論風一陣 聞く耳なく硬直化した官僚統治を憂う!(Taxi Japan 432号より)

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岸田文雄氏は一昨年10月に第100代首相に就任した当初、「特技は人の話をしっかり聞くこと」と「聞く力」をアピールしていた。人の話をしっかり聞くことは、為政者として必要欠くべからざる資質といえる。それは、なにも最高権力者に限らず、広く人としても具備しておくべき素養のひとつであることも確かだ。

本紙前号で報じた「チームネクスト第32回セミナー」の見出し記事の中で、代表世話人である貞包健一・三ヶ森タクシー社長の冒頭あいさつを、歴代の国土交通省幹部はどのように受け止めるのであろうか。むしろ聞く耳など持たないのではないか、との想念が脳裏をよぎった。貞包氏の冒頭あいさつは、次の2点に要約される。

一つは、「特に要望したいことは、遠隔点呼を(資本関係の無い)会社間でも出来るようにする。配車専用会社を設立した中小事業者間同士による共同配車への取り組みに国の補助金が利用できない。タクシーが生き残っていくための制度改革を提案していく」

もう一つは、「(国交省の森哲也旅客課長から)以前に提出した規制改革推進会議への提案についての話を聞きたいということで、内容を説明した上で意見交換をした。(こちらの話をよく聞いてくれて)従来の国交省旅客課長のイメージとは大きく違うと感じた。今のうちに要望できることは、要望しておいた方がよいなと思っている」

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前段は、地方の中小タクシーが生き残っていくための障害として、岩盤規制を背景とした前例主義で硬直化した当局の聞く耳を持たない行政姿勢がある、と訴えているように聞こえる。

後段は、2017年10月の規制改革推進会議に貞包氏が、「多様な運転手が旅客運送サービスを提供する新たなタクシー事業の実現」を提案した内容を、国交省の森旅客課長の求めに応じて内容を説明して意見を交換したというもの。そのことにより「聞く耳」を持っている森旅客課長の在任中に要望できることはしておこう、と言っている。如何にこれまでの国交省幹部が地方事業者の意見に聞く耳を持ち得なかったか、ということの証左である。

この貞包氏の提案に全タク連の川鍋一朗会長が、「自家用ナンバー車両での営業」という言葉尻をつかまえて強く反発。結果的に貞包氏は、地元で業界役職を実質的に更迭されたのだった。

問題は、国交省幹部の聞く力の無さというより、そもそも地方の中小タクシー事業者の話を真正面から聞くスタンスが無いのではないか。日本経済は、失われた30年間の上、少子高齢化の進行で、将来展望を見通せない状況にあるが、それは地方の中小タクシー事業者も同じだ。聞く耳を持たない硬直化した行政姿勢が、その遠因のひとつにあるのではないか。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 433号 をお楽しみに!

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