論風一陣 ライドシェアと自動運転タクのW衝撃!(Taxi Japan 444号より)

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岸田文雄総理大臣は10月23日、衆院本会議での施政方針演説で、「地域交通の担い手不足、移動の足不足といっ深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んで行く」などと述べ、ライドシェア導入に向けた検討を進める政府方針を表明した。
 
背景には、新型コロナウイルス禍において進行したタクシー運転手の減少によって、一部の時間帯や場所においてタクシー不足によって著しい移動制限の実態が発生しており、そこにインバウンドの外国人観光客の増加が拍車をかけ、こうした事態が、深刻な社会問題化の様相を呈している。これらの状況を解消するためとして、菅義偉前首相や河野太郎デジタル大臣、小泉進次郎元環境大臣らがライドシェアの検討を推進する見解を表明していたが、そうした中で、岸田総理が政府方針として正式にライドシェア導入の検討を打ち出されたことは、タクシー業界にとってライドシェア解禁前夜を予感させる衝撃となっている。
 

一方、本田技研工業と米自動車大手ゼネラルモータース(GM)、GMの自動運転開発子会社であるクルーズホールディングスLLCの3社はこのほど、2026年初頭に東京都心で自動運転タクシーサービスを開始するため、サービス提供のための合弁会社を2024年前半に設立する基本合意書を締結したと発表した。

ホンダとGMという日本とアメリカの大手自動車メーカーが、3年後には東京都心で自動運転タクシーのサービスを開始することを表明した。タクシー事業は、道路運送法において一般乗用旅客自動車運送事業と規定され、人が自動車を用いて人の移動を有償で担うことを前提にしているが、すでに準備が進められている自動運転タクシー用の車両には、運転席が存在しない。つまり「人が人を運ぶ」から「車両が自動で人を運ぶ」への大変革といえる。ライドシェアと自動運転タクシーのダブル解禁は、その制度設計によっては、タクシー事業のあり様、そして既存のタクシー業界の存在意義を否定し、消滅させかねない極めて深刻な成り行きといえる。

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ライドシェア解禁問題ではこれまで、運行管理や整備管理の主体の問題、さらにはタクシーの二種免許に対してライドシェアは一種免許で人を有償運送することの是非について論議されてきた。それが3年後に自動運転タクシーが東京都心で営業が開始されるようなことになれば、そもそも運転免許の存在そのものが無用の長物となる。人による運転を前提とした道路運送法上の一般乗用旅客運送事業を過去のものとし、自動運転できる車両を移動の道具としてシェアしながら人が活用するという事業形態に大きく様変わりする、といえば言い過ぎだろうか。

アメリカや中国において先行するライドシェア解禁と自動運転タクシー導入の動静は、日本においてもタクシー事業の存在を脅かし、これまでに経験したことのない重大かつ深刻な岐路にタクシー業界が立たされていくことを意味している。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 445号 をお楽しみに!

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