先日、友人2人と都内中央区の銀座8丁目界隈を散策した。その時に都内タクシー会社に乗務員として勤務する友人の一人が、「銀座の乗車禁止地区でもライドシェアは客を乗せて問題ないのですよね」と尋ねて来た。その質問に筆者は生返事する中で次の思いを想起していた。
銀座乗禁地区の規制は、土・日・祝休日を除く日の午後10時から翌午前1時まで、指定されたタクシー乗り場以外でタクシーに客を乗せることをタクシー業務適正化特別措置法43条で禁止している、というもの。東京都特別区・武三交通圏で4月8日から始まった自家用車活用事業(=日本版ライドシェア、日本型ライドシェア)の車両は自家用車(自家用車扱いの遊休タクシー車両も含む)なので、当然、同法の適用外だ。
タクシー業務適正化特別措置法に基づき、東京と大阪、さらに横浜に設立されたのがタクシーセンターで、主な業務は、①タクシー乗務員になるための地理・法令に関する試験、研修業務②運転者の登録、運転者証発行業務③乗車拒否や接客クレーム、忘れ物の受付処理業務ーなどとしている。日本版ライドシェアのドライバーは、同センターの試験、研修業務をはじめ登録業務など一切が対象外で、無縁の存在となっている。
タクシーセンターは、1950年代に発生した無謀な運転をする神風タクシーが勃興したことを受けて大きな社会問題化したのを機に設立された。しかし、半世紀以上の時を経て神風タクシーという言葉すら知らない向きが大半となり、タクシー乗務員の接客やサービスレベルなどの質も当時と比べるまでもなく飛躍的に向上しているのが実態である。
タクシー業界は、タクシーセンターへの負担金として、例えば、法人タクシー1台当たり東京が3万500円、大阪が3万円、個人タクシーが東京1万5000円、大阪1万2000円、年間総額で東京が約10億円、大阪が約4億円の高額を負担している。タクシー事業者を拘束するタクシー業務適正化特別措置法は、すでに順法精神が徹底しているタクシーレベルの現状からいって、その役割は終えているといえる。さらに日本版ライドシェアをスタートした時点で、対象外の一種免許運転者が同じエリアで旅客を運送している実態となり、タクシー業務適正化特別措置法が意味を失い形骸化してしまっているといえまいか。換言すれば、東京、大阪、横浜に存在するタクシーセンターはその使命をすでに終えていると言えるのではないか。
タクシー業界としては、ライドシェア全面解禁の動きに対して、日本版ライドシェアを砦とする水際作戦で阻止したいところであり、今後の少子高齢化による人口減少などの社会経済環境の急速な脆弱化を見越して、タクシー業界がこの先も東京10億円、大阪4億円などを毎年負担し続けなければならないのか。すみやかにタクシーセンター廃止への論議を開始してもらいたい。
(高橋 正信)
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