論風一陣 RS全面解禁法制の先送りに油断大敵!(Taxi Japan 458号より)

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岸田文雄・内閣総理大臣は5月30日、菅義偉・前内閣総理大臣を議員会館の事務所に訪ねたのに続き、官邸に提言書を持参した公明党の赤羽一嘉・事故撲滅・持続可能な地域交通を実現するプロジェクトチーム座長(前国土交通大臣)、そして、斎藤鉄夫・国土交通大臣と河野太郎・規制改革担当大臣と相次ぎ会談、その結果、6月をメドとしていたタクシー事業者以外の者の参入を認めるライドシェア解禁の判断を先送りし、期限を設けずに検討していく方針とした。少なくとも年内での判断はなされないことになった。

同時に4月からスタートした自家用自動車活用事業(=日本版ライドシェア)の実施状況やその効果をモニタリング、検証した上で、制度の改善を進め、並行してライドシェア解禁に関する論点の検討を進める。このことによって一旦、ライドシェア解禁に向けた新法論議に歯止めが掛かることになった。

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これでひとまず安心だ、と胸をなでおろしてはいけない。

東京業界ではこれまで、ライドシェア解禁問題に絡んで、国土交通省が改正タクシー特措法に基づく特定・準特定地域の指定を全国レベルで今秋に解除して、タクシー業界への新規参入を自由にするとの話がまことしやかに拡散されて来た。その背景には、タクシー事業者に限定されているライドシェアの運行主体を全面解禁する動きに対処するために国土交通省がタクシー事業の参入規制を撤廃して門戸を開放、ライドシェア参入の条件としてタクシー事業許可の取得を義務付けることで、あくまでも道運法78条3号による日本版ライドシェアによる限定的なライドシェア事業として、国交省による所管という枠組みを確保しようというものだ。

この話が事実とすれば、大都市圏や観光地を中心にIT企業やレンタカー事業者など広範な業種からタクシー事業に新規参入することで競争が激化、中小企業中心の既存のタクシー事業者が衰退、現在のタクシー業界が消滅に向かう懸念は大きい。火のないところに煙は立たない、という例えもあり、「省益あって、国益なし」のこの種の話は、注意深く監視していく必要がある。

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さらに5月23日に開催された東タク協通常総会で川鍋一朗会長は、自身が代表取締役を務める配車アプリGOを引き合いに米Uberと比較して、「アルコールチェックもやっていない」と安全確保面から批判。その上で、GOについて、シフト変更の柔軟性、点呼を含む遠隔での運行管理、雇用契約などをアピールし、GOのライドシェアドライバーアプリの操作性についてスマホを手にプレゼンし、優位性を強調した。筆者は、国交省の特定・準特定地域の指定解除問題の話から、タクシー事業の許可を取得してライドシェアに新規参入してくるタクシー事業者以外の業者も、GOにとっては自社の日本版ライドシェア・プラットホームの販売対象になり得る、と思った。

これらの動きと、一方でライドシェア解禁派の巻き返しなど、多くの既存タクシー事業者にとっては油断大敵で、最大限の警戒、監視を怠ってはならない。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 459号 をお楽しみに!

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