近未来を拓く「タク放題」!(Taxi Japan 418号より)

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 一般社団法人静岡TaaS(清野吉光代表理事)は、7月1日からエリア限定のタクシーの月額定額乗り放題サービス「タク放題」による実証実験を静岡市内で開始し、年内一杯までの6カ月間実施することにしている。

 「タク放題」は、静岡市街地北西部の3キロ圏内をエリアとして、平日の午前10時から午後5時までに限定。利用料金は、65歳以上が月8000円で、65歳未満は1万円(いずれも税込み)。車両運行は、静岡TaaSが市内のタクシー2社に委託し、基本的に各社1台ずつの計2台体制で運行している。(詳細は、本紙掲載の記事と清野氏のコラム第138回と第139回を参照)

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 筆者は8月22日、静岡市葵区にある静岡TaaS事務局を訪問し、清野代表理事に「タク放題」の実施状況を聞いた。平日のみ月20日のデータでも、会員が20回以上、最高で40数回を利用しているケースがあるとのこと。回数もさることながら、その行先が自宅から数百メートル圏内にある銀行や病院、郵便局、スーパーなどで、ほとんどが初乗り距離(静岡市内は普通車1.2キロ600円)以内で、特に300〜400メートルという超近距離利用が目立っていた。その意味で、「タク放題」は高齢化が進行していく中で、超近距離利用というタクシーの潜在需要を掘り起こしていると評価できた。  

「タク放題」は、タクシー事業の長期にわたる衰退傾向への危機感が背景にあるとみている。このところアフターコロナを見越して東京をはじめ全国各地でタクシー運賃改定の動きが活発化しているが、高度成長時代の名残といえる運賃改定による経営収支の改善策で、タクシー事業の衰退傾向に歯止めをかけられるかは大いに疑問だ。

 例えば、東京都特別区・武三地区と青森県地区、沖縄本島地区のタクシー運賃を初乗り運賃で比較する。特別区・武三が1.052キロ420円で1キロ換算399.2円、青森が1.2キロ で670円、同558.3円、沖縄は1.75キロで560円、326.5円となっており、青森の初乗り運賃は沖縄に比べて1キロ換算で231.8円、41.5%も高くなっている。10月から実施される最低賃金は東京が1時間1072円と最も高い。青森と沖縄はともに853円で同額だ。タクシー利用の地域差があるとはいえ、初乗り運賃単価と最低賃金とを比較しただけでも大きな差異があることが分かる。

タクシー事業の長期衰退傾向に歯止めをかけるには、運賃改定頼みではなく、潜在化しているタクシー需要を掘り起こすと共に、タクシー1台当たりの生産性を確保する抜本的な取組が求められているのではないか。その意味で、「タク放題」はその一助になり得ると信じる。引き続き今後の推移を注視したい。

(高橋 正信)

 

次回Taxi Japan 419号 をお楽しみに!

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