国土交通省は2月7日、交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会(部会長=塩路昌宏・京都大学名誉教授)の第1回会合を開き、その中で「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・一般ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱い」通達案を提示した。4月から法人タクシー事業者による日本版ライドシェアとして実施となる。
この通達案によると、①配車不能データ等に基づき実施可能な地域、時期および時間帯を限定して国交省が指定し、許可による2年更新制とする②一種免許ドライバーは過去2年間無事故・無違反を資格要件とし、タクシー会社が雇用して労働時間管理や研修を行う。自家用車等の運行管理もタクシー会社が行う③自家用車に加えて、遊休タクシー車両の使用も可能とし、車両整備や保険加入をタクシー会社に義務付ける。稼働可能な車両数は、実施するタクシー会社ごとの保有車両数が上限Iなどとしている。
そして運賃は、事前確定方式で原則キャッシュレス決済とし、タクシー運賃と同額を収受するという。一言でいえば、一種免許でのタクシー運行に他ならない。これのどこがライドシェアなのか。運行や車両に係る管理コストおよび安全を担保する責任の一切合切をタクシー会社に押し付ける一方で、運転者をタクシー会社の正規乗務員としては認めないのは、タクシー業界労使双方にとっていい面の皮ではないか。
当日の部会では、移動の足の不足問題に関して「タクシー不足といった単一原因論にせず、地域の交通政策と位置付けて議論すべき」との意見も出されたというが、これは、タクシー不足が解消してもライドシェア解禁の妨げにしない、との伏線といえ、タクシー不足を理由としながら、タクシー不足解消策を最終目的とせずに、タクシー業界をスケープゴートにして、あくまでもライドシェア導入を画策する推進勢力による政治工作だ。
アフターコロナ直後のような極端なタクシー不足も一部の観光地などを除いて大幅に緩和されている。過去のデータに基づいて日本版ライドシェアを実施すれば、需給関係は崩れ、正規のタクシー乗務員の収入は、コロナ禍以前の実績を大幅に割り込むことが想像に難くない。これまで国民の移動を現場で担ってきたタクシー乗務員に物心両面で大きなダメージを与え、同時に中小零細のタクシー事業者も危急存亡の時を迎えることになる。
このまま座して死を待つのか!国民の移動の一翼を担ってきたという自負と誇りをタクシー業界は保持しているのか。いま鼎の軽重が問われていることを全タクシー事業者は肝に銘じなければならない。
(高橋 正信)
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