今号をもって本紙の年内発行は最終となる。この1年を本欄「論風一陣」で振り返り、総括する。
昨年後半から新型コロナウイルス禍における政府の硬直的な感染症対策が緩和され、本年はアフターコロナが本格化。タクシー業界においても全国で運賃改定が進む中、旺盛なリベンジ需要にも支えられて、コロナ過の影響が残る乗務員不足による稼働率の低下に見舞われながらも、都市部を中心に実働日車当たりでは高営収の恩恵を受けているという状況だ。
そうした中で、本欄では「予感される日本交通Gによる一強時代!」(2月10日付)、「数字が示す日本交通G一時代の到来!」(3月10日付)を掲載。東京都特別区・武三交通圏の全タクシー車両の実働日車営収が平均6万円を破するという高営収の中において、実に上位50 社のうちの28社が日本交通と直営子会社、およびフランチャイジ会社が占めており、そればかりか、上位の日本交通の直営子会社に至っては高稼働率を誇っており、低稼働率でコロナ禍前の総営収を確保できていない大半の他社をしり目に高収益を確保していたことを論じた。
「唐突な一種免許でタクシー乗務の提案!」(6月10日付)では、全タク連会長で日本交通代表取締役会長(当時)の川鍋一朗氏が、タクシー業界に事前の意向打診なく「アプリ配車に限って二種免許取得までの間における一種免許+講習でのタクシー乗務」(いわゆる川鍋プラン)で、政官界に根回しに動いたことが発覚。業界全体が、アフタコロナによる旺盛な需要の中で如何にして稼働率を回復させようかとしているところに、「ライドシェアとタクシーとの垣根をタクシー業界自らが低くするもの」として、川鍋氏に冷や水を浴びせられた格好だった。
それが現実のものとなってきたのが、「川鍋会長がライドシェア解禁論を誘引!」(9月10日付)、「イコールフッティングに本音がポロリ!」(9月27日付)。川鍋氏は、イコールフッティング論が、ライドシェアの誘因となる可能性があることを承知の上で、各種のタクシー事業の規制を緩和することで、自らの優位性を活かした日本交通グループの1強体制を盤石にしようというのが本音で、それを目指して画策していることを論じた。
その後、「GOがライドシェアアプリとの2 刀流!」(10月10日付)、「ライドシェアと自動運転タクのW 衝撃!」(10月31日付)、「改めて貞包提案の見識、先見性に注目!」(11月10日付)、「断固RS阻止にタク労働者は決起せよ!」(11月27日付)、「RS旋風に負けずに自信と誇りを持て!」(12月10日付)と、タクシー業界の死活問題を孕んでいるライドシェアについて連続して論じた。
川鍋氏に対しては、「全タク連の会長としての資質、見識を問う!」(7月10日付)と警鐘を鳴らしたが、結果して無駄であった。全タク連会長でありながら露骨な自社利益至上主義の姿勢は、ライドシェア解禁を誘引し、地方や中小零細のタクシー事業者を切り捨て、全国のタクシー業界存続への重大な危機を招く背信行為であったと、改め指摘しておきたい。
(高橋 正信)
次回Taxi Japan 449号 をお楽しみに!
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