論風一陣 低稼働率に支えられた過去最高営収額!(Taxi Japan 431号より)

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東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)がまとめた都内特別区・武三地区の原価計算対象事業者による実働日車営収によると、昨年12月は6万6590円と過去最高額を記録し、その後も1月は5万9182円、2月も6万356円と、昨年12月以降も6万円前後という高水準を維持している。

昨年11月実施の運賃改定に伴う原価計算対象事業者の入れ替え前の数字とはいえ、2月の6万356円は、コロナ禍前の2019年2月の実績4万8406円を24.7%も上回っている。昨年11月14日に14.24%の運賃改定が実施されたとはいえ、値上げに対する目立った利用者の逸走も見られず、改定率を大幅に上回る増収効果となっている。元来、「ヒマなニッパチ」と揶揄されるように、他の月に対して2月と8月は消費活動が冷え込むと言われているが、その2月でも6万円超えである。

そこで原計対象事業者の実働日車営収ではなく、全事業者の総営業収入でみてみる。全社実績による昨年12月の総営収は333億3958万9000円、実働率66.6%で、これはコロナ禍前の2019年12月の同353億368万4000円、75.9%との比較で、総営収はマイナス5.6%、実働率はマイナス9.3ポイントと、いずれも減少している。1月も、総営収でマイナス8.9%、実働率でマイナス9.3ポイントと、同じくコロナ禍前の同月実績を下回っている。

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このことから明らかなように、約3年にわたるコロナ禍で乗務員の離職が顕著になったことによる実働率の低下があり、また、総営収は未だ回復したとはいえない状態で、実働日車営収の数字だけでは手放しで喜べない。実働率が低下したまま、なかなか回復傾向を示さないことから、早朝などの一部時間帯や地域によってタクシー不足の状況が発生して社会問題化一歩手前と指摘されているほどだ。いつに実働率が旧に回復しないことによる。

都内の各タクシー事業者では、乗務員確保に努めているものの効果が上がっていないのが実情のようだ。コロナ禍による社会経済活動の変化で就労先のあり様が大きく様変わりしているのかもしれない。乗務員確保を個々の事業者に委ねるだけで大きな改善が見込めないのなら、タクシー業界全体で乗務員確保の実態を検証して具体的な対応策を打ち出し、すみやかに利用者ニーズに対応できる供給確保に取り組んでもらいたい。

働く乗務員にとって過去最高の営収実態は、運賃改定の主眼である賃金.労働条件の向上に結び付いているのだから大いに歓迎だ。反面、利用者ニーズに応えられず、しかも総営収が低迷している実態は、これを放置すればタクシー産業の将来の発展を阻害する種となることは明らかだ。東タク協執行部には、すみやかに業界あげての乗務員確保策への取り組みを求めたい。

(高橋正信)


次回Taxi Japan 432号 をお楽しみに!

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