論風一陣 川鍋・全タク連会長の在任8年を問う!(Taxi Japan 482号より)

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全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)は6月24日、都内千代田区の「経団連会館」で第120回通常総会を開催する。川鍋氏が、富田昌孝氏から会長職を引き継いだ就任当時を振り返り在任8年の経過を振り返る。

新会長に就任した川鍋氏は、当時、「運賃、クルマ、乗務員の進化をオフェンス(攻め)とし、違法な白タク、ライドシェア、白ナンバーの自動運転の3つを全タク連として闘う課題」と表明した。一方で、先行して東タク協会長に就任していた川鍋氏(全タク連では副会長)は、国内配車アプリ最大手のGOの前進の一つであるJapan Taxi社長として配車アプリ事業の全国でのシェア拡大に、その役職を最大限に活用したロビービジネスに積極的に取り組んでいたのは周知の事実である。

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川鍋氏の新会長就任当時、日経BP社が発行する月刊誌「日経デジタルマーケティング」5月号で、「日本交通は、グーグルになれるか」と題して、日本交通(東京)の子会社であったJapan Taxiの特集記事が掲載された。「タクシー運賃以外に、配車、広告、決済、データの4つのプラットフォームから十分な収益が確保できれば」としながら、川鍋氏が「将来は、無料タクシーも視野に入ってくる」などと語って物議を醸したのを記憶の向きもあろう。さらに「モビリティ業界において、グーグルのような存在を目指す」などと言い放った。

この8年を、タクシー配車アプリの側面からみると、業界共通の配車アプリ構想であった東タク協の「スマホdeタッくん」を強引に終了させた経緯を振り返るまでもなく、直近では、国内配車アプリ事業で大きなシェアを持つGOが、公正取引委員会の実態調査により、優越的な立場から独占禁止法に抵触する恐れを、事実上、指摘されていることからも明らかである。

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その一方で、東京は別格としても、一部の都市を除く全国のタクシーはコロナ禍後の乗務員の回復も遅々として進まず、タクシー専用車両のJPNタクシーの導入もわずかで、東京で使用された中古車を地方の事業者が購入している状況である。川鍋氏が全タク連会長就任時に発した「タクシーの進化」とは裏腹に、地方や中小・零細事業者を中心としたタクシー事業の衰退を見過ごす訳には行かない。

無料タクシーは荒唐無稽としても、「将来は、視野に」という川鍋氏の言説の背景には、プラットフォーマー的な独占・寡占化戦略を感じさせる。同時にITプラットフォーマーのグーグルのような存在を目指す川鍋氏にとって、タクシー事業は、その目的達成の道具ないし手段に過ぎないのかもしれない。「全タク連のアイデンティティとは何か」を改めて全タクシー事業者に問いたいものだ。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 483号 をお楽しみに!

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