論風一陣 タクシーによる移動確保策へ舵を切れ!(Taxi Japan 450号より)

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東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)は年明け早々、これまでのライドシェア断固阻止の業界コンセンサスを棚上げして、「日本型ライドシェア」実施に踏み切ることを発表した。

昨年来のライドシェア解禁論議の発端は、コロナ禍による乗務員減少とそれに伴うタクシー不足にスポットを当てたものだ。河野太郎・規制改革担当大臣は「守るべきは規制ではなく、国民の移動の自由だ」と啖呵を切ったが、当時、タクシー不足についての具体的なデータが提示されないままに、印象操作で論じられてきたことに違和感を覚えたものである。タクシーの供給量は一体、コロナ禍前と後でどれだけ減少しているのか。本欄では、東京都特別区・武三交通圏の昨年11月の東タク協まとめによる加盟全事業者計の輸送実績と、同じくコロナ禍前の2019年11月分を比較検証してみる。

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それによると、昨年11月の実働率は67.5%でコロナ禍前の2019年11月が75.7%で8.2%減。タクシーの車両台数ベースでみると、延実働車両数(日車)で昨年11月が49万6261台、2019年が同59万3019台で、9 万6 7 5 8 台の減。1日平均で3225台分の供給がコロナ禍前に比べ減少している。つまり1日当たり3 2 2 5台、16.3%分に当たるタクシー供給輸送力の減少が都民の移動の自由を奪っているということになるかもしれない。反面、迎車回数は昨年11月の303万9745回に対し、2019年は174万7163回で、129万2572回、1日当たり4万3085回の大幅増がみられ、利用者サイドによる乗れないタクシーへの自衛策が採られていると解釈できる。

東タク協が公表「日本型ライドシェア」とはなんぞや。その中身を聞くと、なぜライドシェアと呼称するのか理解できない。タクシー会社が自家用車を保有する一種免許運転者を雇用して運行管理するなら、タクシーを規制緩和して乗務員として営業できるようにすれば良いではないか。そして眠っている遊休タクシー車両を使用すれば、自家用車を手当てしてドライブレコーダーなど新たな機器を装着するような経済的負担も回避できるはずだ。形骸化した様々なタクシー規制を緩和することで、1日3225台分の供給輸送力は、きっと瞬く間に確保できるハズだ。

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ライドシェアの語源は、ヒッチハイクにある。米国のようにヒッチハイクが普及、定着していない日本的風土の中で、新自由主義的なライドシェアが果たして受け入れられるのか。利用する側の意識調査や実証実験もしないままで、ライドシェアを解禁する、導入ありきでのこれまでの政府における論議の成り行きは覇道的で大いに疑問である。

政府関係者や所管官庁の幹部に訴える!

タクシー不足で国民の移動の自由が阻害されているというのであれば、まず取り組むべきは、タクシーによる移動確保策へ舵を切ることで、それこそが王道というものではないか。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 451号 をお楽しみに!

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