全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)は6月25日、都内千代田区の「経団連会館」で第118回通常総会を開催し、「タクシー業界が利用者起点の『国民の足の確保』を推進する中、公共交通を破壊するライドシェア新法は不要」との決議を採択した。
冒頭の挨拶の中で川鍋会長は、政府が6月21日に閣議決定した「骨太の方針」においてライドシェア新法が先送りされたことに言及し、「現在は、第一・第二ラウンドが終わり、第三ラウンドが始まるところだ。ライドシェアに関して、我々が主張してきたプラットフォーマーは責任を負わないなどの指摘した内容を、すべて埋める形でのライドシェア新法案を作成してくると警戒している」とした上で、「全国の全社が1台でいいから道路運送法78条3号(日本型ライドシェア=NRS)をやってもらいたい。全国の自治体すべてでタクシー会社がNRSを運行していることが、年末に向けて唯一最大の武器となる」などとライドシェア新法対策を強調し、すべての会員事業者にNRSへの取り組みを要請した。
川鍋会長の要請は、日本型ライドシェアを防波堤としてライドシェアの全面解禁を阻止しようというものだが、果たしてそれが有効な対処方法といえるのか、はなはだ疑問だ。というより、ライドシェア全面解禁派は、既にタクシー不足をライドシェア新法の必要性の拠り所にしていないのは明らかだ。日本社会の少子高齢化・人口減少・深刻な労働力不足の逆風下において、抜本的な形で移動の自由を担保する決め手が見つけられない中で、スケープゴードとしてライドシェア全面解禁ありきを主張していると筆者はみている。
川鍋会長が主張する全国のタクシー会社でNRSを実施することが、ライドシェア全面解禁派へのブレーキになるとは思えず、むしろタクシー業界が自らの既得権益確保に動いていると見られるのが落ちではないか。
それよりも、この先の少子高齢化・人口減少にタクシー事業こそが、公共交通機関としてその役割を果たしていくべきで、そのことを業界内外にアピールすべきだ。100年以上、我が国のラストワンマイルでの移動を維持・担保してきたのがタクシー事業ではないのか。その矜持をもって、全タク連として「ライドシェア新法は不要」ではなく、「ライドシェア断固阻止」でなければならないはずだ。
詳細な検証をしなくとも地域経済の疲弊と人口減少が深刻化する地方都市や過疎地でライドシェアが経済的に成立しないのは明らかだ。川鍋会長が「袋叩きにあった」と発言している政府の規制改革推進会議での論議は聴くに堪え難く、全タク連幹部なら、タクシーが果たしてきた100年余の役割と実績に誇りをもって全面解禁派に対峙してもらいたい。
(高橋 正信)
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