日本経済新聞2月4日付け朝刊の1面に、「タクシー運転手女性パート採用日本交通、人手不足で」の見出し記事が掲載されていた。こうしたタクシー業界の話題が日経新聞の1面欄に掲載されるケースはほとんど無く、まして、タクシー会社の取り組みが掲載されることなど寡聞にして知らず、疑問を感じながら記事に目を通した。
記事の内容は、①子育て中の女性などを対象にパート運転手を募集。1日5時間、週3日、シフト制で希望の勤務日と時間を選べる。時給1500円②パート乗務員は、配車アプリからの予約客に特化して対応することから流し営業は行わない③採用は、普通自動車免許取得後3年が経過していることが要件で、2種免許は会社負担で取得できるIなどとしている。
この記事を読んで、子育て中の女性などを対象としたパート乗務員採用の取り組みは、既に全国各地で散見されていて目新しさは無かった。そして流し営業をせずに、歩合制でない時間給なども他のタクシー会社で取り組む例があるものだ。つまり、タクシー業界からみると、ニュースバリューのない記事。今回のケースは、配車アプリ「GO」のMobilityTechnologies(MoT)と、「GO」陣営の中核・日本交通の直営子会社であるハロートーキョーの協業により、MoTが募集したパート乗務員を「GO」のアプリ配車専用車に時間給で乗務させる、というものだ。この見出しは、やはりピンとこない。
ではなぜ日経新聞1面記事なのか。
都内23区内を中心に取材活動をしている日経の記者は、日本交通の社名表示灯を装着したタクシーを毎日、数多く目にしているはず。台数でみると日本交通の社名表示灯を装着しているタクシーは、都内法人の実に6台に1台の割合だ。実働率を加味すれば、4~5台に1台。都内千代田区にある日経本社周辺の都心部を観察すると、実に日本交通の社名表示灯の車両が道路を席巻しているがごとしである。まして「GO」アプリの大々的な一般マスコミを利用したPR展開も相まって、日経記者が都内のタクシーは、日本交通関係が中心という受け止め方なのかも。タクシー業界内に身を置いていると感じない大きな変化を、一般利用者を代表するように日経記者が受け止めているとみるべきなのかもしれない。
つまりは、日本交通という大手タクシー会社がタクシー業界の最先端で進化しながら寡占化を強めいく中で、タクシー業界を代表しているように受け止められていることが背景にあるためではないか。あまりにも穿った見方のそしりは免れないが、筆者は、今回の日本経済新聞1面記事を見て、日本交通の一強時代がもうそこまで来ていると感じた次第である。
(高橋 正信)
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